あの人とこの人のタカラモノは違う。写真家、回里純子さんとトークイベントをします!


以前このサイトの「美しきワガママンたち」にご登場いただいた、
写真家の回里純子さんが、京都国際写真祭に参加され、
KG +special2023」で作品を展示されるそう。

5月5日(金)14時からは、トークイベントも開催され、
私はそのモデレーターを務めます。
ぜひぜひ、たくさんの人に来ていただきたいなあ〜。

今回、その準備のために回里さんに改めてお話を聞きました。
じっくり話すのは久しぶり……。
静かな回里さんの声にすっかり引き込まれ、
私は、なんだか魂が洗われたような気持ちになったのでした……。

そこで、そのことを少しシェアしたいなと思います。

2010年から、「タカラモノ」という名の撮影プロジェクトを続けてきた回里さん。
「いちばん大切なものはなに?」
という問いかけをもとに、タカラモノを持参してもらい、
こどもたちひとりひとりにインタビューをしながらポートレート撮影をする、
というものです。

その後、今度は「私の方から出かけていこう!」
と海外の子供たちの「タカラモノ」を探しに。
フランス、タンザニア、スウェーデン、ブータンと、訪れた国は10か国!
コロナ禍で中断せざるを得なくなり、やっと再開されたばかりだそう。

今回は、そんな10か国で子供たちにインタビューをしながら撮った
というポートレートが展示されます。

でもね、ただの展示じゃないんです。
会場にあるのは、大きなルービックキューブみたいなボックス!
どうしてキューブ?
と聞いてみたら……。


こんな話をしてくれました。
写真を撮るときに、必ずする質問は「あなたの大切なもの、好きなものはなあに?」

パリの素敵なアパルトマンに住む女の子は、毎日好きなものが変わるそう。
その日は「チョコレート」でした。
そして、食卓のお皿の上に並んだチョコレートを
パクパクつまみながら
じっとカメラを見ていたそう。

一方パキスタンのスラム街で出会った男の子の好きなものも「チョコレート」。
でも、彼の前にはチョコレートはありません。
彼にとって「大切なもの」は、今目の前にはないもの。
記憶の中にだけあるもの……。

同じ「チョコレート」でも、住む場所、立場、によってまったく違う……。
回里さんはそのことについて、こんなふうに書いています。

「チョコレート」は同じでも、内側の隠された意味は全く別のものです。
二人の決して交わらない視線が、
この世界の格差というものの象徴に思われてなりません。

だから、今回の展示のテーマは「混ぜる」。
それが「ルービッキュキューブ」の正体でした。


もうひとつ、語ってくれたことがあります。
大切なもの。
それは、人それぞれ違うけれど……。

この「タカラモノ」の撮影を始めたのは2010年。
その1年前の2009年に、回里さんはお母様を亡くされ、
それ以前にお父様も亡くなっていたので、
一人っ子だったこともあって、たったひとりになりました。

その時、思い知ったのが、
「大切なもの」は永遠ではないということ……。

さらには、悪いことは重なるもので、交通事故にあい、
仕事は2か月キャンセル。約半年は、カメラも持てない日々が続いたそう。

「私は人生の最大のピンチだったのに、周りはなんにも起きていない。
世の中は何にも変わらない。取り残された感に押しつぶされそうで、
無力さを思い知ったんだよね」
と話してくれました。

お母様の1周忌が終わって、少し体が動くようになってきた頃、
目の前にいたのが、当時撮影で関わっていた
たくさんの子どもたちでした。

「この子たちには大切に思うものがあるのかな?」

これが、「タカラモノプロジェクト」の始まりだったというわけです。

私も同じですが、フリーランスで仕事をするということは、
不安と背中合わせです。
「もっともっと」と仕事を広げ、
努力し、頑張って……。

回里さんも当時は、そうやってどんどん活躍の場を広げていらっしゃいました。
でも……。

「あなたの大切なものはなんですか?」
「あなたの宝物はなんですか?」

それは、回里さん自身の自分への問いかけでもあるよう。

私の大切なものってなんだろう?
この写真展に足を運んだ人はみな、きっと考えるはずです。

こんなお話を、5月5日のトークイベントでもう少し詳しく
していただく予定です。
本当に素晴らしい展示で、すばらしいお話になると思うので、
お近くの方、ぜひいらしてくださいね。

展示は4月15日からすでに始まっています。

京都国際写真祭「KG +special2023」
サテライト展示KG+2023 S06
京都駅ビル東広場ピロティ

予約不要。無料です。

この展示について、回里さんがそれぞれの子供たちとのストーリーを
noteで公開されています。こちらもぜひ!


こちらの英語のDMは、19歳のKATEさんが作ってくれたそう。
昨年、お母さんと共に、 ウクライナ、キーウから ポーランド、セルビアを経由して
日本に避難してきた大学生です。
今もオンラインで、キーウの大学の授業を受けながら、
日本でデザイン系の会社にインターン生として働き始めたのだとか。
KATEさんのDM、ぜひ現地で受け取ってみてくださいね〜。

みなさま、今日もいい1日を。

 

 

 


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