福岡県糸島で、野草ハーバリストとして活躍する加藤美帆さんにお話を伺っています。
Vol1 . 回り道してたどり着いたのは、素のままの自分に還ること
Vol2. 自分がやりたいことは、自分で決めていい
Vol3, 自然の一部として生きれば、自分に素直になれる
Vol4, 人生は、舞台の上でたった一人で踊っているダンス
よもぎ茶を作りながら、加藤さんは糸島のサロンで、
月に数組だけの「薬草リトリート」を行なっています。
リトーリートってなんですか?と聞いてみました。
「非日常、という意味で、普段忙しく生活している人が、
自然の中に入って自分を取り戻す時間を持つ、というものです。
まずは、朝10時頃来ていただいたら、ウェルカムティーの季節の薬草茶をお出ししながら
体調や今、どんな心持ちなのか、お話を伺います。
その後カゴを持って一緒に野草を探しながら散策し、
季節のさまざまな山菜や野草、野の花を学びます。
一旦戻って、糸島産の新鮮な野菜と、摘みたての野草を蒸篭や土鍋などを使って調理。
滋味深い食事を作ります。
ノンアルコールの発酵ドリンクや、さまざまな薬草酒とともにランチタイムを。
午後は、数十種類の薬草エキスや、たくさんの精油の中から、
自分の心とお肌にぴったりの薬草化粧水を作ります。
こうやって、おいしいものを食べながらのんびり過ごしていただきます。
私が何かを『してあげる』というのではなく、
あくまで自然の中に入って、その人自身が自分の強さやしなやかさ、痛みに気づいて
一人で自分自身を癒していく……という感じですね」。
私も、今回一緒に野草を摘みに出かけ、一緒にキッチンにたってお手伝いをし、
ご飯をいただきました。
なんだか、古い友達の家を訪ねたよう……。
キッチンのすぐ外に広がる自然を感じるということは、 想像以上に大きな体験でした。
縁もゆかりもなかった糸島に移住し、
ゼロから自分が好きなことを立ち上げていった美帆さん。
今は仕事も軌道に乗り、新たなパートナーとも出会い、
「今が最高に幸せ」と語ります。
好きなことをして食べていきたいけれど、勇気がなくて悶々としている人たちに
何か言ってあげられることはありますか?と聞くと、こんな風に答えてくれました。
「自分が自分を満たしていなかったら、好きな仕事は始まらないと思います。
自分が好きなことをやりたくて、もがいている人って、真面目な方が多くて
そういう人は、何か価値があることをしないと、自分には価値がない……って
思ってしまうところがあるんですよね。
でも、全然そんなことはなくて、 私もまだ思いきれていない時もありますが、
自分は自分でいい……。
自分が自分であることに心地よくなると、
自然と心底リラックスした状態になって、
ふっと思い込みがほどけて、
初めて内側の『本当にやりたいこと』にアクセスできるんだと思います。
だから、まずは嫌なことからやめてみるとか、
すごく小さなことでもいいから、自分のしたいことをするとか……。
そんなことを続けているうちに、「やりたいこと」をやる方法がぽろりと出てくる。
『自分の中に必ず答えはある』ということは、信じていいと思います」。
私も若い頃は、「まだまだ」「もっともっと」と
自分を否定することで、さらに高く飛ぼうと思っていました。
確かにそれは、ひとつの力になりました。
自分が足らないことを満たす何かを渇望する……。
その「上昇欲」があったから、頑張れたし、まだ見ぬ世界にやっと手が届いた喜びも
体験できたと思います。
でも、ずっと「まだまだ」と思い続けていると、自分を消耗してしまいます。
どこかで矢印を自分に向けて、
「私は私のままでいい」と思える時期がやってくるのだと思います。
それは、「自分」に対して腹を括ることでもあります。
「私はこれでいいんだ」と。
そして、腹を括るからこそ、「そんな私ができることってなんだろう?」
と自分の中から力を引っ張り出すことができる……。
「あ、みつけた!」
野草を摘みに出かけた美帆さんの笑顔のさわやかなこと!
「自分でいる」ことで、こんないい顔になれるんだと感動してしまいました。
私もこんな風ににこやかに笑える毎日を送りたいと思います。