いちだ&さかねの往復書簡 NO6

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坂根

今まで、私はどこか取材先の方の思っていることで、
一番核になりそうだな…という言葉を
忠実に表現することが、ライターの使命みたいに思っていたんです。
取材先の方の「情熱」をそのままの言葉で表現すれば、読者に伝わるのではないかと……。

それは、取材先でダイレクトに話を聞いて、すこぶる感動して、
「この言葉を使わせていただこう!」「本文の締めにきっとふさわしい!」
もしくは、使わないと失礼なのではないか…というくらいに感じていました。

ただ、常に一田さんはその先を考えていらっしゃるのですね。
現に私がいつも、一田さんの文章に心惹かれてしまうのは
そういう「絶対的な正解でない文章」からの一文なのかもしれません。

さて、次の相談です。

インテリア取材では、ライターである私が、素敵なお宅を見つける所から仕事がはじまるのですが、
最近は友達の友達…だったり、まだ一度もお会いしたことがない方の取材をすることが増えてきました。
とても、ありがたいことなのですが、やはり初対面の2時間でインテリアのみならず、
その人の人生を聞く…というのは正直とても難しいなと感じています。

前回の取材では、仕事の話を伺っていたら、知らぬ間に1時間ほど経過していて
インテリアの話をすっかり聞いてないことにあせりを感じてしまったほどです。

話が少しそれるのですが、知人と話をしていた時に興味深い話がありました。
ある凄腕カメラマンは、ウエディングアルバム用の写真を撮影するときに、
ページ校正が瞬時に頭の中に出来上がっているので、その後の修正が全くなく、
次の日にはデータが出来上がっている。新人カメラマンは撮影後に写真を切り取ったり、
修正が多いので納期がどうしても遅くなってしまう…という内容でした。

ライターの取材もカメラマンの仕事と同じようなことが言えるのかも知れないな…とその時思いまして。

私は、カメラマンさんに写真を撮影していただいている間、
どのページにどの写真をあてこんでいくかも取材中には想像すらできなくて、
取材することに、いっぱいいっぱいになっているのが現状です。

経験値を上げるしかない…とは重々承知なのですが、そんな私でも、
これから仕事をしていくなかですぐに取り入れられそうな取材する上でのポイント
(取材の流れや時間配分など)があれば教えてください。

 

一田

取材をするときに、ページ構成を頭に描く、というのは確かにとても大切かもしれません。
ライターの仕事は、文章を書く、ということだけでなく、
ページのどこにどんな写真を使って、どんな構成にするか、を決めることでもあるので、
その組み立ては、取材をしながら考えなくてはいけません。

常にインプットをしたことを、読者のみなさんにどう伝えるか=どうアウトプットするかを
同時進行でやっていかないといけないから大変ですよね。

でも、それはどちらかというとビジュアル的なことです。

文章を書く上での取材の流れは、初心者のうちは、
とにかく機関銃のように聞きまくるってことじゃないかと思います。(笑)

私は、たぶん取材のとき、ずいぶん無駄なことを聞いていると思います。
インテリアの取材なのに、その人がどんな仕事をして、どんなことを大切にし、どんな生き方をしてきたのか、ぜ〜んぶ知りたくなってしまうから……。
だから、坂根さんがインテリアの取材なのに、仕事の話ばかりを聞いていた…っていうこと、
とてもよくわかります。

坂根さんがあげてくれがブライダルカメラマンさんの件、
ページ構成をイメージして、必要なカットだけを撮ればいい、ということも大切だとは思いますが、
ライターの場合は、書くことだけを聞けばいい、というのはちょっと違うかなと思います。
無駄なこともたくさん聞いて、その人全体を理解してからでないと、
本当のことは書けないと思うから……。

インテリアのことについて書くにしても、その人がどう生きたいか、
どう暮らしたいか、があってこそ、この家を選び、こういう家具が好きで……とお話が組み立てられますよね。

つまり、文章は「書かない」部分によって支えられている、と思うのです。

でも、そうなると、時間が足らない……てなりますよね。
大事なのは「全部聞き尽くす」という意識を持つことだと思います。
仕事のことも、この家を選んだ理由も、どんなご飯を食べているかも、
これからどう生きたいかということも、せ〜んぶ聞くつもりで……。

そうすると、ひとところにとどまっている暇はありません。
だから「機関銃のように」聴かないと間に合わないのです。笑

坂根さんはきっと、取材という限られた時間内に聞き尽くすことができない……
と思っていますよね?
でも、もっと時間があったら、すべてを聞けるでしょうか?

1時間質問し続ける、ということは大層な集中力と体力が必要です。
私も、最初の1時間ぐらいは機関銃のように聞き、
そのあとちょっと緩めて、雑談をしながら、「今」の暮らしのことを聞くぐらいで精一杯です。
それが、3時間、4時間となっても、きっと聞ける内容はあまり変わらないと思うのです。

コツとしては、「雑談風」にならないこと。つまり、流されないこと。
わ〜っと盛り上がって話すのは、楽しいけれど、
冷静さを持ち、筋をきちんと追って、聞きたいことをすべて聞く。
まだあれが聞けていない、これも聞きたい……。
そう思えば、次々質問が出てくると思います。
「私はこれだけは絶対聞く」というプロ意識が、ここで必要になるのかな、と思います。

 


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