無意識に毎日続けていることは、外から見たら美しい

梅雨の合間の晴れの日は、
散歩途中の影の美しさにハッとします。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

さて。
先日、写真家で桐島かれんさんの夫でもある上田義彦さが初監督された映画
椿の庭」を見に行ってきました。
コロナ禍に映画を見にいくのは初めてで、ものすご〜く久しぶり。
いや〜、いい映画だったなあ〜。
これこそ、映画館の大きなスクリーンで見るべき映画だなあと思いました。

舞台は、私もかれんさんの撮影で伺ったことがある葉山のお宅。
古い日本家屋の庭からは海がみえ、庭には椿をはじめ、四季折々の花が咲きます。
富司純子さん演じる絹子さんと、
シムウンギョンさん演じる孫の渚がこの家に住んでいて、
物語は、ほぼこの家の中の時間だけ。

大きな出来事が起こるわけでもないんだけれど、
淡々とした日常の風景が心に染み入りました。
よくこの手の映画は、美しいだけで途中で眠くなったりするんだけれど(失礼!)
全くそんなことがないのは、
きっとこの映画の中に圧倒的なリアリティがあるからだろうなあと思いました。

富司さんが着物を着替えるシーンがあるのですが、
シュッシュッというきぬ擦れの音をさせて、帯をしめる姿の美しいこと!
上田さんは、富司さんに、ご自身の着物を使わせて欲しい、と頼まれたそうです。
だからこそ、手に慣れた着物をまとい、帯をしめる
「普段の姿」がそこに現れて、
何度も何度も袖を通したからこそのシーンがそこに生まれる…….

人は誰でも、自分でも無意識のうちに身につけた力を持っているようです。
お母さんだったら、毎日作り続けるご飯作りの中に手慣れた鍋のひっくり返し方が含まれているはず。
会社員の方だったら、毎朝の身支度や、満員電車に自分の場所を確保するスキルが。

そんな「無意識の力」って意外にすごいんだなあと思いました。
かつて、今は亡きイラストレーターの安西水丸さんを取材させていただいたとき、
「絵を描く時には頑張らないんです」とおっしゃっていました。
頑張って描くようではまだまだダメ。
それ以前に描いて描いて、努力して、「当たり前に描ける」ようになっていないとと……。

水丸さんは、飄々としてダンディーな方だったなあ〜。
その姿の後ろには、無意識に指先が動くまで、描いて描き続けた時間が繋がっているんだなあ
と感動したのを覚えています。

私にとって、富司さんのシュッシュと着る着物に代わるものはなんだろう?と考えました。
こうして書くこと、人の話を聞くこと、家を整えること、ご飯を作ること……。

当たり前のように毎日続けることが、
自分の中に宿って、やがてそれが自分の力になってくれる……。
そう思うと、歳を重ねることが楽しみになってきます。

その力は自分ではきっと見えないものだから、
自分で掘り起こし、光を当てて、輝かすことができたらいいなあと思いました。

みなさんの無意識の力はなんでしょう?

 

映画、おすすめですよ〜。

今日もいい1日を


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