ノート7 憧れの人を前にして【おへそのおへそ】

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第7回目を迎えたきときとノート、今日から「暮らしのおへそ」にまつわる新しいコーナーを始めたいと思います。

題して「おへそのおへそ 」です。

以前、「おへそに学ぶ、心のあり方」として27号の植松努さんについて書かせていただきましたが、あの人のおへそにも、この人のおへそにも、それぞれに人生という背景があって、私は心を動かされっぱなしです。

おへそから何を感じたのか、誰かのおへそ(=習慣)を受けて自分のおへそにどんな変化があったのか、そんなことを書いていけたらと思っています。

 

初回にお届けするのは、28号に登場の竹花いち子さんです。

料理人の竹花さんは、もともとはコピーライター、作詞家として活躍されていました。しかしキャリアを積んでいく中で、「自分がいいと思うものが通らない」という息苦しさを感じるように。

そんな頃に「ザ・ブルーハーツ」の甲本ヒロトさんに出会い、あっという間にメジャーになった彼らの姿に「本当のことって、どんな人にも通じるんだ」と衝撃を受けます。

自分も心から好きと思えることをやっていこうと決心し、料理の道に進みました。

 

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個人的な話になりますが、ブルーハーツがメジャーデビューしたのは私が2歳の頃です。リアルタイムで知ることはできませんでしたが、7歳年上の兄がよく聴いていたのがブルーハーツでした。

毎日かなりの音量で流れていたので、多感な思春期の頃は「うるさいな~!」とイライラすることもありましたが、ある日「お前も聴いてみるか?」と歌詞カードを見せてもらったら、あれっ、この人たちが言ってること、すごく好きかも!と思ったのです。

そこから、リンダリンダ、TRAIN-TRAIN、情熱の薔薇、人にやさしく、青空、ブルーハーツのテーマ…、兄からたくさん聴かせてもらいました。私にとってほとんど父親代わりのようだった兄が教えてくれたブルーハーツ、そして甲本ヒロトという人間は、やっぱりちょっと特別な存在でした。

きっといろんな人の心の中に、それぞれのヒロトとの思い出があるのだと思います。

 

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そして竹花さんは、そんな憧れだったヒロトが、つい最近自分の料理を食べにきてくれたと話を続けます。その時の心境を語ってくれた言葉が、私は忘れられません。

「憧れの人を前にして、私はちゃんと立っていられたんです。ああ、私は好きなことをやってきたんだなと、自分に少し自信が持てました」

憧れていたヒロトを前に、臆することなく自分らしく立つ竹花さんの姿が、映像として浮かんでくるようでした。

自分を自分以上に大きく見せようとせず、かといって必要以上に謙遜して小さく見せようともせず、「ちゃんと立っていられた」竹花さん。なんてかっこいいんだろうと思いながら、私はあるシーンを思い出していました。

 

ちょっとお恥ずかしい話なのですが、私は憧れていたある人に出会った時、自分らしく振る舞えなかったという苦い経験があります。

その「ある人」こそ、今お手伝いをさせていただいている一田さんなのです。

忘れもしない、2年前に初めて行ったおへそ展でのこと。当時はまだおへそ塾などにも参加していなかったので、本の中の「一田憲子さん」を実際に見たのはこの日が初めてでした。

お話しできる機会に恵まれたのに、緊張のあまり頭の中は真っ白。せっかく会えたんだから何か気の利いたことを言わなきゃ、何か印象付けることを言わなきゃ…!と空回りして、自分が何を喋ったのかほとんど覚えていません。

自分を自分以上に見せようとして、そのままの自分でそこにいられなかった。それが本当に情けなくて、このままじゃ駄目だと思いました。

今思えば、私が一田さんにお仕事を手伝わせてくださいとお願いしたのは、ここで「自分を変えたい!」と強く思ったことも、大きなきっかけだったのかもしれません。

 

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本当に好きな料理に本気で向き合っていたから、ヒロトの前でも自分らしく立っていられた竹花さん。

私は私で、本当に好きな一田さんのお手伝いに本気で取り組んでいるうちに、だんだんと、自分らしく立っていられる自分に近づいているように思えました。

一生懸命続けてきた何かによって自分の内側が満たされていたら、どんな人の前でもしっかり立っていられる。今はそんな気がしています。

私の場合は、やったこともなかった文字起こしがいつの間にか自分を楽しさや充実感で満たしてくれていたので、本当に、きっかけはどこに転がっているかわからないなあと思います。

仕事に限らず、好きなことでも趣味でも気になることでも何でも、自分が熱中できることは、きっと自分に力を与えてくれるのだろうと思っています。

 

ブルーハーツを聴きながら、「私は好きなことにまっすぐ向き合っているか?」と問い続けてきた竹花さん。

憧れの人を前にした時、どんな自分でありたいか。自分が本気で向き合えることは何なのか。そう問い続けることが、人生を変える大きな一歩になるのかもしれません。

問うことをやめずに、まっすぐな自分で生きていけたら。そう思わずにはいられない竹花さんのお話でした。

 


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