はじまりは、今年の夏、青森の三内丸山遺跡に行ったことでした。
日本最大級の縄文集落跡です。
今から5500年〜4000年前の縄文時代、長期間にわたって定住生活が行われていたそうです。
びっくりするほどの大きな掘立柱建物跡があり、膨大な量の縄文土器、装身具、豆やごぼう、栗など、栽培していたであろう植物も出土しています。
どうして、ここにこんな大規模な遺跡が残っているか。
それは、かつてこの土地がとても温暖な気候で、農作物が豊富に採れ、海や山が近かったからだそうです。
展示館でそんな説明を読みながら
「へ〜〜!!」
と私は随分感心したのでした。
「そっか。気候が温暖だと、食べ物がいっぱい採れるんだ。
食べ物がいっぱい採れると生活が豊かになれるんだ」
そんな当たり前で単純なことが、すとんと胸に落ちました。
「お金を稼いで豊かになる」という社会にどっぷり浸って生きている中で
「食べ物を収穫して豊かになる」という方法がある、
ということを、縄文のでっかい遺跡を目の前に
やっと実感できた気がしたのです。
そして、
う〜ん、私も「そっちの豊かさ」を体験してみたい!
と思ったのでした。
そこで、自宅に帰って、庭の片隅に畑を作ってみることにしたのです。
今まで、いろんな取材で野菜を育てている人のものを訪ねましたが、
自分でやってみようなんて、一度も考えたことなんてなかったのに……。
さあ、ここからが大変!
庭の片隅を「ここ」と決め
まずは、スコップ片手に土を掘り起こすことから開始!
いや〜、土の中にはいろんなものが埋まっているのですね〜。
おそらくこの家をリフォームしたときのものか、タイルやプラスチックの破片や
もちろん、石ころや……。
掘り起こしたら、アマゾンでポチって買った大きなふるいにかけます。
このふるいにかける作業がツライ………。
汗だくになり、腕がぷるぷる震え、クタクタになりました。
やっと、ふかふかな土ができましたが、これからどうしたらいいのかわからない……。
インターネットで「畑の作り方」「野菜の育て方」などを見てみても
どれが正しい方法なのか、わからない。
できれば、あまり肥料などは使わず育てたい、と思っていました。
そこで、北海道の「食べると暮らしの研究所」の安斎伸也さんにSOS。
伸也さんは、すぐに「畑の写真を送って」と言ってくれ、
それを見て、「木灰を振りかけて混ぜて」とか
「畝を作って」「もうちょっと土をぐいぐいっと盛り上げて」
など遠隔操作で指導してくれたのでした。
やっとできあがったのがこの形。
そして、大根、小松菜などの種をまきました。
すると1週間ほどで芽が出た!
嬉しかったな〜。
ちっちゃな芽はかわいくて。
自分で育てた大根を食べる日も間近!とワクワクしていたのです。
ところが………。
ちっとも大きくならない……。
そこで、やっと気付きました。
この畑の場所、壁の影になって、太陽の光がほとんど当たらない……。
自分ちの庭の日当たりにさえ、気づかなかったのです。
今、畑には10センチぐらいに伸びた大根葉と3センチぐらいの小松菜が育っています。
これ以上は大きくならないみたいだから、
そのおちびちゃんたちを摘んでお味噌汁の具に……。
こうして、「我が家の畑から豊かになろう大作戦」は失敗に終わろうとしています。
でも、やってよかったな〜。
野菜をひとつ育てるのでも、
やってみないとわからないことがいっぱいありました。
太陽の光って偉大!
って知れたのもよかった。
いつか、日当たり抜群の場所で、ふかふかの土で、大きな大根を育てるのが
今の私の夢です。