結婚は、人生の「上がり」じゃないよ

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この連載「もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っている、と思っていたことなのに、
この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、
50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

 

ノリコさん。今ノリコさんが一番望んでいることを私は知ってるよ。結婚したいんだよね〜。そこそこの大学を出て、そこそこの会社に就職して、あとは結婚すれば「上がり!」。そう思っているんでしょう? でもね、残念ながら結婚は「上がり」なんかじゃないよ。
私の場合は、結婚して3年で離婚してしまったからエラそうなことは言えないけれど、どうして失敗したかと、今考えてみたら、それは自分の人生を生きる前に、結婚に逃げ込んでしまったからだと思う。それが結婚してみたらわかっちゃった。だから私は、もう一度一人で自分の人生を最初から歩き直さなくちゃと思ったんだよね。
結婚は「上がり」じゃなくて「始まり」なんだと思う。親の庇護から独立し、自分の家庭を持ち、子供を産み、仕事をする人は仕事をして、新たな人生を歩み始める……。そもそも、人生に「上がり」なんてないんだよね。そのことが私はようやく最近わかりました。「あそこまで行こう」と一生懸命登って、そこに素晴らしい風景は広がっているけれど、遠くにもう1本の道が見えてくる……。そんな感じ。

若い頃は、早く「上がって」落ち着きたい、ラクをしたいと思っていたけれど、私は今50歳を過ぎて、人生の後半が見えるようになったら、途端に「上がっちゃった」ら面白くないんだ、って思い始めました。先が見えなくて、どこを歩けばいいかわからなくて、不安だからこそ、歩き出すために、自分の力を総動員する。そのジタバタする過程こそ、最高の人生の面白さなんだよね。もうしばらく、私はジタバタしたいと思っています。


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