シアワセは、すぐそこの窓辺にある。

 

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昨日の東京は、まるで春のような暖かさでした。
そして、「暮らしのおへそ vol29」の発売日!
私が1日間違えて告知をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
みなさま、お手にとっていただけたでしょうか?

さて。
今号でご紹介した小川糸さんの新刊「ライオンのおやつ」。
読まれた方はいらっしゃるでしょうか?

もう、これが素晴らしい物語なのです。
いい本に出会うと、いつまでも読み終わりたくなくなります。
ずっとこの世界に浸っていたい……。
残りのページ数が少なくなると、なんだか寂しい気がして……。
この本も、ストーリーはもちろんなのですが、
ページとページの間から立ち上る光や影、
香りや音に体をすっぽり包まれて、ひたひたと幸せな気持ちになれる1冊です。

お母様の死をきっかけに「死ぬことが怖くなくなる本を書きたい」と思ったという糸さん。
物語は、余命を宣告された主人公、海野雫さんが、
瀬戸内海に浮かぶレモン島へ向かうところから始まります。
この島にあるホスピス「ライオンの家」で、人生の最後の日々を過ごすために……。

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そして、「ライオンの家」での日々が淡々とつづられています。
それがもう、気持ち良さそうで、おいしそうで……。
さんさんと光が降り注ぐ部屋のベッドには、
ふかふかのふとんが敷かれ、シーツもまくらカバーも真っ白。

朝食は、365日毎朝違うお粥。
小豆粥、百合根粥、おいしそうだったな〜。
「おやつの間」でいただくのは、ピーナッツスープをかけた豆花だったり、カヌレだったり。

そこでの雫さんの日々を追いながら、読み進めていると
「死にゆく人の物語」ということさえ、すっかり忘れて、
私自身が、なんとも幸せな気分になっていくのです。

仕事でバタバタしても、トラブルがあってイライラしても、
誰かの言葉に傷ついてメソメソしても、
続きのページをそっと繰り始めると、たちまち心に温かさが広がって、
なんともいえない多幸感に満たされる……。

そんな本です。

 

帯には小さな文字でこう書かれていました。
「毎日をもっと大切にしたくなる物語」。

確かにその通りで、暮らしのディティールがあまりにも気持ち良さそうなので、
あ〜、私も干したばかりのふわふわの布団で眠りたい。
とか
小豆でも煮て、あったかいお善哉でも作ろうかな
とか、
窓辺でゆっくり本を読む時間を作ろう
など、
いろんな家での時間が頭の中に浮かびます。

そして、シアワセとは、何かを成し遂げることや、
誰かに褒めてもらうことや、
頑張ってゴールに駆け込むことでなく、
すぐそこの朝日が差し込む窓辺にあるんだよな〜と思えてくる……。

ぜひ、みなさま読んでみてください。

糸さんには、実は「暮らしのおへそvol6」で、「おへそエッセイ」を書いていただいたのでした。
そのときのタイトルが「おむすびのこと」。
今回の表紙とリンクして、なんだか不思議なご縁を感じました。

今日もいい1日を!

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