希林さんへ

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樹木希林さんが亡くなって、2週間が経とうとしています。
「暮らしのおへそvol23」で取材をさせていただいたのだから、このサイトでも何か一言書こう、と
ずっと思っていたのですが、なんだか心がざわざわして書けませんでした。

この取材をさせていただいたのは、2016年の冬でした。
それまで、ずっと私は希林さんに「おへそ」に出ていただきたくて、
2度ほど取材依頼をしていました。

マネージャーがいなくて、ご自身でスケジュール管理をしていた希林さん。
ご自宅に見本誌と企画書とお手紙を書いて送りました。
すると、数日後携帯に知らない番号から電話が……。
出てみると「樹木希林ですけど」。
びっくりしたのなんの!!

「あわわわ」と口ごもる私に、
今はスケジュールが立て込んで、取材は難しいと、優しい口調で伝えてくださいました。
そして
「でもね、とってもいい本だと思うから頑張ってね」と。

取材を断られたけれど、もう感動して嬉しくて……。
ずっと私の心の宝物として大事にしてきました。

2度目も直接お電話をいただき撃沈……。
そして、ようやく叶ったのがこの取材です。

取材場所は、希林さんのご自宅の一室。
ドキドキしながら出かけました。
緊張しすぎて、あれもこれも聴きたかったのに、少ししか質問できませんでした。
でも、拙い質問にも希林さんはちゃんと答えてくださいました。

でも、今改めて思います。
もっと聞きたいことを直球で聞けばよかった……。

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芸能人の方の取材はワンチャンスです。
時間も1時間弱と限られていて、その間に文章をまとめられる程度に
今までの人生について、今の「おへそ』について、暮らしについて、仕事について
あれこれまんべんなく聞かなくてはいけません。

私は、過去の掲載記事を読み、下準備をした知識に沿って質問をしていきました。
ある意味「予定調和的」なインタビューだったわけです。

でも、あの時もっと、心から聞きたいことを聞けばよかった。
「生きることの中で一番大事なことはなんですか?」
「希林さんが目指しているのはどこですか?」
「無欲だとおっしゃるけれど、そんな希林さんにとって人生の実りってなんですか?」

 

あまりにも壮大すぎる質問は、答えにくいだろうと、言葉を飲み込んだわたし。
ああ、「そんなこと!」って言われても、中途半端に終わってしまっても、
本当の本当に聞きたいことを聞けばよかった。

そもそも、私の本当に聞きたかったことってなんだったんだろう?

今、改めての「おへそ」のページを見渡してみて、
そんな自分の未熟さを思い知ります。

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でも、そんな中でもとても印象に残った希林さんの言葉があります。
それが、「演じなくても、そこにいるだけでいい」という一言。

「世の中には、ばあさんがいっぱいいるじゃない?
でも、ばあさんは、自分がばあさんだとは思っていない。
女優はね、”ばあさん”を演ろうとするのよ。
でも、私は私のまんま出ている。
(中略)
演じるっていうのはね、頑張るってことじゃないの。
伴淳三郎さんなんて、そこにいるだけで味わいがあったでしょう?
私も”いるだけ”になれればいいわねえ」

 

ナレーションはスタジオに行ってから初めて台本を見て読み、
仕事は依頼がきた順番に受ける。

そんな希林さんの女優としての姿は、人としての姿とイコールだったのだと思います。
つまり、いかによく演じようとしても、生きる姿以上のことは演じられないということ。

希林さん、私も私以上になることを望まず、あなたのように、
今日を一生懸命生きようと思います。

もう一度お会いしたかったです。

心よりご冥福をお祈り致します。

 

 

「おへそ」の素晴らしい写真は、枦木功さん撮影です。


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