暮らしの「もの風景」

有松絞りって、古くて新しかった!

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一つのアクセサリーとの出会いから名古屋市の有松を訪ねました。
前回は、「有松絞り」を「今」の暮らしに取り入れやすいデザインに
変換したブランド「cucuri」について伺いました。

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「cucuri」を立ち上げた山上商店の山上正晃さんに連れて言っていただいたのは、有松の街でも一番古い呉服屋さん「竹田嘉兵衛商店」です。

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江戸時代の初め、ここ有松は人家のない荒地で山賊が出て、
東海道を旅人が通れないという状態だったそう。
そこで、尾張殿様が街を作らせ、新しい集落が誕生しました。
ただ、稲作に適する土地ではなく、何を生業として暮らしていくかが問題。
ちょうどその頃名古屋城の築城のために九州から来ていた人が着ていたのが絞り染の着物でした。
それを見た有松に移り住んでいた住人の一人、竹田庄九郎が三河木綿に絞り染めを施した手ぬぐいを
街道を行き交う人々に手土産として売るようになったのが、有松絞の始まりだったのだといいます。

山上:竹田庄九郎の出身地、阿久比は知多木綿の産地だったんです。
知多半島には常滑焼があって、それが有松に運ばれて、有松絞りを染めるための藍瓶になりました。
瓶を焼いた灰の灰汁の上澄みをとって、藍を発酵させるために使います。
知多木綿があって、藍瓶があって、灰汁があって、ぐるっと回ると有松絞りが出来上がる。その循環によって産地が形成されているんです。

 

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このお話に私はなんだか感動してしまいました。
その地域と気候と物作りが全て1本の線で結ばれて、「もの」が生まれ出るには、合理的な理由がある。
有松絞りのネックレス一つ、ピアス一つの後ろには、知多半島という物作りのための「地域性」や、この地の「気候」や、生きるための「知恵」全てが数珠繋ぎのように繋がっていました。

そして、今まで私の暮らしには、全く接点のなかった「有松」という街が、
急に身近になり、さらに知多半島という日本のいち地域が、
私の住む東京の西に確かに存在する、という実感がムクムクと湧いてきました。

 

次に連れて行っていただいたのが「有松・鳴海絞会館」

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ここで見た有松絞りができるまでのビデオは、とってもわかりやすかった!

昔ながらの絞りの技術の多彩なことにびっくり!

山上:元々有松は知多木綿を使って浴衣を作っていたんですが、知多地方では、部落ごとに絞りが違っていたんですよ。おばあさんやお母さんから代々技法を習って。だから一子相伝のように、一人の人は、一つの絞りの技しか手がけないんです。

一田:え? じゃあ、一人の人は、延々と一つの絞りしかやらないってことですか?
わあ、それは根気がいりますね。

山上:そうなんです。
京都にももちろん絞りはあるんですが、京都は丹後ちりめんがあったら着物になったんです。我々は知多木綿、三河木綿があったから浴衣になったんです。生地背景というのはすごく大きいですね。

一田:知らないことってたくさんあるものですね〜。

 

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そして、この会館で、実際に「くくり」の作業を見せていただきました。

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生地を針でつまんだら、先から糸でクルクル巻いていきます。これを果てしなく繰り返す。
その作業の緻密さ、辛抱強さにため息が出ました。

 

山上:くくり職人っていうのは、内職の延長なので、みなさん家庭でやられているんです。有松では200~300人ちょっと。ほとんどが女性です。元々農業の閑散期にやっていた作業。知多半島では、お父さんが漁に行くと、お母さん方はみんなで公民館に集まって「くくって」いたとか……。

そして、有松はよく道具を使うんですよね。綺麗に早くくくるための道具を、それぞれの家庭で開発した。だから、技法によって全道具の形が違うんです。他の絞り染めの産地にはそういう道具はないんですよ。

一田:合理的ですね〜。

山上:有松が今も続いているのは、生地を小幅ではなく広幅に対応したからです。45㎝の浴衣幅しかやらないという産地はどんどんなくなってきています。でも、有松の場合は、通常のアパレルが使う112㎝幅や140㎝幅のものに対して加工を受けて着ました。それに対応して染色工場も機械の幅を変えましたし。

一田:なるほど。これからの時代を考えて、先行投資をしたってことですね。

山上:絞りって、本来手の中に生地を握ることができないと「くくる」ことができないんです。だから小幅だったんですよね。なので広幅に対して、どう加工しようかと考えて、たたんでくくってみたり、色々な道具を開発して工夫したんです。そうするとまた新しい技法が生まれたりするんですよ。

一田:有松ってすごい! 古いようで新しいですね。

 

私たちの周りにはたくさんのものが溢れているけれど、本当に「知っている」ことはほんの一握りなんだなあと、この取材を通して実感しました。
なんとなく聞いたことはあった「有松絞り」だったけれど、
実際に「有松」という街に足を運ぶと、あれとこれが繋がって、その「もの」が生まれた必然性がすとんと理解でき、しかもそこには必ず「作っている人がいる」という当たり前のことを感じることができます。

 

次回は、そんな「ものと出会うこと」「ものを買うこと」についてお伝えしたいと思います。

 

この「cucuri」を初め、全国の素材屋さん、縫製屋さん、加工屋さんなどの「工場」で作られたファクトリーブランドを集めた、新しいコンセプトのセレクトショップが生まれるそうです。
その名も「工場十貨店」。

そのポップアップショップが日本橋三越本店で開催されます。
上記の写真のアクセサリーやブラウスも販売されるそう。
みなさま、ぜひ今に変換された素晴らしい手わざを見にいらしてくださいね〜。

「工場十貨店」
日本橋三越本店本館4階 リスタイルレディ
9月19日(水)〜10月2日(火)

 

 

撮影/清水美由紀

 

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