ものが人と出会わせて、その人が次の世界へ連れて行ってくれる。by松浦弥太郎さん

今日の東京は朝から雨です。
明日から全国的に寒くなるのだとか……。
みなさま、どうぞお気をつけて。

さて!
ちょっと背伸びのもの選び」が発売になりました!
お手にとっていただけたでしょうか?

私がいちばん背伸びをして買ったものはなんだろう?
と思い巡らせてみると……。
30代の初めに買った、太田修嗣さん作の漆のお碗かなあ。
取材先のお宅で見せていただいて、一目惚れ……。
漆器というのは基本的に分業制で、器を削る人と、漆を塗る人は別なのですが、
太田さんはすべてを自分でてがけられる方。
このお碗もちょっとゆがんだ手の跡が、
とてもいいなあと思ったのでした。

味噌汁碗より大きな丼サイズだったので、
当時の私には目が飛び出るぐらいの値段で、
ふたつ合わせたら、当時住んでいた狭〜いワンルームマンションの1か月分の家賃と
同じぐらいだったでしょうか・・。

エイっと買ったものの、果たしてコレのどこがいいのか?
直感でいいと思っただけで、
その理由は正直ちっともわかっていませんでした。
あれから20年以上……。
このお碗でおうどんを食べ、天丼をつくり、
時には、おでんの取皿にし……。
漆って、使うごとに艶を増していく……ということを、
私はこのお碗から教わりました。
決して古びることがなく、一生私の生活に寄り添ってくれる……。
そう思うと、あのお値段はちっとも高くなんてなかった。
背伸びをしなくちゃわからなかったことです。

 

先日も少しご紹介しましたが、
この本の中で松浦弥太郎さんに「ものを見る目の育て方」
というテーマでお話を伺いました。

私がいちばんびっくりしたのは、
松浦さんが「一度好きになったものは、絶対に嫌いにならない」とおっしゃったことでした。
え〜!?
私なんて「マイブーム」があって、夢中になって手に入れても、
数年したら、飽きてしまい、見向きもしなくなるものがあるのに…….

松浦さんが、はじめて背伸びして買ったのは、
正式にはお母様に買ってもらったそうですが、
小学生の時に欲しくて欲しくてたまらなかったという
「ワールドウィン」のグローブだったそうです。
値段はなんと4万8000円。
野球少年だった松浦さん。
野球中継を見る時に、必死で選手が使っているグローブとバットを見る。
それを「ベースボールマガジン」で調べて、お店に見に行く…….
その熱量の高いこと!


(この写真は、残念ながら小学生の頃に買ったグローブとは違うRAWLINGS XPG6ものです)

このほかにも、25年くらい前から弾いているギター、
初めてニューヨークに行ったときに出会った「ディーン&デルーカ」のアルミ缶、
ロレックス、メガネフレーム、小鹿焼の湯呑み……。

好きになったらとことん調べ、追いかけ続ける……。
そうやってすごした時間は、鎖のようにつながっていきます。

そうすると、なにが起こるかというと……。

「自分の同じように勉強している人と出会えるんです。
するとその人が、その次の世界へ連れて行ってくれます」。

 

この言葉に、「なるほど〜」と深くうなずきました。
「好き」という衝動は、
同じ熱量で「好き」と思う人を引き寄せて、
その人は、自分ひとりでは開けられなかった扉の向こうに連れていってくれる……。
ああ、私もそんな「繋がり方」と体験してみたい!と思ったのでした。

でも、そのためには、「好きでいつづけられる何か」を持っていなくてはいけません。

このインタビューの後、
東京代々木上原で「LIFE & son」というイタリアンレストランを営む
相場正一郎さんのお店に取材に伺いました。
相場さんが最近出されたばかりの本「道具と料理」は、
「大好き」というご自身愛用の「ライカ」のカメラで撮られたそうです。
カメラマンの黒川ひろみさんも、ちょうど「ライカが欲しい!」と思っていたそうで
ふたりで、話が大いに盛り上がっていました。

 

「好き」って人と人をつなぐ力がある……。
今日初めて出会っても、好きなものへの深い場所での思いが一緒なら
すぐにわかりあえる。
そのことを改めて実感しました。

もしかしたら、私が「好き」と思っていたのは、
そのものの「表面」だけだったんじゃないか?
ライカのカメラの性能をとことん調べ、使ってみて、その違いを覚えたり、
MARTINの古いギターの音をお店に聞きに行ったり……。
本当のものの魅力を知るには時間がかかる……。
その「時間」をこれからかけてみたい、と思ったのでした。

 

松浦さんに「ものを見る目ってなんですか?」
と聞くと
「ものの命を見極められること」
と答えてくださいました。
「ものの命ってなんですか?」
と聞くと
「それは『機能』ということです」と。

これにはびっくりでした。
ものの命って、デザインの美しさではなく「機能」なんだって……。
それはどういうことなのんか……。
じっくりインタビューで伺っているので、
この続きはぜひ本で読んでみてくださいね。

 

そして!
明日12月18日(土)14時より、「ちょっと背伸びのもの選び」発売記念の
インスタライブを行います。
この本でご紹介した引田かおりさんのお宅に伺って、
実際に「背伸びして買ったもの」を見せていただきながらお話を伺います!
もしお時間あったら見てみてくださいね〜。
@kurashi_to_oshareのアカウントから発信します。

 

 

長くなりました。
みなさま、今日もいい1日を!

 

 


一田憲子ブログ「日々のこと」一覧へ