自分の周りにいる「たったひとり」を見つけること


いつも、ハンカチがわりに手ぬぐいを持ち歩いています。
久しぶりに、新しい手ぬぐいを買いました。
たったこれ1枚でも、なんだかワクワクします。

蒸し暑い日が続きますね。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

さて。
先日「イチダさん、龍馬伝見終わりましたか?
7月1日でNHKオンデマンド配信終了だそうですよ〜」
と連絡をくださった方がいました。

お〜!ぎりぎりセーフ!
ちょうどその前日、48話すべてを見終わったばかりだったので。

「西郷どん」もよかったけれど、「龍馬伝」も本当に素晴らしかった!
見終わった今、なんだか放心状態に陥っております。(笑)

長年続いた、幕藩体制を壊し、
「新しいにっぽんのしくみをつくる」、と駆け巡った龍馬……。
その大きな視野と行動力にも、もちろん感動したのですが、
私が全48話の中で、いちばんよかったなあとしみじみ感じたのは、
蒼井優ちゃん演じる、芸者の「お元」との回でした。

パティスリー アサコイワヤナギのクッキーをいただきました。最近ふかし芋のおやつしか食べていなかったから、久しぶりでおいしかったなあ〜!

 

長崎のNo1 芸者のお元は、実は隠れキリシタンでした。
そして、お金を稼ぐために、長崎奉行の密偵を務めてもいました。
ある日、かんざしの中に十字架が描かれているところを見つかって、正体がバレてしまいます。
町中を奉行たちがお元を探し回り、絶体絶命……。
そんな中、自身も命が狙われている龍馬が、
お元を助けようと動き出します。

自分も見つからないように、町中を走り回りお元を見つけ出し、
イギリス公使にかけあって、
イギリスに向かう船に乗せて逃すのです。
「これからお前は、堂々とマリア様を拝める国に行くじゃき」
砂浜で、お元を送り出す龍馬の言葉に号泣しました。

これから「にっぽん」という国を変えようと、幕府と戦おうとしている人が、
いち芸者のために駆けずり回る……。
そこで、龍馬自身が捕まってしまったら、大きな野望も台無しになってしまうのに。

この「たったひとりのために」という姿にノックアウトされてしまいました。

たったひとりの芸者をこれほどまでに必死に助ける人だからこそ、
龍馬はにっぽんを変えられた。
ここで、お元は助けたいけれど、危険だし、自分にはもっと大きな仕事がある、
と見て見ぬふりをする人なら、
にっぽんを変えられなかったんだなあと思ったのでした。

その時、私は、「暮らしのおへそ」vol35で取材をさせていただいた
たったひとりで「夏葉社」という出版社を営む、島田潤一郎さんのことを思い出しました。

「夏葉社」で出版する本の初版は2500部。
「1億2000万人に知られなくても、2500人に誠実であればいいと思う」
と語っていらした島田さん。

あの時、「なるほど!」と思ったけれど、
今回龍馬伝を見て、「ああ、そうだったか……」と初めて腹落ちした気がしたのでした。

2500人に届くとか、1億2000万人に届く、
という数字は、結果です。
大事なのは「2500人に誠実に向き合う自分になる」ということ。

龍馬なら、「たった一人のお元を放っておけない自分になる」ということ。

それが、ひとりのためでも、1000人のためでも、1万人のためでも、
「自分の在り方」はひとつです。

私たちはつい「結果としての数字」によって、「自分の力の出し方」を知らず知らずのうちに調整してしまうけれど、
「いてもたってもいられない」という「自分の在り方」こそ、
本物のその人の力そのものなのかもしれないなあと思いました。


時折、イベントなどでお会いした人が、
「通勤途中に、電車の中で『外の音、内の香』を読むのが楽しみなんです」
と言ってくださることがあります。

その方の生活の一部に、私が書いたものが入り込んでいる……。
そう考えると、ありがたくて、胸がいっぱいになります。

つい、「たくさん売りたい」「重版しますように」と思ってしまうけれど、
私は、どこかにいらっしゃる、たったひとりの人に
私の文章を読んでいただけて、その方の何かがちょっと変わったり、何かを感じていただけたら
それで幸せなんだよなあ。

たったひとりの人の胸にスッと入っていけるように……。
そんな「自分」になって書き続けていきたいなあと思います。

大きな成果を産まなくても、
どんな人の周りにも、そんな「たったひとり」は見つかるのかもしれませんね。

みなさま、今日もいい1日を。

 


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