変わらないことって、素晴らしい! 大好きなお店「クランク」「マルチェロ」へ!

東京は、昼間出歩くと、危険なぐらいの暑さです。
東北地方は大雨の被害にあわれた方には、心よりお見舞い申し上げます。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

先日、ちょっぴり恐々出張へ行ってまいりました。
3年ぶりぐらいの福岡へ。

以前は1年に3〜4回は必ず行っていたのに、コロナになってから一度も行っていませんでした。

取材が終わると、「絶対行きたい!」と思っていた、
ヨーロッパの古い家具を扱う「クランク」と、雑貨と洋服のお店「マルチェロ」へ。

ああ、このやっているのか、いないのかわからない、入りにくそ〜な入口が懐かしい!(笑)

細い階段を登り、屋上に一度出て、せま〜いドアを入って、また降りると、やっと「マルチェロ」に到着します。
お店に到着するまでの道のりを、ワクワク楽しいで欲しいという、オーナーの藤井くんの用意した「しかけ」です。

3年ぶりに会った藤井くんは、相変わらずの笑顔で、
楽しそうに仕事をしていました。

マルチェロの店内は、以前よりずいぶん変わり、洋服がほとんどなくなって、
器や小物が増えていました。
そして驚いたことに、若い女性が多い!
最近では、まったく新しい目で古道具を見る若い子たちが増えているのだとか。

「楽しいっすよ!」と藤井くん。
「僕、好きなことをしているから、なんでも楽しいんです!」
といつものニコニコ顔で語ってくれて、
ああ、そうそう、この感じ!と思い出しました。

この店を訪ねると、あちこちに散りばめられた、藤井くんの「小さなしかけ」を
じっくり「浴びる」ことにしています。

ひとつ、しげしげと眺めても、どうしてもそのしくみがわからないディスプレイがありました。
ガラスケースの中に、小さな人形がこちらに背を向けて立っています。
そして、人形が見つめている壁の上に、光の十字架が照らし出されているのです。

えっ?
この十字架の光、どこからきているの?
そう思ってキョロキョロするけれど、どこにもその光源がない……。

藤井くんは、こうした「光」の演出で、よく私たちを驚かせてくれます。
壁にサーカスの様子を映写機で映し出したり……。

「ねえねえ、あの十字架」ってどこから映し出されているの?」と聞いてみました。
すると!

なんと、人形の足元に、十字架の形だけが切り抜かれた黒い紙に覆われた鏡が置いてあり、
そこに天井からのスポットライトが反射して、
光の十字架の形が、壁に浮かび上がる……というしくみだったのです!

 

もうひとつ。
ガラスケースの中に、小さな木のハシゴと、蝋燭が入っていました。
ハシゴの上には月が描かれています。

藤井くんの説明によると……。
蝋燭がだんだん短くなると、ハシゴの影が上に伸びていきます。
蝋燭がもう消える………という時間になると、
なんと、そのハシゴが月に届く!

そこまで計算してしつらえられているのだとか。
なんてロマンティックなんでしょう!

「わあ〜、届いたところを見てみたい〜!」と思いましたが、
時間がなくて残念でした。

「マルチェロ」という小さな店の中で、
藤井くんは、心の中にある、想像の世界を、絵本を作るように、空間の中に生み出していました。

「ものが売れる」とか「誰かに褒めてもらう」とかはまったく関係なく、
ただただ、自分が大好きな世界を信じ切る強さと軽やかさを
ここに来るたびに感じて、何か忘れていた大切なものを思い出させてもらう気がします。

藤井くんと初めて会ったのは、
2005年に私が初めての著書「扉をあけて、小さなギャラリー」を出す少し前でした。
つまり、17年以上前。
「マルチェロ」は今年で、オープンして20年になるそう。

「自分が好きなことだけをやる」
その藤井くんの姿勢はずっと変わっていません。
20年間、自分の立ち位置を変えないってすごいこと!

3年ぶりに行ったからこそ、
その「変わらなさ」を肌で感じ、ああ、変わらないって強いなあと思ったのでした。

オリジナルの家具を作るようになったり、洋服を少し減らしたり、
店内を改装して、秘密の扉を作り、その奥にもうひとつの小部屋を作ったり……。
いろいろなところが変わっているからこそ、
変わらないことを大事にできるのだと思います。

おとぎの国を訪ねるように、いつもワクワクさせてくれる……。
私もそんなふうに文章を書いていきたいなあと思いました。

 

最近やっと、海外にまた買い付けに行けるようになったそうです。
この日も「明日から買い付けに行くんです〜」と教えてくれました。
ギリギリセーフで会えてよかった!

心が震える体験をすると、また元気になれるものですね。

みなさんには、定点観測している大好きなお店がありますか?

今日もいい1日を。


一田憲子ブログ「日々のこと」一覧へ