己のスペックを無視して、自分を愛おしむ

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ぐんと暖かくなりましたね。
昨日は、自宅に取材が入ったため、早朝からバタバタ……。
HPの更新ができませんでした。ごめんなさい。
どんな取材だったかは、もう少ししたらお知らせしますね。

さて。
この時期、リモートワークなど、自宅で過ごす人も多いはず。
そんな今の状況を逆に楽しく使いたいものです。
普段より、ゆっくり丁寧に本を読むと、先へ先へと読み急ぐときよりも
ずっとたくさんの言葉が胸にささります。

私は今、「おへそ」別冊の取材のために、読まなくてはいけない本がたくさんあって、
自分が好きな本を広げる時間が少ないのが悩みのタネ。
それでも、この本だけは、手放せなくて夢中になって読んでしまいました。
柚木麻子さん作の「BUTTER」です。
書店でたまたま手に取ったのですが、私は柚木さんのことをこの本で初めて知りました。

も〜、びっくりするぐらい面白かったな〜。

 

年上の男たちに料理を作り、尽くして尽くして、いい気持ちにさせ、財産を奪い、殺害した容疑で
逮捕された梶井真奈子。

「本当に彼女が殺したのか」だけではなく、
「若くも美しくもない彼女に、どうして男たちは夢中になるのか」を知りたくて
週刊誌記者の町田里香が動き始めます。

 

最高に面白いのが、刑務所に面会に行った里香に
「これを作って食べて、感想を聞かせて。そうしたら本当のことを話すわ」
と言って、いろんな料理の作り方を話すところ。

いちばんはじめの「命令」が
炊きたてのご飯にバターをのせ、しょうゆを一滴垂らして食べるコト。
でした。

週刊誌記者で自宅には寝に帰るだけ。ご飯はいつもコンビニ弁当。
という里香が、炊飯器を買い、米を炊くところから始めます。
そして、例のバターのっけご飯を食べる描写のおいしそうなこと!

 

そして、梶井真奈子の「命令」に従っているうちに、
里香の持つ「価値観」が壊され、新しい価値観が立ち上がっていく……。
読むうちに、お腹がぐうとなり、
でも、同時にどこか怖く、本当の自分ってなんだろう?と考えさせられる1冊です。

 

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「こんなにもこの事件が注目されたのは彼女の容姿のせいだろう。
美しい、美しくない以前に、彼女は痩せていなかったのだ。
(中略)
梶井は何よりもまず、自分を許している。
己のスペックを無視して、自分が一人前の女であることにOKを出していたのだ。
大切にされること、あがめられること(中略)
それらをごく当たり前のこととして要求し続け、その結果
自分にとって居心地の良い環境を得て超然と振る舞っていたのだ。
そのことが、(中略)里香には感嘆に値すべきことのように思われる。
どんな女だって自分を許していいし、
大切にされることを要求して構わないはずなのに、
たったそれだけのことが、本当に難しい世の中だ」。

誰かに「〇〇して」とお願いするのは意外に難しい……。
「こんな私が頼んでいいのかな?」
「相手に悪いんじゃないかな?」
お願いするための条件が整っているかどうかを、ついチェックしてしまいます。
でも、誰かに何かをお願いすることは、
自分を丸ごと受け入れ、自分を許し、愛おしむことなんだなあと思いました。

ちょっと自分自身を「愛おしむ」という目線で見つめてみようか、と考えさせられました。

よかったら読んでみてください。

そんな読書のお供にしたいのが、ちいさくて、お腹の負担にならない甘いもの。
最近私がはまっているのが上の「ロシェ」というメレンゲのお菓子です。
KINOKUNIYAで見つけました。
砂糖と卵白、アーモンドだけでできていて、サクッと噛むと口の中でたちまち溶けてなくなってしまう
儚いお菓子。
甘さがちょうどよく、大好きです。

お茶を入れて、好きなお菓子を用意して、本を広げて。
不安定な情勢に自分をのっとられないように、
「幸せ」という免疫力を上げたいものです。

 

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みなさま、いい1日を

 

 


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