美しきワガママンたち

絵を描くように生きたいわ 広川マチ子さん vol1

 

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今から20年ほど前、東京吉祥寺に、「Socks」というお店があったのをご存知でしょうか?

その後、今「サンク・プリュス」が入っている店舗に店名を「Socks*ciao!」と変えて移転。
私はその頃に、「なんだか不思議なお店だなあ」とよく通っておりました。

ヴィンテージの雑貨から生地、器、など面白いものが並び、
店内に流れるなんとも言えない世界観に「なんだこれ?」と興味津々でした。

ちょうど吉祥寺に引っ越したばかりの頃で(12年前!!)
ヴィンテージの生地がどれも魅力的で、あれこれ買い求めて、テーブルクロスにしたり、
スカートを作ったこともありました。

その店を営んでいらっしゃったのが広川マチ子さんです。

その後、今度は「Socks*ciao!」の隣の店舗を借りて「A-things」をオープン。
ここは、現代美術の展示を主に行うオルタナティブなスペースでした。
画家や彫刻家など、
マチ子さんが、自分の目でいいと選んだアーティストの作品を最低1か月という長いスパンで展示。
売ることだけが目的ではなく、作家とマチ子さんがお互いにキャッチボールをしながら
作品を作り上げていく過程を「協働」として展示する空間でした。

その後、中道通りに移転し「A-things」を併設した「A-materials」という名前のショップをオープン。
ここではセミオーダーの洋服を手がけられるようになりました。

ここまで足跡をざっとご紹介しただけで、
「マチ子さんって、一体何者?」と思われる方もきっと多いはず。
そう、マチ子さんが何をする方なのか、説明するのはとても難しいのです。
「私の職業は”広川マチ子なのよ”」と当のマチ子さんは明るく笑います。

さらに、店でちらりと見かけるマチ子さんは、
いつもセンスのいい洋服をかっこよく着こなしていらっしゃいました。
そして、「大人になったら着たい服」(主婦と生活社)の2号目に登場いただいたのです。

その後、何回か取材させていただき、今年発売の「大人になったら着たい服 2018春夏号」では、
「小粋なおしゃれ」という特集に、ヴィンテージの素敵な柄のシャツとパンツで再登場!
そんな取材の度に、取材テーマとは外れた、ちょっとした雑談の中での
マチ子さんの言葉が、ハッとするほど刺激的で……。
ぶっ飛んでて、ハチャメチャで、自由なんだけれど、
上品で、本物で、真摯で、「この人はきっと何か真実を知っているに違いない」と思ったのでした。

いつかじっくりお話を伺ってみたい、と思い続け、今回やっとその願いが叶いました。

 

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インタビューの日、なんと着物姿で現れたマチ子さん。
昨年から着付けを習うようになり、今、着物に夢中だそうです。
この日着ていらしたのは、お母様の結城紬。
桑の美色の帯と合わせその姿の素敵なこと!

 

 

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吉祥寺でお店を営んでいらして、
その前は、長年ニューヨークで暮らしていたらしい……。
それ以外はほとんどマチ子さんについては知らず、今回は「謎」の部分をゆっくり
伺うことにしました。

まずは「小さいころは何になりたかったのですか?」
と聞いてみました。

すると
「絵を描くことをやっていきたいなと思っていましたね」
とマチ子さん。

「小学校3年生の時に、両親が引越しをして、
引越し先のアパートの1階に『あかねアトリエ』という子供用の絵画教室があったんです。
それが私の運命の決め手!
そこで出会ったのが節子先生です。
美大を出た大人の女性で、ひと回り以上年下の慶応ボーイのパートナーがいて、
最高にかっこよかった!

私は、そこで絵を習っていたんですが、
節子先生はなぜか私を特別に可愛がってくれました。
銀座のバーに連れていってくれ、私はそこで気取って『オレンジジュース』と大人たちの真似をして
オーダーしたものです。
大人ってどういうものか、遊ぶって、仕事をするって、生きるってどういうことか、
私は全て節子先生から教わりました。
私はわずか10歳だったけれど、そこでもう生涯のミューズと出会ったのだと思います。
そして、節子先生は、私が大人になってもずっと見ていてくださって、
サポートしてくださったんです」

 

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こうしてマチ子さんは、美大の絵画科に進学。

「卒業後は、絵描きさんになる予定だったのですか?」と聞くと

「いいえ、絵じゃなくてもよかったの。
一言で言えば、コレと決めないで生きていきたい、興味があること全てに関わって、
表現者として生きていきたい、と思っていました。
そして、節子先生のように、世の中のしがらみに囚われず、
キリッと一人で立って、一人で生きていきたい。
その後、たまたまお店をやることになったけれど、
絵を描くように、お店をやりたいし、
絵を描くように、生きていたいと思いましたね」

 

なんとなんと!
「絵を描くように、生きる」
って、一体どういうことなのでしょう?

 

でも、マチ子さんに会ったことがある人は、きっとその意味がなんとなくわかると思います。
私も、はっきりそれが何なのか、と語ることはできないけれど、
マチ子さんと接していると
「ああ、絵を描くように生きてるって、こんな空気のことだなあ」と感じます。

それは、真っ白なキャンバスに絵筆を走らせるように、何も決めず、自由に心地よく生きることなのかも。

そして、それは私が最も苦手とする生き方です。
私は、つい何が正しいのか、何か正解なのかを決めて
そこを目指し一生懸命努力したい人ですから……。
それが、私がワガママンになれず、でもワガママンに憧れる所以。

次回から、マチ子さんの「絵を描くように生きる」生き方について
ゆっくりお話を伺います。

 

 

撮影/清水美由紀
着付け/大野慶子

 

 

 

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