淳与さん、ありがとうございました。

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「暮らしのおへそ vol12」で取材させていただいて、
その後もギャラリーに遊びに行ったり、時にはご飯をご一緒したり。
大好きだった「ギャルリーワッツ」の川崎淳与さんが、昨日天に召されました。

3月から闘病されていて、
娘の詩野さんが、病院に寄り添っていらっしゃる様子をSNSで拝見していました。
少しよくなられたら会いに行きたい。
そう思っていたのに……。

 

ギャルリーワッツ」は、東京青山にある小さなギャラリーです。
器や絵、アクセサリー、帽子やバッグ……。
さまざまなジャンルのものを、淳与さんと詩野さんの目で拾い上げて
紹介くださって、
毎回は伺えなかったけれど、
若い頃から、たくさんの刺激を受けました。

私は、初めて陶芸家、安藤雅信さんの器を見たのも、
彫刻家、前川秀樹さんとお会いしたのも、
「あの人がスタイリストの高橋みどりさん!」と
ご挨拶まではできなくて、声を潜めて感動したのも、
「ギャルリーワッツ」ででした。

淳与さんは、パーマをかけた白髪をギュッとひとつにまとめて
真っ赤なパンツだったり、黄色いシャツだったりと
いつもおしゃれでかっこよくて……。

 

素敵なシルバーハンターのカメラマンの中川正子さんが、
「イチダさん、すご〜く素敵な人見つけちゃった!
青山で話しかけて、思わず写真撮らせてもらったよ!」
と送ってきてくれた写真が、淳与さんだった!
ということもあったなあ〜。

一目見たら、忘れられないぐらいインパクトのあるお姿なのに、
いつもとても控えめなで、「ねえ、これ素晴らしいでしょう〜!」
とご自身ではなく、作家さんを前へ前へと押し出していらした……。

 

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私が淳与さんに教えていただいたのは、
本当の意味での優雅さだった気がします。

優雅さとは、欲張りでないということなんじゃないかなあ。
「ねえ、見て見て〜」と、ご自身で見つけられたいいものを
全力で私たちに紹介してくださるけれど、
差し出した後にどうするかは、相手に託す……。
その、踵を返して自分が後に引く様が本当に見事!

そして、一緒にご飯を食べに行くと、
いつも、若輩者の私たちを、たくさんたくさん褒めてくださいました。
会う人の中に、宝物を見つけ出す達人でいらしたと思います。

ほんの少し前まで「またご飯行きましょうね!」と言っていたのに、
もうご一緒できなくなってしまった……。
人っていなくなるんだ……。
そんな当たり前のことに呆然としています。

淳与さん、だから私は今を一生懸命生きますね。
本当にありがとうございました。

奇跡のように、淳与さんが旅立たれる前に発売された本があります。
私もこれから拝読するのですが、
みなさん、よかったら読んでみてください。

「80代の今が最高と言える」(主婦の友社)

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