「わからない」ってすばらしい! 「暮らしのおへそ vol33」来週発売です。

じゃじゃじゃ〜ん!
いよいよ来週、1月31日(月)に、「暮らしのおへそ vol33」が発売になります。
表紙は、田淵三菜さんちの秋田犬ミックス、こぶしちゃん!
かわいいでしょ〜! このつぶらな瞳!

どうして、今回犬の表紙なのか……。
それは、また改めてゆっくり書きたいと思います。

さて。
今回の巻頭は、解剖学者の養老孟司さんです。
養老さん、めちゃくちゃダンディな方なのです。
そしてジェントル。
素敵だったなあ〜。

でも……。
取材依頼をしてから、改めて養老先生のご著書を読み始めたのですが、
これがさっぱりわからない……。
難しすぎて、頭に入ってこない……。

「う〜、やっぱり私にはインタビュー、無理かもしれない」
「なんにも質問なんてできないんじゃなかろうか?」
「私みたいに、なんにも知らない人がお話を聞くなんて、失礼なんじゃないだろうか?」

と、何度も依頼を取り消した方がいいかも……という不安が頭をよぎりました。

なのに、どうしてお会いしてみたかったか……。
それは、ほんの少し前に、ネットで養老先生のインタビューを読み
その一文にとても心を惹かれたからでした。

「動物はいちいち意味など考えず、感覚だけで生きています。
猫が日当たりのよいところにいるのは、そこにいるのが気持ちよいからです。
『まる』もいつも夏は家の中で一番涼しいところ、冬は一番暖かなところを陣取っていました。
自分にとって、一番居心地のいい場所を探して暮らす。
そうすればストレスもありません。
そんな猫みたいな生き方が幸せなのかなと改めて考えてみたりします」

 

(まるは、先生が飼っていらした猫の名前。写真集まで出る人気者でしたが、
残念ながら、去年亡くなってしまったのでした)

あの、東大教授で「バカの壁」というベストセラーを書かれたエライ先生が、
「猫みたいな生き方」を求めている……。
それって、どんな生き方なのかな? 養老先生ってどんな人なんだろう?
そう思ったのでした。

で、取材が決まってから1か月間、他の小説やエッセイはぜ〜んぶおあずけで、
ひたすら養老先生の本を読みました。
最初は、1ページ進むのさえなかなかで、
わからないことがいっぱいで、チンプンカンプン。
でも、3冊ぐらい読み終えたところで、
だんだん、アレとコレがつながってきました。

それでも、膨大なご著書すべては読みきれず、
やっぱり不安とドキドキをかかえて、インタビューに望んだのでした。

てっきり秘書の方と一緒にいらっしゃるかと思ったら、
撮影場所のホテルに、たったひとりで、しかも約束の時間の15分前に入ってこられてびっくり!
あわわわわ………とご挨拶をいたしました。

たぶん、とても拙いインタビューだったと思うけれど、
先生はとても優しくて、いろんなお話をしてくださいました。

養老先生は、幼い頃から、84歳の今までずっと昆虫採集を続けていらっしゃるってご存知ですか?
「どうして虫を集めるのですか?」
「どんな風に虫を捕まえるのですか?」
「つかまえたら、その後どうするのですか?」

そんな質問から始まったインタビュー。
先生が大事にしていらっしゃるのは、常に「目の前にあるものを観察する」
ということでした。

人って、すぐに「意味」や「意義」を知りたくなります。
でも、それってとても不確かなもの……。
人って、すぐに「わかりたい」と思います。
でも、人生はわからないから面白い。
そう教えてくださいました。

虫捕りをするときに、どんな虫が捕れるかがわかってしまったら、
ちっとも楽しくないそうです。

「生きているっていうのは、プロセスが面白いのであって、
結果がどうとかじゃないんですよ」

飄々とそう語ってくださいました。

あ〜、私って今までひたすら答えを求めようとしていたなあと
インタビューを終えて帰りながら考えました。

わからなくていいんだ。

それは、大きな発見でした。

虫を集めたって、なんの得があるわけじゃない。
でも、ひたすら集めることが楽しい。
人生ってそれでいいんだって。

養老先生の「おへそ」、ぜひじっくり読んでいただきたいです。

amazonでは、予約が始まっています。
地域によって差がありますが、31日から書店に並ぶと思います。
よかったらお手に取ってみてくださいね。

みなさま、今日もいい1日を!

 

養老先生のすばらしくかっこいい写真は、興村憲彦さんが撮ってくれました。


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