伊藤まさこさんに、ビジネスの話を聞きました。 vol.1

 

 

昨年ぐらいから、さまざまな状況が重なって、
「新しい暮らし方、働き方」について、少しずつ考えるようになりました。

今までひたすら「やりがいのある仕事ってなに?」
「充実した日々ってどんなもの?」と考えてきたけれど、
それは、頂上を目指して険しい山道をひたすら登っているようなもので、
もしかしたら、ふと横を見たら、
ちょっと遠回りだけれど、もっとなだらかな道があり、
時間はかかるけれど、そこをテクテク歩いて登っていけば、
道端に咲く花を眺めたり、
眼下に広がる伸びかな風景に気づいたり、
吹く風の気持ちよさに深呼吸をしたり……。
そんな進み方ができるんじゃないか……。

そう思うようになっていました。
それは、もちろん昨年からの新型コロナウィルス感染症による
自粛生活の経験も大きく作用したように思います。

今まで当たり前のように毎日出社していた人が、
リモートワークとなり、会社には週に1〜2回行けばいいだけになったり、
Zoomなどを使えば、会わなくても意思疎通ができたり、
北海道や九州など、離れた場所にいる人とも簡単に繋がれることを知ったり……。
「できること」と「できないこと」が目まぐるしく交差し、
いったいこれから、私はどんな暮らし方、働き方をすればいいんだろう?
とゼロから考え直す機会になりました。

そこで、今回「新しい暮らし方、働き方」というこのコンテンツで、
今までとは、ちょっと違う仕事の仕方、
日々の暮らし方を始めた人にお話を聞いてみることにしました。

そのトップバッターが伊藤まさこさんです。

 

 

 

「ほぼ日」のコンテンツ内にある、「weeksdays」というまさこさんの「お店」をご存知でしょうか?
器や洋服、老眼鏡やお菓子……。衣食住にまつわるあらゆるものが並んでいて
そのすべてが伊藤さんが「こんなものがあったらいいのに」と考えたもの。

取材だったり、展示会場など偶然伊藤さんに会って、話をする機会がありました。
weeksdaysにアップした商品は、
「毎回、気持ちがいいように売れてくれるの」
と語ってくれて、すごいなあ〜とずっと思っていました。

2015年、私は伊藤さんの「あした、金沢へ行く」(宝島社)という本で
ライターとして一緒に仕事をさせていただきました。
4〜5回に分けて、金沢に行って、おいしい店をあれこれ取材する仕事は楽しかったなあ〜。
あの頃、伊藤さんはたくさんの雑誌の連載を抱えて、
新幹線の中でも原稿を書く、という忙しい日々を送っていました。

それが、ふと気づくと、
取材でご自宅へ伺っても
「最近、ずいぶんと時間に余裕ができました。今週なんて、3日しか働いてない!」
ですって!

「まあちゃんの中で、きっと何かが変わっているはず」。
そう思っていた私は、いつかじっくりお話が聞きたいと思っていたのです。

そんな時、「芸術新潮」のまさこさんの連載「あの人と食器棚」で、
我が家に取材に来てくれました。
我が家の食器に、まさこさんがちゃちゃっと作ってくれたおかずを盛って撮影し、
終了後それをいただくという、なんとも素敵な時間で、
豆腐に豆乳をかけて蒸し、ごま油をたらりとかけた一皿や、
カリフラワーを鉄のフライパンでこんがりやいて、塩をぱらりとかけた一皿など、
どれもとってもおいしかった!

食べながら、いろいろな話をする中で
あの「weeksdays」を立ち上げるにあたって、
まさこさんは、それまで抱えていた連載を一切やめてしまった、
と聞いて驚きました。
「その時は、全部で7つぐらいの連載があったんだけど、
私って、何かが軌道にのると別のことがしたくなるのね。
連載を続けて、それを本にまとめる、というのが10年以上続いていて、
何か違うことができないかなって、ずっと思っていたんです」

 

 

なんと!
連載7本をスパッとやめてしまうなんて!
その勇気と潔さに、私は度肝を抜かれてしまったのでした。

これは、今こそゆっくりお話を伺わなければ……。
この取材が終わった後、今度は逆に「お話を聞かせてくれませんか?」
とお願いしたのでした。

打てばすぐ響く!というのがまさこさんらしさ。
「いいよ〜。来週吉祥寺に行くからどうお?」というお返事。

慌ててスケジュールを調整し、再び我が家にお迎えしました。
そうして聞いたまさこさんの新しいビジネスのお話し。
「新しい暮らし方、働き方」について、次回からじっくりお届けします。

 

写真/近藤沙菜(本の写真以外)


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