美しきワガママンたち

女の再起動 vol2 藁谷恭子さん 足を止めた瞬間は、自分の心を磨くとき。

 

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子育てがひと段落した時。
がむしゃらに頑張ってきた仕事の足をふと止めた時、
そろそろ人生の第二ステージへ踏み出したいのに、
どっちを向いて歩いていったらわからない……。
そんな悩みを抱える人の悩みや戸惑いのリアルな姿をお伝えしようと
「女の再起動」というテーマで、特集を始めています。

前回からご紹介しているのが、藁谷恭子さん。
専業主婦で、5歳、12歳の娘さんのお母さんです。
今の生活は幸せだけど、何かが足らない……。
そんな藁谷さんの悩みをお聞きする前に、
ここへ至る道のことを少し伺ってみました。
若いころはピアノの先生になりたかったそうです。
短大も、ヤマハ系列の学校へ。でも……。

「突然やりたくなくなってしまったんです。
実家は福島県だったんですが、東京に出たいなあと思い始めて……。
それで、地元にもどって働いてお金をためて、そこから上京しました。
派遣などで働きながら、ライブを観に行ったりして。
そこでミュージシャンとして活動していた今の夫に出会ったんです」

ある時、ご主人のバンドがうまくいかなくなったことがありました。
「せっかく今までやってきたのに、もったいないと思って、
だったら、わたしが曲を作って一緒にやったらいいんじゃない?と思ったんですよね。
そこで、一念発起して曲を作り始めました。
結婚前の話です。
結局一緒にはやらず、私はギターでの弾き語りのライブを少しやるようになりました」
でも、それはあくまで趣味の延長線上。
一緒に暮らし始めて、2003年に結婚。
藁谷さんは派遣で働き始めました。
派遣の仕事は楽しかったんですか?と聞いてみました。

「全然!(笑)
コールセンターで、プリンターのカスタマーサポートをやっていました。
相手のペースに合わせないといけないし、うまく伝わらないとイライラすることもあって……。
難しい仕事だったと思うのですが、
なんとなく自分なりにこなせていたし、お給料もそこそこよかったので……。
当時は、楽しければいいや、という感じでしたね。
働いたお金で好きなものを買ったり、おいしいものを食べたり、ライブに行ったり」

 

 

ミュージシャンという仕事は、収入が不安定です。
長女の奈央ちゃんが生まれ、2歳になるころに、
ご主人は音楽の道をあきらめ、サラリーマンとして就職しました。

「本当は続けたかったと思うのですが、私が現実的になってしまって……」と藁谷さん。

 

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藁谷さんご自身は、次女のそよちゃんを妊娠中にヘルニアになり、
産休、育休後に派遣の仕事に復帰することができなくなりました。

「同じ派遣先で長く働いていたので、復帰する気満々でした(笑)
でも、それができなくなって、
そこから、なんだかもんもんと考えるようになったんです。
これから私には何ができるんだろう?って。
すごく仕事が好きだったわけでもなかったんですが、
共働きでやっていくのが、我が家の家計の前提でしたし……。
ぽっかり穴が空いたようで、
かといって、何かをゼロから始める気力もなくなってしまって。

たぶん、あの時普通に復帰できていたら、
そんなに深く考えることもなく、淡々と働いていたと思います。
でも、一度空白の時間ができたことで、
今まで考えていた人生設計がガラガラとくずれてしまい、
どうしたらいいかわからなくなりました。
普通に家族4人で暮らすことができて、
そのうち新居でも買って……。
そういう安定した暮らしをずっと求めていたんだと思います」

 

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派遣で働いていた頃、藁谷さんは「仕事にやりがいを求める」という
考え方にはならなかったのだと言います。
仕事は仕事。プライベートはプライベートときちんと割り切って
仕事で得たお金で、家族の時間を楽しめればいい……。

「仕事」にどんな価値をおくかは人ぞれぞれ。
仕事はお金を稼ぐため、と割り切って、
それ以外の時間を思い切り楽しむ。
そんな価値観も全然あり!と私は思います。

でも、藁谷さんは一度足を止めてから、少し考えが変わったよう。

「40歳ぐらいになって、
一田さんをはじめ、いろんな方の本を読んで
私にも、何かできることがあるんじゃないかっていう気持ちになったんです。
人生の中で、仕事にさく割合ってすごく多いですよね。
それが自分の楽しみにつながったら、素敵だなあって思います」

 

でも、いったい自分に何ができるかが見つからない……。
ここから藁谷さんの「もんもん」が始まりました。
私の主宰する「スコップの会」に来てくださったのも、そんな「もんもん」の真っ只中だった頃。

先が見えない「もんもん」はつらいけれど、
私は、そんな藁谷さんが、とても輝いて見えました。
今までの「自分」を脱ぎ捨てて、新しい自分になる。
そのために、自分と向き合い直す時間は、自分の心を磨いている時間なのだと思います。
たとえ出口が見えなくても、
「私ってなんだろう?」「できることってなんだろう?」「幸せってなんだろう?」と
考える時間こそ、その人の魂を強くしてくれる……。

自分の足元を見つめた藁谷さんが、その後どうしたか……。
次回は、そんなお話を伺います。

 

 

撮影/近藤沙菜

 

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