回里純子さんは、私が「大人になったら着たい服」などの
雑誌の取材でお仕事をご一緒している写真家さんです。
初めてあったのは、「ナチュリラ」の撮影だったでしょうか。
数々の女性誌や広告で活躍していると聞き、どんな方かなあと思っていたら
驚くほど物静かで驚いたことを覚えています。
でも、写真があがってみると、
透明感があって、その人がキラキラ輝いて見えて、他のどんな写真家さんの写真とも違う……。
不思議な力を秘めた人だなあと思っていました。
そんな回里さんから、写真展をお知らせをいただいたのは2011年のこと。
なんと、会場は六本木ヒルズ!
しかも、同時期に写真集も発刊。
なんだ、なんだ? 何が起こっているんだろう?
そんな興味を持ちつつ、
「タカラモノ123」と名付けられたその写真展に足を運んだのです。
それは、回里さんが2010年に立ち上げた「タカラモノ・プロジェクト」の一環でした。
2000年生まれの子供たちを対象にした撮影プロジェクトだそうです。
「いちばん大切なものはなに?」
という問いかけをもとに、タカラモノを持参してもらい、
こどもたちひとりひとりにインタビューをしながらポートレート撮影をする、
というものです。
ヘアメイクもちゃんとして、
白いバック布の前でカシャッ。
その子供たちの表情の自由なこと!
「タカラモノ持ってきて、と言ったら、今どきの子供だから
ゲームか携帯電話かな?と思っていたんです。
そうしたら、フタをあけてみたら、
『僕のタカラモノは妹です』って妹を連れてくる男の子がいたり、
得意のバレエを披露してくれる女の子がいたり……」
そう語ってくれた回里さんの言葉の「熱さ」に驚きました。
あれ? 回里さんってこんな人だっけ?って……。
六本木ヒルズの会場は、それはそれは広い空間でした。
大きく引き伸ばした写真がずらりと並び、その光景はまさに圧巻!
聞けば、いつも利用しているラボの社長さんに、
「企画の内容に賛同してもらえる企業を探した方がいい」
と「キャノン」の担当者を紹介してもらったそう。
この展示のプリントは、すべて協賛でお願いできたので、
これほど大きく引き伸ばしての展示が可能になったのだとか……。
へ〜〜〜!
と二度目のびっくり!
写真展をやりたくても、その舞台作りには
さまざまな準備が必要で、写真を撮る技術以外に
作品を見せるためのプロデュース能力が必要になります。
この規模での展示に
回里さんは、さぞかし時間と手間とパワーと心を注いだに違いない。
そのときに、私の回里さんに対する印象がカチリと切り替わったのでした。
そう、一見物静かな姿の裏には、きっと「ワガママン」がいるに違いない!
と思ったというわけです。
そこで、今回改めてお話を伺ってみました。
「すごい行動力だったよね」
と聞いてみると
「いやいや。基本的に行動力なんてないんですよ。
でもね、10年に一度とか、5年に一度とか、
何かあったときに、突然グワ〜ッて力が湧いてくることがあるの」
この後、私は回里さんのこれまでの歩みの中で
この「グワ〜〜ッ」の正体を知ることになります。
次回は、回里さんが写真の世界へ一歩足を踏み込むお話から伺います。