昨日は立春でしたね。
我が家では、庭のクリスマスローズがやっと咲き始めました。
さて。
ここ数日、ずっと原稿を書いているのですが、
気分転換をするために使っているのが「香り」です。
書斎には、アロマディフーザーで
オレンジ、レモングラス、ローズマリーなどさわやか系の香りを。
そして、居間や玄関はセージを焚いて。
最近ちょっと挑戦しているのが、
2つのお香の掛け合わせです。
これは、「暮らしのおへそ vol29」で
ご夫婦で「東京香堂」というお香のブランドを立ち上げられた
ペレス千夏子さんに教えていただいた方法です。
「空間で調香する」という方法で、
違う香りのお香を組み合わせて焚くと、空間で香りがハーモニーを奏でて
新たな香りを生み出し、まったく違う楽しみ方ができるのだとか。
2つのお香を置くの距離を調整し、強弱をつけると香りが変わってくるそうです。
私は、お香というと1つに統一しなくちゃいけないのかと思っていたので、
これは大発見でした。
(これは、私が旅にも必ず持っていくお香たて。蓋をひっくり返すとお香が立てられます。三谷龍二さん作)
千夏子さんのご主人、フランス人のジョフレさんは、
香りの都と呼ばれるフランス、グラース出身の方。
千夏子さんは、いつもジョフレさんに「急がないで」「ゆっくりね」
と言われるそうです。
「彼の住んでいた街は豊かな自然に囲まれて、
そこに暮らす人々は本当に質素で、欲張らず、
日常の小さなことに感謝を感じているんです」
と千夏子さんが教えてくれました。
今回の「おへそ」の取材では、いろんな方が「急がないで」「欲張らないで」
というメッセージをくださいました。
先日も書いたように、
小川糸さんは、「ベルリンに住んでいちばん変わったのは、消費が暮らしの中心ではなくなったこと」
と語ってくださいましたし、
「スクランプシャス」の中山ヤンさん、ノリミさん夫妻は
「雨風しのげて、なんとか食べていければいい。
そんな能天気なところが似ているから、夫婦でやってこれたんです」とおっしゃっていました。
私は、フリーライターになってから
「稼がなくちゃ!」とずっとあせってきたよなあと思います。
リコンをして、いきなりひとりで生きていかなくてはいけなくなったので、
家賃6万円のワンルームマンションに住み、
すぐに家具が買えなかったから、実家からもらってきたこたつをデスクにし、
ダンボールを並べて本棚代わりにし、
もらったピンクのカーテンは、はきだし窓の2/3の長さしかなかった(笑)。
まあ、それはそれなりにおままごとみたいで楽しかったんですが、
働いて、仕事が少し増えたときに、吉祥寺の駅前の家具屋さんで、
デスクとチェストとロッカーみたいなものを買って部屋に並べたときは、
それはそれは嬉しかったものです。
仕事をし、お金を稼ぎ、好きなものを買う。
そんな当たり前のことを、すべて「自分の力」でできた、ということが
すご〜く嬉しかったのだと思います。
それから、ずっと一生懸命仕事をしてきました。
いいものは、自分で買って使ってみなくちゃわからない……と
経験をお金で買う、という意識もあったと思います。
でも、ふと気づいたら、
「お金がないと不安な人」になっていた……。
もちろん生活するには、お金が必要で、それがないと不安になるのは当たり前なのですが、
「そこ」が中心でいいのか……と。
これから先、人生の終盤にあたって、
私は、消費の一歩外に出て幸せになれるだろうか……。
今はまだすぐにその答えはわかりません。
でも、
外側に、もうひとつの幸せを見つけるつもりで、これから
視線を大きく広げながら歩いてみたいなと思うこのごろです。
今日のおへその言葉
「お香の煙は
見えない世界とつながるため。
手を合わせれば謙虚になれる」
ペレス千夏子さん、ジョフレさん
撮影/有賀傑