「誰かの役に立つ」ことってすごい! アロマハウスリーフ 坂本早苗さん4

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愛媛県宇和島市で、「アロマハウス  リーフ」を営む坂本早苗さんにお話を伺っています。

 

坂本さんのもう一つの大事な仕事が、産婦人科でのマッサージだそうです。

私はこのことを知ったとき、なんて素晴らしいんだろう!と思いました。
自分の仕事のどこかに、「誰かの役に立つ」という実感を持てる時間を含めることは、
人生を輝かせるなあと思うから……。

もちろん、普段のショップでお客様と向き合ったり、レッスンをすることも
きっとその人の暮らしの役に立っているはず。
でも、産婦人科の妊婦さんたちへのマッサージは、
よりダイレクトにそのことが感じられるに違いありません。

普段、本の向こう側にいる読者の方が、なかなか見えないのが私の仕事です。
でも、時折SNSやこのサイトでメッセージを頂くととても嬉しい!
若いときには、何かを成し遂げ、活躍することがやりがいだったけれど、
歳を重ねるごとに「誰かの役に立つ」ことの喜びをしみじみ感じるようになりました。

坂本さんの産婦人科でのお仕事は、手を通してその喜びが感じられるもの……。
まずは、産後の方に合うマッサージを考案。
赤ちゃんが生まれたら連絡があります。
入院は一般的に5日間なので、生まれた次の日から退院の前日までの3日間のうちのどこかで
マッサージができるというサービス。

「うつ伏せの状態で肩と首と背中をマッサージします。
そのあと、両腕か、膝から下の両足かを選んでもらうんです。
帝王切開の方はまた別の方法で。

このお仕事は私の中で、とても大切にしていて、
疲れた顔で行くわけにはいかない、と気持ちを引き締めて向かいますね」

 

そもそも、産婦人科でマッサージをするようになったのは、
娘の千穂さんの出産がきっかけだったそうです。

 

「妊娠中には使えない精油もあるんですが、実は出産にはとても役立つんです。
娘が出産するとき、助産師さんがいい方で、
私も分娩室に入れていただき、
ジャスミンの精油のボトルとブレンドオイルを持って入りました。
陣痛を和らげたり、促進してくれる効果があるので、
お腹や背中をマッサージしようと思って。
そうしたら、今の医学では、お腹に装置が取り付けられて、マッサージができない……。
そこで、原液をハンカチに染み込ませて匂わせました。
娘は、予定日が近づいてくる頃から、リビングでジャスミンの精油を焚いていたので、
す〜っと家にいる感覚になったそうです。
それでリラックスしてお産ができました。

その時、お世話になった助産師さんが、「アロマハウス リーフ」に勉強に通って
くださるようになって、
市立病院でもアロマテラピーが取り入れられるようになりました。

微弱陣痛の方に足浴をしたり、分娩室で芳香させたり。
その方が、当時市立病院で働いていた先生にアロマの話をしてくださったんです。

その先生が、身分を明かさずに、奥様と一緒にお店にお茶を飲みに来てくださいました。
何度か来られたあと、
「産婦人科を開業するので、手伝ってくれませんか?」と言われたんです」。

 

こうして、今では、ほぼ毎日産婦人科に通うようになりました。

「マッサージに行くとすごく疲れます。
全身汗びっしょりで、
ヘアバンドをしていないと汗が滴り落ちるぐらい……。

でも、喜んでいただけるので、とってもやりがいがあるんです。
終わった時の表情を拝見したり、言葉をいただいたり。

依頼された仕事なので、自分の仕事以上にきっちりやらないとと思っています。
キリッとプロフェッショナルな顔で、一切手抜きはしないという気持ちで……。

不思議と手のひらって、自分の気持ちが伝わるんですよね。
いい加減にやっていると、必ず相手に伝わると思うんですよ。

 

 

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そのほかにも、愛媛県とJR四国から依頼を受け、「予讃灘ものがたりの香り 陽だまりのしずく」と「予土線の香り」を制作。
精油をブレンドし、オリジナルの香りを生み出すことも楽しい仕事の一つだそう。

どんどんと仕事の幅を広げている坂本さん。

「もともと私は、家のことをするのが好きでした。
家事とか、料理とか、手芸とか……。
だから、絶対私は専業主婦を楽しむんだぞ、とずっと思ってきました。
でも、今、やっぱりお店が好きなんだなあと実感しています。

ただ、家庭のことがちゃんとできていないとストレスになります。
お店が終わったら、帰って、ご飯を作って……。
それが崩れるなら、自分のやりたいことをやっても意味がないと思って」。

 

でも、一方でこうも語ります。

「今年は、女性のためのアロマテレピーのレッスンをやってみたいなあと思っています。
女性ホルモンのバランスで不調を抱えている人が多いんですよね。
PMS(月経前症候群)の方が不調を和らげるアロマとか、マッサージとか」

 

坂本さんは、ガツガツと働く人ではありませんでした。
でも、ふと気づくと、仕事がどんどん入って、どんどん忙しくなって……。
それは、「その人のために自分ができること」をひとつでも見つけたら、
やらずにはいられないからなのかも。

「アロマハウス リーフ」のカフェは、ショップの2階にあり、
かつで宿として使われていた間取りのままなので、1室ずつ個室になっています。
小さな子供連れのお母さんに、ゆっくり過ごしてほしい。
そう考えて、お茶がお菓子などを用意します。

アロマを学びたい人のためには教室を開き、
雑貨ずきの人のために、暮らしがちょっと楽しくなる小物を集め、
そして、体調が優れない人には、精油を使ったアドバイスをしたり、
マッサージをしたり……。

 

求められることに精一杯応える、というのが坂本さんの仕事の姿勢でした。
坂本さんに相談したら、きっと大丈夫。
訪れる人は、みんなそんな優しさに包まれて、安心感を感じるのだと思います。

おっとりとした専業主婦が、気がついたら店主になっていた……。
それは、自分のためなら尻込みするけれど、
誰かが喜んでくれるなら、頑張れる。
そんな積み重ねだったようにも思えます。

そして、決してぶれなかったのが、アロマへの強い思いです。
「今、いろいろな自然療法が出て来るようになりましたが、
アロマのように、楽しみながら、自然に健康維持、増進ができるものは他にないって思っているんです」
と坂本さん。

精油という小瓶に宿る力を信じ続けたところが、
坂本さんが「ワガママン」たる所以だったように思えます。

 


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