「プロセスエコノミー」という新しい見方

やっと「おへそ」の原稿がひと段落して、ゆっくり本を読む時間を持てるようになりました。
「おへそ」の取材中は、取材させていただく方々にまつわる本をたくさん読むので、
個人的に読みたい本に手を出す余裕がありません。

気分転換に、ちょっと小説を読んだりはするのですが……。

終わって、まず一気に読んだのは、
「コテンラジオ」で紹介されていた尾原和啓さん著の「プロセスエコノミー」(幻冬舎)という1冊でした。
このごろ、ビジネス書などは、キンドルで読むようになりました。

いや〜、おもしろかったなあ〜。

今の世の中では、いいものがたくさん販売されていて、
その中に新しい商品を参入させようと思っても、なかなかワクワクするものを
提供できなくなっているそうです。

つまり、テレビや冷蔵庫を買うときに、
シャープでも東芝でも、そんなに大きく変わらない……。

「もはや、完成形で差をつけるのってしんどい」
と尾原さんが書いていらっしゃいます。

「みんな、いい製品を大量に作って、値段を手頃に抑えて、広告や口コミなどを通じて認知を広げ、
流通などをしっかりと固めてちゃんと届けるということをやります。
(中略)
品質もいいし、値段も手頃だし、流通もしっかりしていてちゃんと届きます。
そして、水準があがりきった結果、差が小さくなっているというのが今の状況です」

こうした、今までの状況を「アウトプットエコノミー」と呼ぶそうです。

そして、このアウトプットエコノミーが限界に達したとき、
新たに生まれた概念が「プロセスエコノミー」です。

「このような人もモノも埋もれる時代の新しい稼ぎ方が、プロセス自体を売る『プロセスエコノミー』です」。

じゃあ、いったいプロセスとはなにか?
例としてあげられていたのが、「サスティナブル」ということ。

「地球環境にいいもの、ちゃんと制作プロセスに気を配ったものが注目されています」
と。

このほか、Nizi projectもそうでしたし、BTSでファンがお金を出し合って、街中のいちばん目立つところに
広告を出すというのもそう。
BTSは、従来のアイドルが写真の版権を厳しく守っていたのに対して、それを緩めて、
「プロセス」が広がっていくビジネスを構築して成功したのだとか。

確かにその通りだなあと思いました。
私たちが若い頃、バブリーな時代は、新商品が出るたびにワクワクしたし、
へ〜、こんなこともできるんだ!と
世界がひっくり返るような思いでした。

ウォークマンしかり、ワープロからパソコンへの移行しかり、
100円ショップという存在もそうでした。

でも……。
今、新たな商品が出ても、「そこまでの機能いる?」と思っちゃったり、
どうしても「また〜?」と感じがちです。

でも……。
私がはまっている「コテンラジオ」もプロセスエコノミーのひとつ。
(株)コテンという、歴史のデータベース会社を立ち上げるにあたって、
まだなにも商品は完成していないし、まだまったく利益を生み出していないけれど、
その価値に共感してもらうため、
無料で歴史を語るラジオを立ち上げ、その「プロセス」が大成功を収めています。

「成果」ではなく「プロセス」を優先する……。
このことって、ビジネスを手がける人だけでなく、
普段の生活の中でも、
価値観を見直す大きなヒントとなるなあと改めて考えました。

本の中ではこう書かれていました。

「昭和の時代は、ないものをあるに変えていくタイミングだったので、
安くて良い車を作るとか、他社よりもコンパクトなコンピューターを作ればいいなど、
『結果目的的」でした。
 しかし、変化の時代は、どこにゴールがあるのか、そもそもわからないので、
ただ走っていることが楽しいから走る。そういう人が思わぬ結果を生むのです」

確かに、私も「いいライターになる」と目的を掲げて、
ひたすら走り続けてきた気がします。
でも、「いい」っていったいどういうことなのか……。
若い頃は、たくさんの雑誌で仕事ができることが目標でした。
しばらくすると、今度は自分の本が作りたくなりました。
自分の本を作ると、今度は、それが売れて重版がかかることを望むようになりました。

そうやって走り続けているうちに、
いったい私はいつ満足するのだろう? いつ幸せになるのだろう?
とわからなくなってきました。

そんな時、この「プロセスエコノミー」という考え方を知って、
「そっか〜〜〜!」と思ったのです。
私は、誰かに会ったり、新しいことを見つけて、「ほ〜〜、そうか!」と発見することが好き。
それが、いったいどういうことだったのか、自分の中で反芻し、
「書く」ことで、言語化しながら、理解していく道のりが好き。
それを誰かに伝えることが好き……。

この「プロセス」を思いっきり楽しめばいいんだな、と思ったのです。

結果を生むことを第一に考えれば、
この「書く」までのプロセスは、修行のような「つらい作業」になります。
でも、書くこと自体が楽しい!って考えれば、
私は、このブログを書いている「今」からすぐにハッピーになれる!

夕飯を作ってお風呂に入って寝る。
1日をつつがなく終えることだけを目指していれば、
夕飯づくりがどんどんつらくなります。
お子さんが小さい方や仕事と家事の両立に悩んでいる方は、
なかなかプロセスを味わうまで余裕はもてないかもしれないけれど、
でも、よくよく考えれば、
家族のために夕飯を作るって、とっても幸せなことだよなあと思うのです。
そう思って作るだけで、ずいぶん夕方のひとときが変わってくるんじゃないかなあ。

思考をくるりとひっくり返せば、
世の中を見る目が、どんどん新しくなっていきそうで、なんだかワクワクしています。

みなさんにとっての「プロセスエコノミー」はなんでしょう?

今日もいい1日を〜。


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