
岡山駅から車で30分ほど。
倉敷市の中央部から少し外れた静かな場所にある
「サニーパントリー」という名のカフェを訪ねました。
ここであっているのかなあ?と不安になりながら道を進んでいくと、
なんだか懐かしげな小さな広場が見えてきます。
その昔、地元の公園だったそう。
素敵な木枠のガラス戸が目に入り、
きっとここに違いない!と「こんにちは〜!」と声をかけると
加藤泰さん、純代さんご夫妻が迎えてくれました。
ここで、夫婦ふたりでカカオ豆を焼くところから始めて
チョコレートになるまで、すべての工程を手がける「ビーン トゥ バー」という製法で
チョコレートを作っているそうです。
さらには、卵、乳製品、小麦粉、白砂糖などを使わずなるべく有機の材料を使って
クッキーやケーキなどの焼き菓子も作っているのだとか。
これが「サンカカオ」というブランドで、
そのお店が「サニーパントリー」という名前というわけです。
どこかにひっそりと隠れている「私はここにいます。誰か見つけて!」
という思いを、誰かにお届けするお手伝いができれば……と始めたコンテンツ、
「私を見つけてプロジェクト」。
応募してくださった加藤さんのメールを受け取ったとき、
「う〜ん、そうか〜」
と唸ってしまいました。
甘いもの好きの私は、グルテンフリーだったり、
乳製品や卵などを使わず、砂糖を控えたお菓子がちょっと苦手。
体にいいのはわかっているんだけど、味がね……。
といつも思っていたから。

そこで、こっそりオンラインショップで、チョコレートも入ったクッキー缶を取り寄せてみました。
すると……。
これがね。びっくりするほど美味しかったのです。
決してリッチなおいしさではないけれど、
素朴で、素材の味がしっかりして、
チョコレートも甘すぎず、大人の味わい。
おお!
これを作っているご夫妻ってどんな人なんだろう?
と俄然興味が湧いてきて、
岡山まで出掛けていったというわけです。

このカフェがオープンしたのは、2020年のこと。
それまでは、実店舗は持たずに、クラフトフェアなどのイベントに出店していたそう。
製菓製パンの学校を出て、地元岡山で就職してパティシエの仕事をしていたという純代さん。
ところが……。
仕事が過酷すぎて退社。
京都へ旅行へ行ったとき、訪ねたのがカカオ豆からチョコレートを作っている
知る人ぞ知るチョコレートショップでした。
「もともと私は、チョコレートがそんなに好きではなかったんですが、
そのお店で食べたら、おいしくてびっくり!
オーナーとお話しもさせていただいて、岡山に帰ったんです。
帰宅後に、ちょうどお店がスタッフを募集していると知って……。
家族に『私、京都に行くかも』と言っておき、
1週間後には、京都に出発していました」と笑います。
一見、穏やかでおとなしそうに見えるのに、その行動力には驚くばかり!

その京都のお店でアルバイトしていたのが泰さんでした。
「僕は、中学生の頃ゲームが大好きで(笑)
あまりにやりすぎて、飽きた頃に、たまたま姉が借りてきたお菓子の本があって、
作ってみたら、全然おいしくなくて(爆笑)
それで火がついて、必要な材料をきちんとそろえて、3、4回作ったら
だんだん「おいしいやん!」ってなって。
その時にお菓子作りの楽しさに目覚めたんだと思います」。
と教えてくれました。
その後「パン屋さんになりたい」と製菓製パンの専門学校へ。
在学中に「お菓子もいいなあ」と思うようになり、
卒業後、あの京都のチョコレートショップでアルバイトをしていたそう。
結婚後、純代さんの地元の岡山にふたりで帰り、
それぞれが別のお菓子関係の仕事をしながら、休みの日にチョコレートを作り販売するようになりました。

お店に入ってまず出してくださったのが、チョコレートドリンクでした。
今まで飲んだものとはまったく違い、
カカオの香りがふわっと鼻から抜けます。

私たちは、子供の頃から食べているものの記憶で「これはこういう味」と
インプットされています。
でも、それが本物の味とは限りません。
今回「サンカカオ」のチョコレートやドリンクをいただいて、
カカオってこんな味なのね。
そこから生まれたチョコレートってこんな味だったんだ!
と新たに「味の記憶」が更新された気がしました。
純代さんは、岡山に戻り、チョコレートを作り始めた頃に娘さんを出産。
1歳になって保育園に行き始めた頃から、
イベントに参加する回数が増えてきました。
ところが……。
コロナですべてのイベントが中心に。
外に出られなくなったことで、「お店をつくろうか?」
と言い出したのは泰さんの方。
実家のおじいさんが持っていた倉庫を改装し住居兼工房兼お店を作りました。
「当時は、お店のバックヤードで生活していたんですよ」と笑います。

今は月に10日ほどカフェをオープン。
え? 10日だけ?と驚きましたが、
そのほかの日々は、ずっと工房でチョコレートやお菓子を作り続けているのだそう。
今回、その製造風景を見せていただきました。
まずはカカオ豆をオーブンに入れて焙煎。
その後薄皮を取り除クト、カカオニブが採れます。
これをペーストにして、砂糖と一緒にペーストするとチョコレートになるそう。
工房では、大きな洗濯槽のような機械がゴロンゴロンと回っていました。
この中にきび砂糖でキャラメルがけしたナッツを入れて、カカオ豆から作った
60%チョコレートでコーティングします。
これは、泰さんが担当。
一方で、純代さんはカカオニブを練り込んだ生地を伸ばしてクッキーづくり。
そんな様子を見ていると、「これは時間がかかるわ!」と納得しました。
ふたりともパティシエとしての確かな腕はあるけれど、
早く、便利に、たくさん作るのではなく、
いかに、自分たちが納得できる材料を使い、それがいちばんおいしくなる作り方を
試行錯誤しながら商品を生み出しています。
「グルテンフリーやビーガンだと美味しくない、と思われがちなので、
それを変えたい、と思っています。
小麦粉を使わず、米粉にすると、どうしても固くなってしまうので、
ナッツやアーモンドを混ぜたり、
ココナッツやカカオバターなど植物性のオイルを使って
バターに近い食感を出したり」と純代さん。
「卵の偉大さは感じますね〜。
あの食感は100%は再現できないです。
でも、僕たちふたりとも食いしん坊なので、
使える材料の中で、最大限のおいしさを諦めない!と思ってやっています」と泰さん。

私がいただいた、あのクッキーやチョコレートの裏側には、
こんなにも丁寧な作業がつながっていたのかと思うと、
1枚、1粒がより愛おしくなります。
では、どうしておふたりは、グルテンフリー、ビーガンにこだわるのか……。
次回は、おふたりのお菓子につながる根っこのお話を伺います。
「サンカカオ」のチョコレートやクッキーのオンランショップはこちら。
インスタグラムはこちら @sun_cacao
カフェ「サニーパントリー」
〒710-0145 岡山県倉敷市福江752−5
カフェでは9月頃まで大人気のかき氷が登場します。
月1回ぐらいのペースで、その季節らしさを感じさせる「きまぐれおやつだより」を販売。
今年から旅するSUNCACAOという企画で県外ポップアップをスタートしました!
ポップアップできる場所やお店を募集中
撮影/中川正子