週末は「おへそ」の取材で雨の中関西へ。
夕方東京での取材を終えて、新幹線に乗り込むと「今日の晩御飯何かな〜」と
実家の夕飯が楽しみになります。
窓から夕暮れの街の風景を眺めながら、待っていてくれる人がいるというのは
幸せだなあとしみじみ思いました。
できれば、少しでも長く、この実家へ向かうひたひたとした幸せが続けばいいなあと思います。。
さて。
忙しい時期になると、あちこち出かけられないし、
一番のお楽しみは読書になります。
私がいい本だな〜と感じるのは、ストーリーが面白いというよりは、行間に風景が浮かんでくる本。
そんな本は、口の中で飴玉を転がすように、
ゆっくりゆっくり味わいながら読みたくなります。
今読んでいるのはこれ。
「罪の声」塩田武士著(講談社文庫)
「グリコ・森永事件」をモデルにしたフィクションで、
「これがあの未解決事件の真実だったのかも……」と思わず思ってしまうほどの
圧倒的なリアリティです。
来年には、小栗旬さん、星野源さんのダブル主演で映画公開も決まっているのだとか。
ミステリーは伏線と伏線が複雑に絡まるストーリーが面白いのですが、
それだけでは、ただただ前へ前へと読み飛ばすだけになってしまいます。
飴玉を転がすためには、シーンごとに風景が立ち上がり
ただ謎解きだけでなく、登場人物の言葉に、そこに生きる人間を感じる本でなくては……。
この本はまさにそんな1冊でした。
京都でテーラーを営む曽根俊哉は、
自宅で見つけた古いカセットテープに、幼い頃の自分の声が入っているのを見つけます。
それが、あの脅迫事件で犯人からかかってきた電話で流れた男児の声と
全く同じものだった……。
そのテーラーのインテリアの描写から
スーツの仕立て方、生地の質感までが丁寧に描かれ
頭の中には、テーラーの店内が浮かんでくるよう。
さらに、31年前のこの事件をもう一度取り上げようという新聞社の社員阿久津英二。
ハラハラする取材をもとに、真実を一つ一つ積み上げていく……。
その取材の切り込み方も、シーンが浮かんできます。
全く別の人生を歩む2人の主人公が少しずつ近づきながら、物語が展開されていきます。
毎日、仕事に向かう電車の中で、
お風呂の中で、寝る前にと、少しずつ大切に読み進めています。
あと残り10pほど。ああ、飴玉、なくなるのがもったいない……。笑
もう1冊はこれ。
「セカンドID」 小橋賢児著 きずな出版刊。
俳優だった小橋賢児さんが、突然休業し、何をしたらいいかを見失い、鬱になり、
その後、日本を代表するマルチクリエイターになるまでのお話。
たまたまJ-WAVEに出ていらして、お話が面白かったので読んでみました。
サラッと読める1冊です。
面白かったのは「中道をいく」という言葉。
僕は仏教の教えの一つである「中道」という考えを大切にしている。
この言葉はシンプルに解釈すると、「両極を知るからこそ
真ん中の本質を知れる」という意味だ。
自分の中の常識と、それとは対極にある世界を知ることで、
本当の自分の中心が見えてくるという心理である。(本文より)
様々な想定外の経験から、それまで知らなかった「もうひとりの自分」に出会う。
そんなもう一つのアイデンティティを小橋さんは「セカンドID」と名付けています。
つい、目標を持たなきゃ、
そっちに向かって頑張らなきゃ、と熱くなりがちなワタクシ……。
もう少し視野を広げて、
対極を見つけてみようか……と思わされました。
そして、何かに突き抜けていくよりも
「中道」にいることで得られる平穏を味わってみたいなと思ったのでした。
雨の音を聞きながら、ゆっくり読書の時間を取るのもいいものですね。
皆さんは、どんな本と出会われるのでしょうか?
読書時間に欠かせないのがお茶。
時々茶渋のお掃除を。
「スコッチブライト」のスポンジは、すぐに茶渋が落ちるので、
漂白いらずです。
今日もいい一日を!