病室にて。

木蓮の花が咲き始めました。
葉っぱが1枚もない枝に、ぽっかりと真っ白な花をつける……。
冷たい風の中に咲く、凜とした姿が大好きです。

昨日、入院のことを書いたら、本当にたくさんのメッセージをいただきました。
今、まさに闘病中の方。病を抱えた家族がいらっしゃる方。
見えないだけで、いろんな思いを抱えている方がたくさんいらっしゃることを改めて知りました。

退院して、初めてスーパーに買い物に行ったとき、
「ああ、こうして歩いている中にも、きっと何かしらの荷物を抱えている人、
きっといるんだろうなあ。みんな気づかないだけなんだよなあ。
でも、みんな日常を過ごしているんだなあ」って思いました。

「よかったですね」「大変でしたね」とメッセージをくださった方、本当にありがとうございました。

病室に入ると、風も吹かないし、温度は一定に管理されているし、
突然さっきまでいた社会と切り離されたような気持ちになります。

もちろん、パソコンは持っていったし、
入院中もメールのやりとりや、仕事の連絡はしていたのですが、
やっぱり外の世界とは違う……。

健康に普通にみんなが生活している社会と
お医者さまや看護師さんたち、そして病人が過ごす「病院という世界」の間には、
大きな境界線があるんだなあと感じました。

でも、病院の中は平穏で、なんだか複雑な気分でした。

幸い、私は体はまったくつらくなく、
ただ、術後は2日間絶食なので、点滴を受けているだけでした。

ひたすら時間があったので、
Netflixで、「First Love」を一気見しておりました。(笑)

それでも、どこか心細くて、
夜、テレビでプレバトを見ていると、
「ああ、先週は夫とご飯を食べながら、これ、見ていたんだよなあ〜。
『いつも』ってすごく幸せだったんだよなあ」
としみじみしたり……。

そんな時、フォトグラファーの中川正子さんが
「一田さん、そろそろ入院ですよね? もう入院中?」
とラインをくれました。

わあ、覚えていてくれたんだ〜と、とっても嬉しかったなあ〜。

そして、心から思ったのでした。
「ああ、誰かのためって『思う』だけでいいんだ」って……。

よく、闘病中だったり、入院中の人に
どう声をかけたらいいかわからなかったり、
私なんかになにも言ってあげられない……と結局口をつぐんでしまったり……。
私も今までそうでした。

でも、自分が当事者になってみると、
「入院しましたか〜?」っていうなんてことのないラインやメールがすごく嬉しい!

なんにもできなくても、その人のことを思っているだけでいい。
そして一言メッセージして、「思っているよ」ってことを伝えればいい……。

もちろん、感じ方は人それぞれで、放っておいてほしい、という人もいるかもしれないけれど、
私は、これから、周りにいる人に、
自分の心を寄り添わせることができる人になりたいなあと思っています。
それが、今回入院して私が得た、いちばん大きなギフトだったかなあ。

自分がいちばん弱っているときに、嬉しいと感じたこと。
それを忘れないでいたいと思います。

病院の窓から眺める空や虹や星や月に、本当に慰められました。
決して変わることがない自然の力ってやっぱりすごいですね。

みなさま、今日もいい1日を。


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