言語知でなく、身体知を使ってみる。

朝歩いていたら、菖蒲のつぼみが凛と立っているのに出会いました。
今年は、つつじも早く咲き始めたし、藤の花も満開だし、
季節が早足で駆け抜けていくよう。

毎日同じところを歩いていると、
満開の時だけでなく、小さな蕾や、
咲き終わった後に、枯れたり、枝に若葉が出てきたり……
とその「前」と「後」まで楽しめるのがいいところです。

さて……。
何回も出てきて恐縮なのですが……。
私がいつも聞いている「コテンラジオ」は、基本的に歴史のお話なのですが、
「番外編」という回があります。
先日の番外編がとっても面白く、いろいろ考えさせられたので、ちょっとご紹介しますね。

コテンラジオは基本的に3人で進められます。
ひとりが、(株)コテンの代表、深井龍之介さん。
そして、同じくコテンのメンバー、中国人のヤンヤンさん。
さらに、「歴史を知らない人」という役割だけれど、
「場を回す」重要な役目を果たしている、元吉本芸人でミュージシャンの樋口聖典さん。

その樋口さんが、地元の福岡県田川市に立ち上げられた「いいかねパレット」についての話が
今回の番外編でした。

全3回なのですが、第一回目は
田川には怖いおじさんが多いとか、その人に酔って絡まれたとか、
雑談が続いて「なんだこれ?」と思っていたのですが、
第二回になると、ぐっと話が深まって、
そのギャップが大きいが故により引き込まれてしまいました。

詳しくは、ポッドキャストを聞いていただけたらいいと思うのですが、
「いいかねパレット」は、廃校を利用した施設。
樋口さんは、そこを「自由になるために作った」と話していました。

東京じゃなくちゃダメ、
ではなく、「どこでも働ける」自由。
やりたいこと、好きなことをやれる自由。

今、ここでは、ミュージシャンの人が曲を作って録音したり、
食堂を開いたり。
ここに住むこともできて、
暮らしながら、田川市の市会議員になった人もいるそうです。

コンセプトは
「なんでもできる場をつくる」。

今、樋口さんから引き継いでこの「いいかねパレット」の社長を務める青柳さんは、
「なんかやりて〜と思っている人が、なんかをできる場をつくる」
と説明されていました。

つまり!
ここは、「何か」を作ったり、生み出すことが目的ではなく、
そうやって「生み出したい人」が、安心していられる「場」だということ。

「この日本の端っこの辺境の地に来たら、才能が開花しちゃう……かも。
それが事実かどうかはわかりませんが、でも、開花する可能性は上がると思います。
それが大事」と樋口さん。

そんな「いいかねパレット」の在り方を、深井さんは
「経済合理性」という言葉で説明されていました。

「いいかねパレット」は、
樋口さんが、東京で芸人やミュージシャンとして仕事をして、
でも、そこには求めるものがない、とわかって
地元田川に戻り
「ここだってできることがきっとあるはず」とスタートさせました。

そこには、「儲かるか」「儲からないか」という視点はなかったのです。
今も、この施設は、誰かの「やりたい」を実現する「場」として存在しようとしていて、
それがビジネスになるかどうかは、
「やってみた後に考える」というスタンス。

もちろん、宿泊施設だったり、事業を立ち上げたりと
マネタイズのこともちゃんと考えていらっしゃるけれど、
「はじまり」は、「経済合理性の外」にあったのでした。

この、何かをはじめるときに「経済合理性の外に出る」ことがいかに重要か……。

「経済合理性がなくて、説明がつかないことに、価値がない、と思っている人が多すぎる」
という深井さんの言葉に深くうなづきました。

さらに、深井さんが語っていたのが

「言語知」

「身体知」
というもの。

私たちは、何かを始めたいとか、夢を持つとき、その正体が一体何なのか、
言語化しようとします。
私も、書くことは、そんなもやもやに輪郭をつけることだと思ってきました。

でも……。

深井さんはこんなふうに説明されていました。

すべては説明可能とすることは、
だれが取り組んでも再現性があるということ。
そうでないと価値がない、とされてきた。
すべては、数字とお金で説明できる、と考える人がほとんど。
でも、そうなると、お金が集まるところが「正解」になる。
すると、今の世の中、すべてが「AI」や「IT」になる。

だけど……。
この世には、「言語知」では測れないものがたくさんある。

それを測るのが「身体知」というもの。

なるほど〜!

確かに、この「外の音、内の香」を始めるときも、
まさに「身体感覚」でした。

仕事のオファーがなくても「書ける場」が欲しい……。
もうかるか、もうからないかわからないけれど、
とにかく「場」を作ろう。
と思ったのでした。

そして、
「あ〜、おもしろ!」
「あ〜、出会えてよかった!」
「あ〜、書きたい!」
そんな心の底から湧き立つものがあってこそ、
続けることができたのかも。

今回、この番外編を聞いて、
人生後半になった今、この「経済合理性の外」に出ることを、
もっと意識的にやってみたいなあと改めて思ったのでした。
つまり、面白そうだから、とにかくやってみる!
ってことです。

「身体感覚」のアンテナの感度を上げて、
合理的でなくても、結果がでなくても、
ワクワクする、という感覚を信じて、
「そっち」の方へ足を踏み出してみたい……。

これは、今年の目標でもある「自分をその場に晒してみる」こととも、つながってくるなあと感じています。

さあ!ワクワクすること、探してみよ!

みなさんのワクワクはなんですか?

 

今日もいい1日を!


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