珍しく、朝イチで映画に行ってみた。

もう10月ですね〜。
あっという間に1年が過ぎます。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

先週の金曜日、珍しく朝イチで映画を見に行ってきました。
私は「起きたてのクリアな頭で原稿を書く」ことにしているので、
打ち合わせも、なるべく午後からに入れます。
なのに、朝イチから出かける、というのは、
なんだか、高校生が学校をさぼって遊びに行くような、
へんな意味での罪悪感があるのです。
そんなこと、感じなくてもいいのに……。

でも、最近よく考えるのが
お腹の底でやりたい、と思っていることと、行動を直列でつなげる、
ってこと。
「〇〇しなくちゃ」を軸にしていると、
この「お腹の底にある」本当にやりたいことが何なのかさえ
わからなくなってしまいます。

だから「これ見たい!」と思ったら行く!
というのをやってみたというわけです。

見たのは「川っぺりムコリッタ」。
「フードムード」のなかしましほさんのインスタで知ったこの映画は、
あの「かもめ食堂」の荻上直子さんが、監督、脚本です。

ものすご〜く感動したあ!というのとはちょっと違って、
見終わった後、
ずっとあの川っぺりのアパートで繰り広げられる風景が、
ぐるぐると思い出されて、後からじわじわきいてくて、
は〜、よかったなあ〜と、今しみじみ思っています。

物語は、マツヤマケンイチさんが演じる山田が、
イカの塩辛工場で働き始めるところから始まります。
そして、社長から紹介されたのが、川べりにある「ムコリッタ」という安アパートでした。
仕事に通って、帰ってお風呂に入り、あがって牛乳を飲むのが何よりの楽しみ。
初めてお給料が入った日に、お米を買い、
炊飯器でご飯を炊いて食べます。

飯島奈美さんがフードスタイリストとして入っていらっしゃるだけあって、
このご飯シーンがなんともおいしそうなのです。
ご飯と味噌汁とイカの塩辛だけ、だったりするんですけどね……。

ある日隣に住む、ムロツヨシさんが演じる島田さんが
「お風呂貸して」とやってくる。
なるべく人と拘らずに生きていきたいと思っていた山田は、嫌がるけれど、
無理やり入ってしまい、
お礼に島田がアパートの庭で育てる野菜をもらいます。
それから、ふたりで毎日ご飯を食べるようになる……。

ここに満島ひかりさん演じる大家さんや、
吉岡秀隆さんが演じる墓石のセールスに回っているという住人が加わります。

いつもお金がなくて、
真夏なのにクーラーもなくて、川っぺりで扇風機を拾ってきて、
毎日毎日同じことの繰り返しなんだけれど、
お風呂→牛乳→ご飯を炊く→ふたりで並んで「いただきます」と食べる。
そのささやかな幸せの確かなことよ…….

そのことを、HPで荻上直子さんがこんなふうに書いていらっしゃいました。

「生き方や働き方が見直される今、
モノや境遇が場所にとらわれない形での、生きることの楽しさがある」

山田も島田も、自分のことをまったくしゃべりません。
何をしてきた人なのか? 未来に何を求めるか?
なんて一切関係ない。

荻上さんはこうも書いていらっしゃいました。

「友達でも家族でもない彼らの中で、孤独でないと実感する」

映画を見終わって、
幸せって、淡くていいんだ……と思いました。

努力して、もっともっとと背伸びして、より強く、より太く、より大きく……
というベクトルで生きてきた私には、
この「淡さ」に気づくことがなかなか難しい……。

でも、あの映画のシーンを反芻しながら、
そっか、淡くていいんだ………と思えば、
なんだか心がふっと軽くなるような気がするのです。

人と人の関係も、ずっと、長く、深く……と思うと、
そうできない時に寂しくなるけれど、
一緒に炊き立てのご飯を食べるだけ、のような
淡いつながりを、大事にしていくならできそうな気がする……。

「ムコリッタ」とは、「死」と「生」の間にある時間の単位なのだそう。

終わったあとに、家に帰ってご飯が炊きたくてたまらなくなる。
そんな映画でした。

朝イチで行ってよかったなあと思っています。
みなさんも、よかったらぜひ!

今日もいい1日を!


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