石鹸ひとつで洗うことを試してほしい。 洗うことのシンプル化を! 「ゆくりね」樽谷直美さん vol.1

名古屋駅から電車で30分ほど。
JRの熱田駅から車で5分ほどの場所に「ゆくりね」という名前の石鹸屋さんがあります。
下町の趣が残る街を歩いていると、一際おしゃれな外観が目に入ってきました。
「こんにちは〜」と元気な笑顔で迎えてくれたのが、店主の樽谷直美さんです。
なんと、以前はテレビ局でディレクターを勤め、バリバリと仕事をしていたという方。
どうして、石鹸屋さんを?
そんなお話を伺ってきました。

どこかにひっそりと隠れている「私はここにいます。誰か見つけて!」
という思いを、誰かにお届けするお手伝いができれば……と始めたコンテンツがこの
「私を見つけてプロジェクト」。です。

樽谷さんにお申し込みをいただいて、
「どんな石鹸だろう?」と取材の前に自分で購入してみました。
届いた宅急便のボックスを開けただけで、
ふわりといい香り!
「うわ〜、なんていい匂いなんだろう!」
その頃ちょうど、原稿に追われ、忙しい日々を送っていたので
その香りだけで、心がひたひたと満たされて元気が出てくるようでした。
「むむ。この石鹸、普通の石鹸とは何かが違うかも!」
そう感じたのでした。

でも……。
石鹸っていいもの、とはわかっていても、
バタバタしている日常では、ついボディソープの方が使いやすかったり、
使い慣れたシャンプーを、わざわざ手放すことができなかったり……。
今までも、石鹸を使いながら、
また元の状態と戻ってしまっていました。
なかなか石鹸生活は定着しないんだよなあ〜と思っていたのが正直なところ。

樽谷さんご自身もこんなふうに語ってくださいました。

「今までいろんな石鹸を製造し、お客様の悩みや生活に沿った石鹸を選んで
おすすめしてきましたが、
正直私の中でも、固形石鹸ユーザーは少数派だという思い込みがありました。
必要な人だけに届けばいいって。
でも、石鹸を使ってくださった方々が
『こんなに気持ちがいい洗い心地ならもっと早く教えてくればよかったのに』
言ってくださることが増えて……。
石鹸生活を知らない多くの人に『ゆくりね』の石鹸を知ってもらいたいと思うようになったんです
それが、今回このプロジェクトに申し込んだきっかけかな」。

さらに、こう教えてくれました。

「まずは、石鹸ひとつで洗うことを試してほしいんです。
それは、洗うことのシンプル化です。
ボディーソープやシャンプーやリンスなどのボトルが林立しないから、
バスルームがすっきり整い、環境負担も少ない!
ラクチンで気持ちがよくて、肌が変わる!
いいことだらけの石鹸のある暮らしをぜひ体験してみてください」

この中の一言「洗うことのシンプル化」
という言葉に、私の中のアンテナがピピピと反応しました。
どうやって、シンプル化するのだろう?
と、石鹸への興味がむくむくと沸いてきたのでした。

「実は、石鹸屋さんになりたい、と思って石鹸屋さんになったわけではないんですよ」
と樽谷さん。

ドラマを作りたくてテレビ局へ。
でも、担当したのは朝の情報番組でした。
それなりにやりがいがあり、楽しい日々ではあったのですが……。

「ハードワークで……。
夜も遅くなるし、娘をはじめ家族に対する申し訳なさと、
これからもずっと続けていけるか?という葛藤がずっとありました。
体調を壊したこともあり、
『やめてからどうする?」ということも決めずに退職したんです」

とりあえず、在職中にハードワークで疲れていたとき、助けられたという
アロマテラピーやリフレクソロジーの勉強を始めたのだと言います。
そして、自宅でアロマの教室やリフレクソロジーサロンを少しずつ始めました。

「『ゆくりね』という名前は、いつも突っ走ってセカセカしている私に、
友達が『ゆっくりしていってね』の意味を込めて屋号としてプレゼントしてくれたんです」。

そして、アロマテレピーの延長線上で石鹸を作ったのがはじまり。
「子供が肌荒れをしたり、ご自身が肌のトラブルを抱えていたり。
そんな人が、石鹸を使ってとても喜んでくれたんです」。

