ライターズ・マルシェ

「手のかかる子は“金の卵”」。親は子供に寄り添って一人一人のファンでいること。谷匡子さん vol.1

「お母さんが働くって、どういうこと?」
第一回目は、「doux.ce」を主催するフラワースタイリストの谷匡子さんです。

谷さんは、東京のインテリアショップ「TIME & STYLE RESIDENCE」をはじめ
多くのショップや空間でお花の生け込み(スタイリング)を手がけています。

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かつて、フラワースタイリストの平井かずみさんのお花の教室に通っていた私は、
平井かずみさんが「師匠」と呼ぶ谷匡子さんのことを知りました。

谷さんは10代の頃にフラワーデザイナーの資格を取り、栗﨑曻氏、濱田由雅氏に師事。
20代の頃には数多くのショップで花活けを手がけるようになりました。
花市場から花材を仕入れるため屋号が必要になり、会社を立ち上げられました。
「atelier doux.ce」はフランス語で「心温まる」という意味があることを辞書で知り、名付けたそう。
その後も生け込み先のショップはどんどん増えていき、
4人の子育てをしながら、会社を運営し、書籍も出版されています。

その場の雰囲気にピタリと合う器と
花本来の美しさを引き立たせる谷さんの花活けを見て心を動かされた私は、
どんな人なのだろうかと興味を持ちました。
お花の世界で活躍しながら、どうやって育児をしてきたのか、
同じ母として聞いてみたいことが山ほどありました。

谷さんは1年前に縁あって岩手県に移住。
山を耕し花木と向き合う生活を送っています。
長男26歳、長女23歳、二男17歳、三男12歳のお母さんでもあります。
普通なら4人のお子さんを育てるだけでも目一杯なはず。
多くのスタッフを抱えてショップの生け込みを行い、
岩手で花木を育てながら、東京でお花の教室を開催するなど、
どうしてそんなに同時に色んなことをできたのでしょうか。

「もともと、自分の意思で何かしようと思ったことはないんです。
ただ、自然な流れに乗ってきただけ。
会社を大きくする・小さくするタイミング、人が増える・去るタイミング。
流れに逆らわず、ただ身を委ねてきただけなんです」と、さらっと語る谷さん。

数多くのショップから信頼を寄せられ、会社を運営してきた方だからこそ、
きっと人生設計は計画的で、強い思いを貫いてきたと想像していただけに、この言葉は意外に思えました。

 

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そんな谷さんに、子育てについての考え方を伺ってみました。

「仕事しながらの子育ては今でも無我夢中です。
私はたまたまご縁があって子供を授かったと思っています。
子供がいなかったら、また別の生き方を模索していたことでしょう。
たまたま私が子供を産むことができたから、
一人の人間として社会の役に立つように育てなさいと、
成長するまでの十数年間、預かって暮らしていると考えています」。

谷さんの周囲にはなかなか子供を授からずに悩んでいる方達もいるそう。
子供を授かることは当たり前ではないと言います。

子供はいつか世の中にお返しするもの。
そう考えれば、一人一人の人格を尊重して干渉することもないのかもしれません。

不登校の子がいるお母さんの悩みの相談に乗ることもあるとか。
谷さんは「金の卵」を持っていると励ますそうです。

「手のかかる子は“金の卵”。もともとその子に備わっている性格や特徴があるのだから、
親がコントロールすることをやめて、本来その子の持っているものにただ寄り添う。
私は子供が4人いますが、子供一人一人のファンでいたいと思っています」。

親はつい自分の理想像を子供に押し付けてしまうことがあります。
子供の性質を見極めて寄り添うことは忍耐力が要ることだと思います。
谷さんがこう考えるようになった背景には、幼少期の出来事がありました。

フラワースタイリストになったきっかけは、
5歳から習い始めた生け花だったとか。幼少期は保育園に行くのを拒否して内に籠る子だったそうです。

「原因は色々あったと思うのですが、2歳の頃に当時4歳だった兄が白血病を発症し、
その後家族は数年看病にかかりきりで私はあちこちに預けられました。
その時、知り合いの畑の手伝いをしたり、花の球根を植えて育てたりして、
自然と向き合うことでホッとしたのが自分の根っこにずっとあります」。

お花を習い始めたのは、保育園は嫌だけれどお花のお稽古が楽しかったから。
叔母がお茶とお花の先生をしていたので、
昼から夜までずっとお稽古に入り浸って他の人が生けるお花をずっと飽きずに見ていたそうです。

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だからこそ、谷さんは子供たちにも好きなことを見つけて欲しいと言います。

「好きなことがあると一生涯幸せな暮らしができると思うんです。
子育てで大事にしていることは、その子の好きなことを見つけて伸ばしてあげようということ。
私が行かせたい方向ではなく、本人が行きたい方向が見つかるまでじっくり寄り添ってあげたい。
親は一生涯のサポーターだと思います」と語ります。

親からしてみれば、保育園に毎日行ってくれた方が安心で「正解」だったのかもしれません。
しかし、谷さんにとっての「正解」は叔母の元でお花を見ることでした。
そんな自分自身の経験を経て、親が「正解」と思うことが子供の「正解」ではないことに気づきました。
大事なのは、子供の「正解」にちゃんと耳を傾け、行きたい方向に進ませてあげること。

それでも、子供は成長の過程で、壁にぶつかったり自分を卑下してしまうこともあります。

「子供は“どうせ自分なんか”と落ち込むこともありますが、私は子供のいいところしか見ません。
物事は捉え方次第。私は“何があってもそうだ、それでいいんだ”と思うようにしています。
成長する過程ではアクシデントがあって当たり前。順調じゃないから面白い。
順調すぎるドラマは涙もしないし感動もしません。
子供達が壁にぶつかることがあれば、“いい感じ”と応援します。
悪いことが降りかかってくる時こそ、自分の心や力が試される大きなチャンス。
既に起こったことを考えるよりは、どうしたらいいか作戦を考えます」。

“子供のいいところしか見ない”と言い切る谷さんに、
母としての強さと子供たちとの厚い信頼関係を感じました。
親は、短所ばかりに目が行きがちで、長所は“できて当たり前”になり素直に認めることができないものです。
親がきちんと長所を認めることが子供の自信に繋がるのかもしれないと、思わず我が身を振り返ってしまいました。
そして、アクシデントに対して前向きに考えることができるのは、
きっと数々の場数を踏んでいるから。
そんなお母さんに相談できる子供達は羨ましいとさえ感じてしまいました。

次回は、さらに、働きながらの子育てについて伺いたいと思います。

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