エヌ・ワンハンドレッド大井幸衣さん vol7

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「100年たってもずっと好きなものを」
とカシミヤを中心としたブランド「エヌワン・ハンドレッド」を
立ち上げた大井幸衣さんに
ビジネスとお金にまつわるお話を伺うこの企画、
いよいよ最終回です。

 

大井さんは、マーガレットハウエルの仕事をしていた時期
最後の2年間は、取締役を務めていました。
「なりたくてなったわけじゃなかったけれどね」
と笑います。

「でも、当時は自分が取締役になった、という意味を全然わかっていなかった
なあと思いますね。
今から思い返せば、ものすごくいいお勉強をさせてもらったと思います。

会社では、ブランドごと、ディビジョンごとに、売上がどうだったか、利益がどうかと
それぞれの営業担当が定期的に報告する会議がありました。

さらに、役員会では、今会社がどういう状況になっているか
資金繰りも含めて、どのぐらいの利益がでて
子会社はこういう状況になっていて、
BS、PL(貸借対照表と損益計算書)を毎回審議するんです。

2年間それを毎月毎月見ていたら、
なるほどね、こういうことが重要なんだとわかってきました。

結局、商売ってすごくシンプルです。
売り上げから仕入れを引いて残ったもので粗利を出し、
さらに経費を引いて営業利益が出て、経常利益を出す……。
その数式が、実はものすごく大事な基本になっている、
ということを、私はあのとき初めて知ったんだと思います。

それって、どんな大きな会社でも、どんな小さな個人商店でも同じこと。
儲かった利益以上に経費は使えない。
当たり前だけれど、
知らず知らずのうちに、基本にのっとってものごとを考える
というトレーニングをされていただんだなあって思いますね」

 

私は、数字が本当に苦手です。
やりがいのある仕事のために、何をやるか……。
そんな仕事の「内容」について考えるのは大好きだけれど、
それがどれぐらい儲かって、どのぐらい経費がかかるのか。
そんな数字で分析するとなると頭が痛くなる……。
つまり、数字を見ても、「我がこと」だとなかなか感じられないってこと。

でも、大井さんはこんな風に語ってくれました。

「いつも、いろんな人に言ってきたんだけれど、
どんなに大きな会社の一員であっても、
『それは、自分には関係ない』って思うより、
『自分の会社のつもり』
で、いろんなことに対峙したほうが、絶対に楽しいし、利益につながる。
そこを放棄しちゃうって、本当にもったいないと思うんです」。

「エヌ・ワンハンドレッド」をスタートするとき、
「勉強になるからやってみたら」と税理士さんに言われて、定款作りから登記手続きまでを
すべて自分で手がけたそうです。
そして、大好きな数字だというゾロ目の日に会社を設立!

すごいなあ〜!

世の中には、会社が成り立つための仕組み
ビジネスを動かすためのお金の流れ
ものを仕入れて売るという物流、
など、私たちが普段当たり前のように過ごしている
生活を支える「地下鉱脈」のようなパイプがたくさんあります。

地面の下にあるから
見ないで過ごすことだってできる。
でも、自分の足の下に、実はどんなパイプが存在し
互いのパイプがどう関係しあいながら、地上の世界を動かしているか、
学び、知ることで、
私たちの人生は立体的に立ち上がってくるのかも。

大井さんは、いつも目の前にある事象の奥がどうなっているのか
スコップで掘ってみて、「へ〜なるほど!」と感心し、
そのしくみを自分の中へ蓄えて
歩き続けてきたよう。

掘れば掘るほど、こっちの水路とあっちの水路がつながって、
人生がますます面白く展開していく……。

まずは、今目の前にあることをちゃんと見てみよう。
大井さんにお話をきいて知ったのは、
「現状を把握する」ことが、
すべてのものごとの始まりであり、未来への足場となり、
自分を支える底力となる、
ということでした。

 

ちなみに、今度の新たな会社の設立は2016年の11月11日とこれまたゾロ目の日。
「担げる縁起は担ぎまくるってことで」と大井さん。

フランス語で「旅の始まり」という意味の社名をつけたそうです。

やられたな〜!
なんて素敵な名前なんでしょう!
60歳からまた旅が始まるなんて。

これから、大井さんが旅先でどんな面白いものを拾い上げ、
見せてくれるのか、ワクワクと楽しみです。

 

 

 

 

 


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