頑張らなくても、体から溢れ出るものってなんだろう?

コブシの花が咲き始めましたね〜。
花粉もいっぱい飛んでいて、目がしょぼしょぼ、鼻がずるずるします。
私は、「小青竜湯」という漢方薬をのんでいます。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

先日、ピアニスト、辻井伸行さんのコンサートに行って参りました。
初めてのサントリーホール。美しかったなあ〜。

私は、コンサートと言えばジュリーぐらいで、
クラシックコンサートに行ったことは、ほんの数回しかありません。

大丈夫か、私?
眠くならないかな?
など考えながら行ったのですが、
もう、最初から最後まで引き込まれっぱなしでした。

小学校1年生から、大学生まで、ピアノをやっていました。
(と言っても、かなりイヤイヤだったので、ちっともうまくなりませんでしたが)
だから、今でもジャズでもポップスでもピアノが入った曲が大好きです。

辻井さんは、タッチがとても力強くて、
音の粒がイキイキしているところが好き。(素人感想です!笑)

ベートーベンからリスト、ラヴェル、
そして初めて知った現代音楽家、カプースチンまで。

演奏を聴きながら、「あ〜、溢れ出ているなあ〜」と思ったのでした。
努力して弾いているのではなく、
体に染み込んだものが、自然に溢れ出ている感じ……。

「暮らしのおへそ」で小曽根真さんを取材させていただいた時に、
指先から、音が溢れ出ているなあ〜と感じたのと同じでした。

この人は、今ここで溢れ出ているもののために、
どれほどの音を聞いてきたのだろう?
音楽が大好きで、浴びるように聴き、すべての音を体に染み込ませたんだろうなあ〜。
そうやって、自然に染み込んだものが、溢れ出る……。
これを才能というんだろうなあ。

みんラボ2」というポットキャストを時々聞いています。
才能研究者のたかちんこと佐野貴さんが、
才能とは「ついやっちゃうこと」とおっしゃっていました。

がんばらなくても、意識しなくても「ついやっちゃうこと」。
これと、私が感じた「自然に染み込んだこと」「溢れ出ること」とは似ている気がします。

そして、どんな人も「自然に染み込んだこと」を持っているんじゃないかなあと思いました。
それは、何もピアノやアートなどの特別なことでなくてもよくて、
毎晩ご飯を作る段取りでも、
毎朝作るお弁当のつめ方でも、
さっさか進める事務仕事の段取りでもいい……。

体に染み込んでいるから、自然に手が動く……。
そんなことを誰でも持っているよなあと思います。

そして、それって自分では「そんなしょうもないこと……」と思っているけれど、
ものすごい「才能」なんじゃないかと思うのです。

ずっと前、後藤由紀子さんの取材に伺った時、
撮影のために、チキンの照り焼きを作ってくれました。
鶏もも肉をまな板の上でささっと均等な厚さに整え、
熱々に熱したフライパンでカリッと焼き、
甘辛く味つける……。

その手際のよさに、「さっすが〜!」と感動してしまいました。
雑誌や書籍で見る姿はかわいくて、華やかだけれど、
後藤さんは、毎日毎日家族のためにご飯を作り続けてきた……。
その手際が、手先からこぼれ出しているようでした。

これって、辻井さんのピアノとおんなじ!


今から何かを獲得しようとすると大変だけれど、
今すでに、自分の体に染み込んでいるものは何かな?
と見つめ直してみるのも、なかなか有効だなあと思います。

仕事の上でも、よくよく「いつもやっていること」を分解してみると、
スケジュールを立てて、人を手配して……というマネージメントが得意だったり、
大事なことを、書類にしてビジュアル化することが得意だったり。

何気なく「ついやっちゃってる」ことに旗を立て、
名前をつけて抽出してみると、
「わあ、私ってこんな特技があったんだ!」と気づくかもしれません。

気づいたら、それを別の場所に持って行って
「こっちでも役に立つかな?」と試してみることができる……。

私って、料理が好きだなあ〜と思ったら、
友達を呼んでみるのもいいし、
パソコン仕事にはちょっと自身があるなあと思ったら
みんなのために、ショップリストを作ってみるのもいい……。

辻井さんは、アンコールに4回も答えてくれて、4曲を弾いてくれました。
みんなの拍手に嬉しそうにこたえる姿がチャーミングだったなあ〜。

帰って「カンパネラ」を聴きながら、「ついやっちゃってること」を探してみたくなりました。

みなさま、今日もいい1日を!

 

 


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