「わかる」って、「世界が立ち上がる」ってこと。

このコンテンツ「もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っていると思っていたことなのに、この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

ノリコさん、ノリコさんには知りたいことがたくさんありますよね。でも、それを学ぶのは今じゃなくていい。
今はまだ未熟でわからないから、もう少し先になったら学んでみよう、って思っていませんか?

私も20代や30代の頃、「わからない」ことがたくさんありました。たとえば……。「お金ってどうやったら貯められるのだろう?」→「世の中ってどういうしくみでお金が回っているのだろう?」「どうして、私はささいなことが気になってクヨクヨするのだろう?」→「人の心って、どうなっているのだろう?」などなど。

こういう掴みようがない大きなトピックって、「学んだってどうせわからない」って思っていたのです。お金にまつわる本を少し読んでみたけれど、自分の「今」にリンクすることがひとつも見つけられなくて「ダメだ〜」と放り出したことを覚えています。「クヨクヨする」のは、私が気にしいなだけだと思って諦めていたなあ。でも、実は「考え方「思い方」にはクセというものがあって、そこを学ぶと「クヨクヨ」が軽減する、と後になって知りました。

だからね、学ぶってわからなくていいんだよ、きっと。だから、ノリコさんには、放り出さないで、もうちょっとだけ続けてみて欲しいなあ。

「わかる」ってどういうことか、っていうことが、私は最近になってやっと「わかって」きたと思うから……。

何か本を読んだり、誰かに教えてもらって、パ〜ン!と扉が開くってことは、ごくごく稀です。そうではなく、ここで読んだこの本と、あそこで聞いたあの人の話と、テレビで見たそのことと……。といろんなカケラがつながって、ちょっとずつ立ち上がってくるもの。

そう!「わかる」って、「世界が立ち上がる」ってことなのだと思います。

最近、私はインタビューのために、普段は読まない難しい本をたくさん読みました。いつもなら挫折して「も〜、わからん!」と放り出すところですが、インタビューという目的があるので、なんとか我慢して読み続けた……。すると、どうなったかというと……。1冊目にはチンプンカンプンだったことが、2冊目や、3冊目に「あれ? これ前の本にも書いてあった!」「あ、このことって、先週読んだあのことと同じなのかな?」と、本と本がつながるようになってきた。5冊目や6冊目になると、その人が書いている「空気」みたいなものを感じられるようになってきた。こうして、だんだん「風景」が見えてきたのです。あ〜、なんにもわからなくたって、読み続けていれば、自然に回路がつながってくるものなのだなあと思いました。

学ぶって、こういうことでいいんじゃないかなあ。すぐに、パッカ〜ン!と答えが降ってこなくても、抜き足差し足で進むうちに、霧の向こうに少しずつ山の形が見えてくる……みたいなイメージ。経済だって、物理だって、心理学だって、学べばきっと、なにかのフォルムが見えてくる……。中身がわからなくても、核心を理解できなくても、まずは、輪郭が見える場所まで、歩き続けてみるのが大事なんだじゃないかなあ。

ノリコさんぐらいの年齢から、学び始めたら、きっといろんなものの輪郭がくっきりしてきて、1本道を歩くより、周りの山々の風景を眺めながら、人生が太く深くなるんじゃないかと思うのです。若いころはすぐに結果が出ることしかやりたくないものだけれど、きっといいことがあるって私が保証しますから、わからないことを学び続けてみてください。

私もこんな年齢からだけど、「わからない」をしばらくバックに入れて持ち歩き続けてみたいなあと思います。


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