ライターズ・マルシェ

「一人で頑張らなくていい。人に助けを求める“受援力”という言葉に救われたあの日」吉田穂波さん Vol.2

前回は「人に頼ることが苦手だった」という吉田さんが、
1人目のお子さんの入院をきっかけに
周りに助けを求められるようになったお話でした。

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吉田さんのこれまでの経験を振り返ってみると、
“人に頼ってよかった”と思う瞬間が
たくさんあることに気づいたそうです。

「1人目の子どもはドイツで生まれ、
周りに家族がいない環境での妊娠・出産でした。
自分が産婦人科医だというプライドが邪魔をして、
小さな気がかりがあっても、
最初は周りに気軽に質問できませんでした。

でも、海外のお産は初めてなので、
わからないことだらけ。

助産師さんに聞いたら、
妊婦生活やマイナートラブル、
現地の食事で何に気をつけたらいいか、
色々教えてくれて助かりました。

この時、聞いてよかった、
頼ったら相手との距離が縮まった、と感じたんです」。

「2人目を産んだ時は、
義父母が手伝いにきてくれました。

出産で入院した5日間、
上の子どもの送迎をシッターさんにお願いすることにしました。」

一番辛かったのは、3人目のお子さんが生まれてすぐ、
アメリカのハーバード公衆衛生大学院に留学したころ。
ストレスと疲れで母乳が出なくなって辛い思いをしたそう。

「授業は全て英語でしたし、ここでもわからないことばかり。

そんな中でも、クラスメイトが
“レポートは何文字だっけ?”
“今回のテストの範囲は?”などと、
よく話しかけてくれて、ホッとしました。

それからは宿題のことなどを質問しあったり、
勉強会をしたりする仲間ができました。

日本では、相手に申し訳ないと思って、
ちょっと質問したり、相談したりすることがあまりなかったんです。

でも、自分が困った時は助けを求めていいんだ、と思いました」。

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そして、極め付けが、2011年に起きた東日本大震災の時。
吉田さんも、産婦人科医として妊婦さんや赤ちゃんの支援をするために、
被災地に何度も赴いてボランティア活動をしたそうです。

「被災地に行くまでは
“病院では産婦人科や小児科の支援は足りている”と言われていたのに、

実際に被災地に行ってみると、
避難所で“助けて”と言えないで困っている女性が沢山いました。

妊娠中だということを打ち明けられずにいた女性、
高齢の義父を連れて“こんな時に子どもが生まれたらどうしたらいいか”と
不安を抱えていた妊婦さんなど、

実際には助けを必要としている人が沢山いました。

それにも関わらず、女性たちは我慢して SOSを出すことができなかったのです」。

「ずっと、育児は夫婦で何とかするものだと思っていました。

でも、東日本大震災で被災地支援をした際、
辛い境遇にいる妊婦さんたちが、
周りからの支援を受けられないことをもどかしく思いました。

妊婦さんたちも赤ちゃんたちも大切な存在なのだから、
もっと助けられていい、と感じていた時に
“受援力”という言葉を知り、

自分も夫も、もう一人で頑張らなくてもいいんだ、
助けてもらうのも能力の一つなんだ、
と心底ホッとしたのを覚えています」

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「受援力」を高めることの必要性を痛感した吉田さんは、
今、国各地の自治体や子育て支援組織で
「受援力」について講演をされています。

「私もSOSを出すのが苦手でしたし、
今思えば、自分で自分の首を絞めていたんですね。

きっと、私のように、問題に直面しても
“助けて”と言えない女性たちが沢山いると思います。

人に頼ることに対してハードルの高い、
今の日本に生きる人こそが、
受援力を高めて欲しいと思うんです」と語ります。

実は、人に頼るのにもスキルがいるとのだとか。
相手を敬い、具体的に感謝の言葉を口に出すことが大事なのだそうです。

「シッターさんに定期的にお願いするようになってからは、
できるだけシッターさんに感謝の言葉を伝えるようにしていました。

例えば、“手伝ってもらっているおかげで出勤でき、
今日は30人の患者さんを診察できました”など、
助かったと思うことを具体的に伝えるんです。
時には手土産を渡したりして。

相手への敬意と感謝の言葉を口に出すようにしたら、
味方が集まってくれるようになりました」。

吉田さんのお話を伺ってわかったのは、
人は、頼られるのが嬉しいということ。

「自分で何とかしなければいけない」
と思い込んでいるのは自分だけで、

本当は周りの人にも、
困っている人を助けてあげたい気持ちがあるのかもしれません。

頼ることで、
周りも喜んで手を差し出してくれて、自分も楽になる。

自分を閉じて我慢しているだけでは、
周りは何も察してくれません。

頼ることはコミュニケーションの一つ。
頼ることで人と人の距離も縮まり、
周りが応援してくれる好循環が生まれるのかもしれません。

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都会で暮らしていると、
周りに助けてくれる家族もいなくて、
お父さんは忙しくて頼りにならず、
孤軍奮闘しているお母さんが多いことに気づかされます。

自分一人では抱えきれなくなって、
エネルギーを消耗して体調を崩してしまう前に、
誰か頼れる人はいないのか、探してみる。

そして、頼れる人がいたら、勇気を出してお願いしてみる。

私たち子育て中の母親は、
「人に迷惑をかけてはいけない」と育てられ、
“助けてと言えない世代”なのだそうです。

“自分一人で何とかしなければならない”
という自分の思い込みの枠を外していくと、
心が軽くなり、体も楽になるはず。

そして、頼ったり頼られたり、
沢山の信頼関係を築いていくことが人生の宝になるかもしれません。

次回は、吉田さんの時間術とハーバード留学時代のお話について伺いたいと思います。

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