「道を探したことなんてない」っていう人に会いました

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このコンテンツ「もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っている、と思っていたことなのに、
この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

 

ノリコさん、これからどうやって自分の道を歩いて行こう?と悩んでいるでしょう?
私もずっと、どうしたら人生で成功できるんだろう? どうしたら幸せになれるんだろう? 考えながら、ずっとその道がどこにあるんだろう?と探し続けてきました。

でもね、この仕事をするようになって、何かを成し遂げた人の話をきいて、驚くことがあります。それが、彼ら、彼女らが「道を探したことなんてない」ってこと。お菓子が好きでずっとお菓子を作り続けてきた。絵が好きでずっと絵を描き続けてきた。そうしたら、ここまでやってきただけ。そう語る人が多いんです。へ〜、道って探さなくても歩けるんだ、と私はずいぶんびっくりしました。

「私は、それほど強く『好き』って思えるものを持ってないし……」って、ノリコさんは思ってるでしょ? 確かにすべての人が、夢中になれるものを持っているわけじゃない。でも、彼ら、彼女らのあゆみ方から私が学んだのは、誰かの足跡をたどっても、幸せにはなれない、ってことでした。

道を探さないってことは、どこへ行くかわからないってことです。自分がどこへ向かっているのかがわからないってことは、ずいぶん不安になります。でもね、目的地が見えないと自然に足元に目がいくでしょう? それが大事なことなんだ、って私はこの歳になってやっとわかりました。

ゴールだけを目指してしまうと、いかに早くスムーズにそこにたどり着くかがいちばん大事、と思い込んでしまいます。でも、幸せって、きっとゴールにたどり着くことじゃないんですよね。そんな根本的な事実に、私はずっと気づいていなかったんだなあ。

「道を探したことなんてない」という、彼ら彼女らは、ものすごく不器用な歩み方をしていました。誰かに頼めばすっとできちゃうことを、自分でやってみるからものすご〜く時間がかかる。やってみて失敗することも多い。そんな話を聞きながら、私は「ああ、そうか」と思ったのです。そんな試行錯誤の時間すべてが、その人の「個性」となって蓄積されるんだなあって。
そして、そうやって蓄積されたものが「体力」となって、その人の足を前へと進ませる。
そうやって「獲得した道」こそ、その人だけの「幸せ」と呼ぶんだなあと……。

ノリコさん、彼ら彼女らみたいに強くなれないかもしれないけれど、私はこのことを知って、今ノリコさんの歳に戻れるとしたら、もっと自分を信じれてあげられるかなあと思うのです。ノリコさんは今、自分に自信がなくて、だからどこへ向かったらいいかわからなくて、それで周りをキョロキョロ見たくなっちゃうでしょう? でも、人の力って案外すごいものなんだよ、きっと。ノリコさんの中にも必ずその力がある。その力は、ああかな?こうかな?と自分で試行錯誤する時間によって磨かれる。そうやって、自分の力を磨くことを「幸せ」っていうのかもしれないね。

そしてね、道を探さない人たちはみんな楽しそうでした。うまくいかないことがあっても、なんだか楽しそうなんだよね〜。その姿を見て私は、いいなあと羨ましくなりました。
たぶん、どうやったら幸せになれるんだろう?って遠くを見るのをちょっとお休みして、「今日楽しいことってなんだろう?」って考えてみればいいんじゃないかな? 私は若いころ、先の心配ばかりして、ちゃんと「その時」を楽しめなかったなあと後悔しています。
ノリコさんは、不安定で、何も持ってなくて、何も達成してないかもしれないけれど、そんな自分のまま「今日楽しめること」がきっとあるはず。それは立派なことじゃなくても、素敵なカフェでおいしいケーキを食べる、ってだけでもいいと思います。1日1日の積み重ねが、その人をその人らしい道へと導いてくれる。これって信じていいよ。

私もずいぶん遅くなってしまったけれど、人生の後半に向けて、ゴールを探すことをやめて、今日起こることを楽しもうって思います。


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