実は、石鹸を製造、販売するには薬事法で厳しい規定があります。
そこで、まずは石鹸作りの教室を始めました。

「でも、前職時代の保育園のお友達はみんなフルタイムで働く忙しいお母さんたちだったので
『石鹸の作り方を教えてもらうより、あなたが作ってよ!』と言われて……」と笑います。

こうして、樽谷さんは、少しずつ石鹸づくりへと引き寄せられていったのでした。

この先、「石鹸」を仕事としてやっていくにはどうしたらいいだろう?
と考え始めたものの、
「その時は、夫の扶養内を超える勇気がなかったんです」と樽谷さん。

そんな時、「きっと気が合うと思うよ」と紹介してくれたのが
会計士で税理士の伊藤歩さんです。

「会ってみたら、『天然生活、好きだよね?』『クウネルっていいよね』
と好きな雑誌や、今まで見てきたものが同じだったんです。
そして、その場でパパパッと石鹸の原価を計算し、
石鹸を何個売れば経営が成り立っていくか、
そして、お店を出すためには、今後何をしなければいけないかを
全部質問しながら出してくれました。
彼女の事務所を出るときは、私はもう別人になっていたんですよ。
あの時の感覚は、今でも忘れられないです」

会計士&税理士として独立する前は、会社員だったという伊藤さん。

「もともとカフェとか雑貨屋さんをやりたかったんです。
その中で、大好きなカフェが閉店していくのが悲しくて……。
経営者の人がお金の問題でつまづいている……。
お金のことはよくわからない、とみなさんおっしゃる。
だったら私がそこで何か役に立てたらいいなと考えて」と教えてくれました。

左が会計士で税理士の伊藤歩さん

何かを始めようとするとき、
お金に関する問題が足を止めるもの。
でも、樽谷さんはこう語ります。

「私は今でもですが、数字にとことん弱いんです(笑)
でも、ビジネスは、すごく難しいものではなく、
私が今持っているものでも、やり方によって形になるんだ、とわかりました。
ただ、それを形にする方法がわからなかっただけ。
わかならいことを自分で調べようともしていなかったんですよね」

人は、「わからない」ことに出会ったとき、
あまりに「わからなすぎる」と、
「どうやったらわかるようになるだろう?」と考えることさえ
できなくなるよう。
そんな時、樽谷さんのように「プロに頼る」というのはとても有効な方法なのかもしれません。

「歩さんに『扶養内に収めることばかりを考えていると、ずっとそのままだよ』
とも言われました。
『この石鹸は原価率の悪いものではないから、
そこを超えられるものを持っていると思うよ』って言ってくれたんです。
自分の趣味の延長線上にあったものが、ビジネスになるのかもしれない……。
とだんだんわかってきました。
その過程がすごく面白かったなあ〜」

石鹸の製造許可を得るためには、たくさんの超えなくてはいけないハードルがありました。
薬剤師を雇用しなくてはいけないこともそのひとつ。
さらに石鹸を販売する場所と、作る場所は明確に分け、
作業スペースに対しても、さまざまな決まりがあります。
そのひとつひとつをクリアし、
やっと2022年にオープンしたのがこのお店だったというわけです。

ちなみに、樽谷さんは、どんな石鹸生活を送っていらっしゃるのでしょうか?

「顔も、体も、髪の毛も、器や鍋も、
ぜ〜んぶ石鹸で洗っています。
だから、シャンプーやボディソープ、キッチン用洗剤など
あれこれ買いに行くことも、使い分けることもありません。
バスルームも洗面所もキッチンもすっきりです」
と教えてくれました。

え〜!
なんだか潔くて、気持ちよさそう。
バスルームに石鹸1個だけ。
そんな状態になったら、気持ちがいいだろうなあ〜。

このお話を聞いて、俄然「石鹸生活」への興味が倍増したワタクシ!
よ〜し!
と石鹸生活を始めてみようと決心したのでした。
さて、どうなったやら……。
その結果を次回またご紹介します。

「ゆくりね」の石鹸に興味をお持ちの方はこちらからどうぞ。

「ゆくりね」
名古屋市瑞穂区平郷町2-9-4
Open/火水木金土【11:00-16:00】 火曜は不定休石鹸の購入はこちら
インスタグラム @yukurine

撮影/黒川ひろみ (一田自宅写真を除く)

 

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