「私は負けられる人になりたい」。 はまじさん著「蝶の粉」が素晴らしい!

今日から寒くなるそうですね。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

はまじこと浜島直子さんの初の随筆集「蝶の粉」を読了。
(持ち歩いて読んでいたので、カバーの一部が折れてしまいました。ごめんなさい)

いや〜!
読み終わってすぐの感想は、
「はまじ! ずる〜い!!」でした。

 

はまじさんといえば、今年の春はまじさんのテレビ番組
「暮らしのレシピ」に出演させていただき、
我が家にも撮影に来ていただいたのでした。

美しくて、スタイルがよくて、明るくて、みんなに好かれて……。
それだけ「いいところ」が目白押しなのに、
文章がこんなに上手だなんて!!
ずる〜い!!
って思ったのでした!

 

幼い頃の思い出のおはなしから、結婚したこと、子供が生まれたこと、夫のこと……。
時を超えて、はまじさんの心にずっと残っていた物語が
瑞々しい文章で綴られています。

 

その行間から
おそらくご本人も無意識なまま
はまじさんが素敵なはまじさんになった理由、
みんなに好かれる理由がこぼれ出しているようでした。

私が好きなのは
はまじさんが、故郷の北海道の田舎から、「mc Sister」を読んで、
初めて黒いタートルネックのセーターを買いに行くお話……。
どうして、そのセーターに惹かれたのか、
お小遣いを握り締めてお店にいったドキドキ感。
それを持って帰って自分の部屋で正座をして、そっとあけてみたお話………。

はまじさんの洋服とのおつきあいの原点がここにあるようで、
私までドキドキして読みました。

 

さらに、「正しい人見知り」というエッセイ。
はまじさんが、小学生の頃、転校した先で知り合ったA君とのエピソード。

知的障害があった彼に
「風邪ひくからちゃんとパンツ履きな」と
別に親切にしようと頑張るわけでもなく、
当たり前に、姉御風に世話をするはまじさん。

 

そして。

「生きることは、他人と関わることなのだと思う」。

という一文に、ハッとしたのでした。

 

私は気にしいで、いつも「明るく閉じている」と言いながら
コミュニケーションをなるべくしないで、ラクして生きようとしていたから……。

人と関わると
わかってもらえなかったり、
行き違いがあったり、羨んだり、羨まれたり、嫉妬したり、されたり、
といろいろややこしい……。
だから、なるべく面倒臭くならないように……。

なのに、はまじさんは「生きることは、他人と関わることなのだと思う」
とさらりと言ってのける……。

それは、私のように大仰に考えることではなく、
「風邪ひくからちゃんとパンツ履きな」
と目の前の人にさらりと言ってあげられることなんだろうなあ。

もうひとつ、心に残ったのが「毒味」という一編。

23歳で結婚された時のことが綴られていました。

「そんな私が阿部王国に嫁ぎ、心のそこから震えるほど驚いた文化の違いがある。
っそれは、阿部王国の人々は皆、負けていることだった」。

(阿部さんというのは、ご主人=嫁ぎ先の名前です)

この一文が深く胸の内に入ってくるようでした。

はまじさんはさらにこう書いています。

『当時の私は『負けねえぞ』と息巻いて仕事に立ち向かっていた」と。

なのに、夫の家族はみんな相手に勝つことでなく、
素直に、ころっと負けられる人だった……。

そして、はまじさんは義母と過ごしながらこう綴るのです。

「私も母ちゃんみたいに、負けられる母ちゃんになりたい。
自分の弱さを素直に見せられる、弱さを人のせいにしない、
負けられる人になりたい」

なんてすごい観察力だろう。
なんて素直な心なんだろう、としみじみ思いました。

明るいはまじさんならではの愉快なお話あり、
ジンとくるお話あり、
そして、どの物語も美しく、
読み終わるとちょっと泣きそうになります。

手元に置いておいて、何度も読み返したくなる1冊でした。

みなさま、機会があればぜひ!

今日もいい一日を。


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