「暮らしのおへそ」でお世話になり、ミセスの連載や「樋口可南子のいいものを、すこし」など
数々の上質な著書で知られる文筆家の清野恵里子さんより、上梓された本を送っていただきました。
知る人ぞ知る映画俳優、市川雷蔵さんの人となりと、雷蔵映画を読み解いた1冊。
清野さんは、たまたま知り合いからのメールがきっかけで、
新宿の映画館で開催されていた市川雷蔵の映画をご覧になったそうです。
その日から、連日雷蔵映画に通い、この本を書く決意をしたのだとか。
タイトルは「咲き定まりて」
なんて美しいタイトルなのでしょう!
そして、表紙を開けると、目に飛び込んできたのがこの伸びやかに描かれた牡丹の花。
歌人木下利玄の
「牡丹花は咲き定まりて静かなり花の占めたる位置のたしかさ」
という歌の一節なのだそう。
実は、私は市川雷蔵さんの映画を1本も見たことがありません。
でも、この美しい本を手にしたとき、すぐにアマゾンでDVDをチェックしていました。
本を読みながら、映画も見てみようと思ったのです。
そして、この時期、
「こんな風にこの1冊を受け止められる私」であってよかったなあと思いました。
今の私の状況といえば……。
「暮らしのおへそ」の別冊の取材が始まっています。
でも、その他の仕事が立て込んでいないため、時間に追いかけられているわけではありません。
ドタバタしている時期ならば、この本も「後でゆっくり読もう」とデスクの端に積み重ねて
おくことになったと思うのです。
それが、宅急便の包みを開け、本を見てタイトルの美しさにため息をつき、
開いてみて、牡丹の花にハッとする……。
仕事の合間に「市川雷蔵」を検索し、DVDをチェックする。
そんな時間を持ててよかった。
これぐらい、いつも自分の中に、心が動くための「隙間」がある暮らし方が
できたらいいなあと思います。
私はフリーライターなので、
ちょっと暇になるとたちまち不安になる、というワーカホリックです。
でも……。
そろそろ、スイッチを切り替えてもいいのかも……と最近少し思っています。
不安で、心がす〜す〜しても、
その分心を研ぎ澄ませて、
「あ〜、これいいなあ」と柔らかい心で何かを受け止める日々へ。
たくさん仕事をして、たくさんお金を稼ぐことも大事だけど
なんの得にもならないけれど、
自分の心がハッしたり、キュンとしたり、フ〜ッと息を吐いたり。
そんな微かで密やかな体験を大事にできたらなあと思います。