美しきワガママンたち

第3回 自然の一部として生きれば、自分に素直になれる

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福岡県糸島で、野草ハーバリストとして活躍する加藤美帆さんにお話を伺っています。

第1話2話では、東京で獣医として働いていた美帆さんが、カリフォルニアで
「自分がやりたいことをやる」という、まさに「わがままな」人生の第一歩を
踏み出したお話を伺いました。

「向こうで暮らしていた頃、友達たちにしょっちゅう
『あなたは何がしたくてここにいるの?』と聞かれていました。

ITのスタートアップ業界に『PITCH』というビジネス用語があります。
これは、短いプレゼンテーションのこと。
投資家が集まるところで、自分がやっている仕事やプロダクトなどについて語るんですよね。
みんなすごく情熱を持って生きていることがヒシヒシと伝わってくるんです。
でも、私は何を語ったらいいかわからなくて」

そんな経験を経て、長年「いい子でいよう」と固く閉ざしていたフタが
パッカ〜ン!と音をたてて開いたのだと言います。
なんと、なんと!

「自分の心を大切にして生きている人たちに出会って、すごく感化されたんです。
私も自分を大事にしよう、と思いました。
それで、帰国後突然、自分の名前に含まれている『帆』を頼りに
海の近くで暮らしてみるのもいいかなと思ったんです。
そんな直感に素直に従ってみようと思って。
そこで、出会ったのが『糸島』でした。
インターネットで『九州、移住』って検索して、出てきたのがここだったんです」

こうして、何をするかも決めないまま、5年前にこの糸島へ引っ越してきたと言いますから、
その行動力に驚きます。

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ちょうどその頃、もう一つの出会いがありました。
それが、八ヶ岳で『ハーバルノート』というハーブとアロマテラピーの専門店を
やっていらっしゃる萩尾エリ子さんの本「香りの扉、草の椅子 ハーブショップの四季と暮らし」でした。

「この本の中に、飼っていた猫が、春がきて夏がきて、そして秋がきて冬がくるように、
静かに老いて死んでいく描写があるんです。
私はそのことにいたく感動したんですよね。
私もみずみずしく、生命感あふれる生物のように悔いがないように生き、
自然の中の一部の存在として、生きて、大いなる循環に戻っていくように死にたい。
そう考えるようになったんです」

こうして、美帆さんはヨガやリトリート(忙しい日常から離れて、自分だけの時間を持つこと)を学び始めます。

「心とか自然とか、メンタルヘルスに関わることがしたいなと思っていました。
ご飯を作ることも好きだったので、それで何かできればいいなあとも……。
でも、やればやるほど違うなあと思って……。
ヨガはわかりやすい入り口だったけれど、
私はもっと自然にどっぷり浸かることがしたかったんだと思います」

 

 

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どうして美帆さんは、そんなにも強く自然に惹かれていったのでしょうか?

「カリフォルニアに行って、『自分の中に判断基準を持つ』ということに出会って、
ずっと外に向いていた視線が、ぐるんと内に向くようになりました。
そこで、コンディションがいい時ってどんなときだろう?
仕事がうまく行くときや、アイデアがわくときってどんな時だろう?
とじっくり観察してみたんです。
そうして、わかったのは、
自分が自然体でリラックスできる時だよな、っていうこと。

私の場合は、海にいるときだったり、夢中になって野いちごを採っているとき……。
それが、一番自分がのびのびとしていられて、自分らしい時でした。
『誰もが自然に触れると、自然体に戻れるんだ』
ということを意識したのはそこからです。
気づきはカリフォルニアで。それが確信に変わったのは糸島にきてからですね」

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よもぎ茶に出逢ったきっかけはその頃飼い始めた犬の散歩だったそうです。

「毎日散歩に行くようになったら、
足元の植物が気になるようになったんです。
自然の様子って、本当に数日でガラリと変わるんですよね。
朝と夕方でも違うということに、すごく感動しました。

そして、よもぎを摘んでお茶にしてみたら、
『海外のハーブティーじゃなくても、足元にこんなにおいしいものがあるんだ!』
とワクワクしてきて……。
もう少し深く知りたいと、自分で飲み、お友達に差し上げて……と試行錯誤。
そうしたら、だんだんと『お金を払うから作ってほしい』と言われるようになったんです」

ところが‥‥。
やっと自分が「できること」を見つけたかもしれない、という予感を持ち始めた頃、
ご主人とうまくいかなくなって離婚することになりました。

仕事も決まらないまま、次の一歩が踏み出せないまま、
美帆さんは、ゼロに戻ってしまったというわけです。

どんなに不安で、どんなに寂しかったかと思います。
それでも、東京へは帰らずずっと糸島にいた美帆さん。

 

次回は、いよいよ1歩を踏み出したお話を伺います。

 

 

撮影/亀山ののこ

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