
岡山県倉敷市で、グルテンフリー&ヴィーガンのチョコレートや焼き菓子を作る「 サンカカオ」を立ち上げた、
加藤泰さんと純代さんにお話を伺っています。
第一話では、お店やそこに並ぶスイーツの紹介をいたしました。
さて……。
お店に入って隅々までよ〜く見渡してみると……。
普通のカフェとは一風変わった風景がそこにありました。
クッキーやチョコレートが瓶に詰めてずらりと並び、
お客様は、そこから欲しいものを欲しい量だけトレーに取ることができます。
それだけではありません。
スイーツの横に並んでいたのは、米粉だったり、塩や砂糖、大豆ミートや
胡麻油、オリーブオイルなどの調味料です。
自宅から容器を持っていき、それに好きなものを好きな量入れてレジへ。
店内には、無料の保存瓶も常備されています。

さっそく私もお買い物をしてみることに。
まずは、なんといってもスイーツから。
クッキー1枚から買うことができるので、
「え〜っと、どれにしようかなあ〜?」と迷う時間も楽しいものです。
さらに、大豆から作り、肉のような触感の大豆ミートも、さまざまな種類がそろっていました。
私は、まるで挽肉のような小粒の大豆ミートを200g購入。
「これで、麻婆豆腐を作ったらおいしいんですよ」
と泰さんが教えてくれました。
この「量り売り」という買い物スタイルこそ、「サニーパントリー」の大きな特徴なのです。

コロナ禍で、出店する予定だったイベントがすべて中止になったちょうど同じ頃、
家にいる時間が長くなる中で、
純代さんは改めて、環境や食について興味を持って、いろんな本を読み始めたそう。
全国各地をまわりながら、地球環境問題などの講演会を開いていらっしゃる方のお話会に参加したことも。
「環境問題に興味を持ち始めて、休みの日に家族でビーチクリーンをしたりしていました。
でも、そのゴミの『終わりのなさ』のようなものに押しつぶされそうになって……。
そもそも、ゴミを出さなかったらいいのに……。
と思ったときに目の浮かんだのが、
昔お豆腐屋さんにボールを持って買いに行った風景でした。
そして、チョコレートを作る私たちにできることって、なんだろう?と考えるようになったんです」。
ちょうどその頃、泰さんが「自分たちのお店をつくってみようか?」と言い出したので、
「量り売りのお店がいい!」と提案したというわけです。

はじめは、自分たちが作っているお菓子の量り売りから始めましたが、
「日常的なものほどパッケージが出るよね」と、
調味料、オイル、味噌、パスタ、コーヒー、紅茶など、少しずつ商品を増やし
今では100種類以上になるのだそう。
気候変動や畜産、添加物などの問題も知り、
さらに、娘さんに卵と乳のアレルギーがあったので、
お菓子を作るときにも、少しずつ卵や乳、小麦粉などを減らしていくことにしたそうです。
「もちろん、卵や小麦粉が悪い、とは考えていないし、
私たちもいただくこともあります。
でも、おいしいものは、他のお店にもたくさんあるので、
私たちが届けられるおいしさを大切にしたい、という気持ちなんです。
『ここのものなら、なんでも食べられる』という安心感があればいいなと思って」と純代さん。
ゴミを極力少なくする。無駄なものは持たない、使わない……。
そのおふたりの思いは、ご自宅を訪ねるとよくわかりました。
昨年お店の裏に新居を建てたばかり。
「高知県在住の翻訳家服部雄一郎さんの著書『サスティナブルに家を建てる』を読んで
こんな家だったら建てたいなあと思いました。
それで、備前で無農薬で野菜を作っている農家さんで、大工仕事もされている方にお願いしたんです。
丸2年かかりましたけど」
1階ひと部屋、2階ひと部屋というシンプルな作りで、キッチンはなし。
食事はカフェですませます。
その潔いほどのシンプルさを見て、
そっか、これだけのものの量で、人って幸せに暮らせるんだな、
と、自分が「これはなくちゃ」と抱えすぎていることを思い知らされました。


夫婦ふたりで、お菓子を作って販売し、それで生計を立てていくのは大変なことです。
「よりみんなに受け入れられるように」
と思えば、「みんなが好きな味に」「みんなが買いやすい方法に」と
世間に合わせたビジネスのやり方にしがちなのに、
加藤さんご夫妻の選んだ方法は真逆でした。
自分たちがやりたいことを。
自分たちが信じる方向で。
その強さはいったいどこから生まれるのでしょう?
すると純代さんがこんなふうに語ってくれました。
実は4人姉妹で、純代さんは3つ子なのだとか。
小さな頃からお母様がお菓子を作ってくれましたが、
看護師として働き忙しかったこともあり、姉妹みんなで作ることに。
「ある時から、みんなが飽きてしまって、私ひとりで作ることになりました。
そうすると、『美味しい』って喜んでくれて。
それが、私のお菓子作りの原点ですね」。
さらに、こう続きます。
「やりたいことをとりあえずやってみる。
そのベースは高校時代です。
高校進学のときに、パティシエになりたい、という夢があったのに、
両親に説得されて、普通科の進学校に行くことになりました。
周りはみんな大学進学を目指していて、
私はそれについていけなくて、心が折れてしまったんです。
結局高校を辞めて、高卒認定を取って製菓製パンの専門学校に行きました。
そのときに、『これからの人生は、絶対に自分がやりたいことをやるぞ』って
思ったんですよね。
そんな経験があるからこそ、それ以降は『どうしよう?』と悩むことなく、
心のままに動けたのだと思います」

倉敷の街のはずれにある、小さなお菓子屋さん。
それは、ほんの小さな点にすぎないかもしれないけれど、
そこから発信されるチョコレートも、量り売りという販売方法も、環境への思いも、
驚くほど確かなものでした。
「みんなに認められるライターになりたい」
「出した本がいっぱい売れて欲しい」
そうやって、常に誰かの目を気にしてきた私は、いつも不安で落ち着きませんでした。
「認められなかったらどうしよう?」
「売れなかったらどうしよう?」
そうやって、ふらふらし、あっちへ行ったりこっちへ来たり。
そんな中で、加藤さんご夫妻は、
小さな小さな点を、自分の足元に打つ確かさを教えてくれた気がします。
自分が信じることをやる。
それはすごくシンプルなことだけれど、
どこかの誰かの力に左右されることなく、
自分自身が「これ」と決めることができる強さに支えられています。
そして、自分が信じることを淡々と続けていれば、
おいしいチョコレートはクチコミで広がるし、
量り売りを知って、袋を抱えて買いに来てくれるお客様も増えていきます。
自分を信じて、自分が好きなことをコツコツ続ける。
その力を改めて信じたくなりました。

「サンカカオ」のチョコレートやクッキーのオンランショップはこちら。
インスタグラムはこちら @sun_cacao
カフェ「サニーパントリー」
〒710-0145 岡山県倉敷市福江752−5
カフェでは9月頃まで大人気のかき氷が登場します。
月1回ぐらいのペースで、その季節らしさを感じさせる「きまぐれおやつだより」を販売。
今年から旅するSUNCACAOという企画で県外ポップアップをスタートしました!
ポップアップできる場所やお店を募集中
撮影/中川正子