スロー・リーディングってすごい! 量を増やすより、暮らしの奥行きを深く

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大きなイベントが終わり、やっと平常の生活が戻ってきました。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

私は、すでに来年1月発売の「暮らしのおへそ」の取材の打ち合わせ&取材が始まり
またワクワクしております。

イベントなどがあると、心がなんとなくソワソワして地に足がつかなくなります。
そんな時に思い出すのが、平野啓一郎さんの「本の読み方」という本。
この中で、平野さんが提唱していらっしゃるのが、「スロー・リーディング」です。
つまり、「ゆっくり」読む、ということ……。

ネット社会になり、どんどん情報がスピードアップしている中、
13年前に新書で発売されたこの本が教えてくれることは大きいなあと思います。

「スロー・リーディング」とは、1冊の本にできるだけ時間をかけ、ゆっくりと読むこと。

平野さんは、「一冊の本を、価値あるものにするかどうかは、読み方次第である」と言っています。

推理小説には最後の謎解きのための「伏線」がたくさんしかけられていますが、
小説やエッセイの中にも、それがあるそう。

「登場人物の繊細の感情の動きだとか、そういったプロットとは関係ないことを
準備する場合がある。(中略)
こうした伏線は、見落としてしまったとしても、推理小説の謎解きのように、
小説がそこから先へは進めないということには必ずしもならない。
だから速読の際には、しばしば見落としてしまうのである。
しかし、読書を今より楽しいものにしたいと思うなら、まずはそうした、書き手の仕掛けや工夫を
見落とさないようというところから始めなければならない。

(中略)
書き手はみんな、自分の本をスロー・リーディングしてもらう前提で書いているのである」

なるほど〜。
私は、取材の準備などで本を読むときは、たいてい急いでいるので斜め読みだったので、
そんな自分を深く反省……。

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さらにこんな風に綴られています。

「速読家の知識は、単なる脂肪である。(中略)
速読とは、『明日のための読書』である。(中略)
スローリーディングは『五年後、10年後のための読書』である」

「読書は、読み終わったときにこそ本当に始まる。
ページを繰りながら、自分なりに考え、感じたことを、これからの生活にどう活かしていくか。
読書という体験は、そこで初めて本当の意味を持ってくるのである」

「読書は『作者』という名の他者と向かい合うことを通じて、
私たちをより開かれた人間にするきっかけをあたえてくれる」

 

そして、平野さんは、「量から質への転換を」とも書かれています。
普段の生活の中でも、これはおんなじだよなあと思います。

私は大雑把人間なので、
仕事でも、「とにかくゴールすることが大事!」と
ざっくり目標を決めて、そこへと走り出すことがほとんど。

そして、なんとなくゴールが見えてくると安心して力が緩んでしまうのです。
でも、実はゴール手前にある小さなディティールを、
最後の力を振り絞って拾い上げることが、とても大事だったりします。

たとえば、取材を終えて、レイアウトも上がり、原稿を書き終わったとき
小さな違和感を感じたなら……。
「ここをもう少しこう変えたら、もっとよく伝わるかも……」
そんな微調整によって、そのページがぐんとよくなる……。

暮らしの中でもそう……。
拙著「大人になったらやめたこと」(扶桑社)の中で、
「おかずを一品作るのをやめる」と書きました。
一品少なくすると、ゆっくり料理に向き合うことができます。
すると、大根の煮物ひとつ作るにも、包丁を持つ手が丁寧になる……。

掃除もゆっくりすることで、「こんなところに埃が!」と気づくかもしれません。

私は絶えず急いでいて、ざっくりと体裁が整えれば「よし!」と思う性格なので、
「ゆっくり」って大事なんだなあと、改めて自分に言い聞かせるこのごろ。

あれもこれもと「量」をこなすより、
歩みを緩めて、仕事が暮らしの奥行きを深くできればいいなあと思います。

 

 

みなさま、いい1日を

 

 

 


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