「あ〜、幸せ!」と感じちゃったら、成長できないのかな?

このコンテンツ「もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っていると思っていたことなのに、この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

この季節、朝のウォーキングに出かけると、本当に気持ちがよくて、空に向かって伸びをしながら、胸いっぱいに空気を吸い込むと「あ〜、幸せ!」と思います。
ノリコさん、私はいよいよ「ペシミスト」卒業の準備をしている気がしています。ちょっとそのことをお伝えしてみますね。
今までウォーキングは、私にとって頭の整理整頓の時間でした。「昨日、あんなこと言っちゃったけど、もう少しこう言えばよかったなあ」とか、「これからの仕事には、こういうことが必要だよな」と、歩きながら考えると、思考が整理される気がしたから。
でも、最近それをちょっとやめようと思っているんです。

はあ〜っと深呼吸をして、上を見上げれば、ついこの前まで裸だった木々に新芽が芽吹き、足元を見ればすみれの小さな花が咲き……。なのに、ぐるぐるいろんなことを考えながら歩いていると、それが「流れ去る背景」にしか見えない……。それは、あまりにももったいない、って思ったんだよね。
昨年、両親のプチ介護を経験し、「来年はこの風景が見られないかもしれない」という状況を、初めて自分のものとして実感したからなのかもしれないし、最近の取材で「もっと成長したい、こんな理想を追いたい、こんな夢を描きたいと思いすぎることは、今を否認していることになる」という言葉を知ったからかもしれません。
ノリコさんは、仕事でバタバタしていると、常に「次はこうして」「あれをやらなくちゃいけなくて」と考え続けていませんか? そして、1日の終わりには「ああ、もうちょっとこうだったら・・」と考える。つまり、ずっと未来か過去のことしか考えていないことになるよね。だったら、「今ここにあること」をいつ味わうんだろう? って思わない?

20代のノリコさんぐらいの年齢から50代の私の年齢まで、私はずっと「今」にいなかったなあと感じています。「今」だけのことを考えたら、こんなに天気がよくて、こんなに自然が気持ちよくて、まるで神様が私を祝福してくれているみたい! って思える……。でも、そこに「未来」を加えたとたん不安がやってきて、「過去」を加えたとたん「後悔」がやってくるんだよね。

人生の残りの方が少なくなって、これから先は「今の幸せだけ」を感じてもいいんじゃなかろうか、と思うようになったというわけです。今がよければこれでいいじゃん!って。
ね、ペシミスト卒業間近って感じでしょう?笑

でもさ、ノリコさんはきっとこう思っているでしょう? 「今に満足」してしまったら、成長できなくなるんじゃないか?って。「ああ、ここが足りない」と「今を否定」するからこそ、「こんな本を読んでみよう」とか「こんな人に会ってみよう」と考えるわけだもんね。私もずっとこの「今の幸せ」と「成長」の関係がわからなかったんだよね。

でも、最近もしかして、これは両立できるんじゃないか? と考えるようになりました。
「あ〜、気持ちいい!」って今日の朝を味わいながら、「もうちょっと、あれについて勉強してみたら、もっと楽しいかも!」って考えればいいだけじゃん! と思ったんだよね〜。自分に足りないことを見つけたり、できないことがあるのは、決して「不幸」なわけじゃない。そこを私は勘違いしてきたんじゃないかなあ。「あれもできない、これもできない」と、自分を否定して、ひとりで悲しくなっていた気がします。
でもさ、ノリコさんの年齢だった時代を振り返ってみたら、まだなんにも知らなくて、経験も浅かったけれど、見るものすべてが新鮮で、乾いたスポンジみたいにいろんなことを吸収して、すごく幸せだったなあって思うんだよね。だからきっと、なんにもできなくても「今が幸せ!」って思うことはできるんだよ!

世の中には、思うようにならないことがいっぱいあって、自分のちっぽけさに失望することもあるけれど、それでもご飯はおいしいし、窓から眺める風景は美しい! だからペシミストを卒業して、少しずつ光のある方へ、顔を向ける練習をしたいと思っています。


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