中川正子さんトークイベント報告2  自分をプロデュースって?

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「外の音、内の香」主宰の初めてのトークイベントに、
中川正子さんに来ていただきました。
会場は一田自宅……。

自宅でイベントなんていいんだろうか?
和室に座ってもらうのでいいかな?
どんなお茶を出そうかな?
30人も入るかな?
そうだ、マイク買いに行かなくちゃ!

などなど、初めての試みにオタオタしながら一人で準備をしました。
でも、心配なんて吹っ飛ぶくらい、中川さんのお話が面白くて!
もしかしたら、私が一番「ふむふむ」とうなずいていたかもしれません。

そもそもの発端は、
中川さんと仕事で会ったり、プライベートでご飯を食べに行ったりしながら
お話をするうちに、
この人は、きちんと自分をプロデュースしているんだなと感じたからでした。
今回は、その具体的な方法について、じっくり根掘り葉掘り伺ってみました。

中川
実は私ね、「セルフプロデュース」しているなんて自覚は全然なかったんです。
今回一田さんに言われて、自分がやってきたことが「そうだったんだ〜」って気づいたぐらい。

一田
無意識にやっている、というところにきっと私は惹かれたのかもね。
今回、中川さんの無意識の領域をスコップで掘り起こして分析してみたいと思ってます!(笑)
そういえば中川さんは、写真に撮られるときに、キメ顔があるんだよね?

中川
わはは。そうそう。私の名前で画像検索してもらうと、同じような顔ばかり出てくるはずなんです。
それは、14歳のときに発明したキメ顔なの。
自意識過剰な子供だったから。
ちょうどその頃、友達同士で写真を撮るというのは始まった頃で、
今は携帯があるけど、当時はフィルムで撮りあいっこしてたんですよね。
それで、正面から撮られると、私は顔のパーツが真ん中により気味であんまりよくない気がして。
ちょっと横に振ると、鼻がシュッとしてるんで、
目がでかくて、顔のラインがきれいで最高じゃん!って思ったんですよ。(爆笑)

 

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一田
自分がどうしたらきれいに見えるかっていうのを追求するパワーがすごいですよね。

中川
私、面倒臭がりだから、こうやっておけばOKっていうものを持っておくとラクだっていうのがあるんです。写真でも、こっちむいときゃOKだって。(笑)

一田
眉の描き方とかも研究したんですってね?

中川
そうそう。安室奈美恵ちゃんの真似をしたかったんだけど、彼女はすごく小顔で
私とは形がちょっと違って……。
浜崎あゆみさんだったら、顔の系統でいうと真似しやすかったんですよね。
それで、あゆの写真を持って美容室行って……。金髪にしてもらいました。
アイメークを強くして、眉毛も真似して。
わかりやすいアイコンの真似から入ったというのはありますね。
今も、好きなフランス人がいて、その人の真似をしてるの。

一田
え〜、今尚やってるんだ!常に誰かしらミューズがいるってこと?

中川
そうですね。街でも素敵な人がいたら追いかけて行って写真を撮っちゃったり(笑)
私ね、素敵な人のストックをしておくホルダーを持ってる気がします。
ファッションのホルダーとか
お話の仕方のホルダー、仕草のホルダー……。
そうやって、憧れの人のコピーをしながら自分のものにしていく感じかな。

一田
完全コピーする集中力がすごいよね。
私たちは、なんとなくあの人素敵だな〜って思う程度なんだけど、
そこでアクションを起こして、あの人みたいになろうって、コピーするパワーってなかなか持てないから。

 

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中川
完全なコピーというか、私がその人のいいと思うところだけのコピーですけどね。
20代の頃のアイコンは夏木マリさんでした。
彼女はもとはセクシー歌手で、でも若さだけでやっていくうちに頭打ちになるからと、
自分だけのステージを作ろうとされたんですよね。
30歳で外国に渡って、芝居の第一人者を訪ねて学んで……。
帰国後「印象派」という名前の一人芝居を始めました。
彼女は、その舞台をご自身の「コロシアム」って呼んで、そこにこそ本当の自分がいる、
と腹をくくられたよう。
そうやって自分の「コロシアム」を持ったら、それ以降はお母さん役でもおばあさん役でも
楽しんでやれるようになったんですって。
私も、デビューしてすぐに、たくさんお仕事いただくようになったんですけど、
女の子のフォトグラファーというだけでくる仕事もあって……。

一田
中川さんは、デビューするやいなや、美人の女性フォトグラファーとして大きな話題となったんですよね?

中川
女性がまだ少なかったので、それだけで呼んでもらえていたところがありましたね。
そんなとき、マリさんの本を呼んで、ああ私も自分にとって帰ることができる場=「コロシアム」があったら、何も嘘をつかなくていいし、矛盾もない。
そういう場を作りたい、ってわりと早い段階から考えていたかもしれません。

一田
そうだったんだ〜。それはいつごろ?

中川
20代の後半ですかね?
でも、そのときは自分がそんな場を作ることができるなんて思わなかった。
30代になって、いよいよ若い女の子じゃない、っていう実感が出てきたし、
結婚をしたら、いつか子供を産むかもな〜とも思ったので、
ますます「中川正子」っていう看板をきっちり出したいなあと思うようになったんです。
そうしたら、もし子供が生まれて自由に動けなくなっても、「中川正子」にお仕事を頼みたい
という方がいてくださるんじゃないかと思って。

一田
結婚する前から、そう考えてたの?

中川
そうですね。30歳から35歳ぐらいまでは、なんとなく意識して「中川正子化」をすすめたんです。

一田
お〜!中川正子化はどうやったら進むの?

中川
あのね、とっても細かいことなんですが、メールを送るときにも文末に「中川正子」って書くの。
「中川」じゃなくて(笑)。
「中川」なんてどこでもいるし、これからは「中川正子」の4文字でいこうと思って。
個展で自分の表現を見せる、というだけでなくて、
雑誌などでお仕事をいただくときにも、もし求められているのであれば「中川正子」を
バンバン入れていく!
そして、誰にでも撮れる匿名的な写真でなく、「ああ、中川さんだね」って言ってもらえる写真をすごく意識して撮り始めました。

一田
雑誌って、そのカラーに合わせるってことも求められるでしょう?
そこに「中川正子」を入れるって難しくなかったですか?

中川
そうですね。でも一緒に取材に行って、一緒に感動させてもらって、私のテイストで撮らせてもらう。
そんな仕事をやっているうちに、いちカメラマンというだけでなく、
スタッフみんなで作り上げていく、というノリになっていったんです。
一見したらあまり変わらないのかもしれないけれど、
他の人と交換可能な仕事ではなく、やっぱり私に頼んでもらえたんだなって思える。
そんな仕事を選ぶようにしていましたね。

一田
なにをするにしても、自分にしかできないことをやっていきたいってことですよね?

中川
そうですね。私は特に写真がめちゃくちゃうまいわけじゃない。
ヘタではないと思うし、得意技はあるけれど、
もっと上手な人っていっぱいいる。
じゃあ、他の人より飛び出ている部分ってなにかって思ったら、
やっぱり「思い」がやたら強いってことかなと……。

一田
わっはっは!確かに思いが超強い!

中川
好きなものにはガ〜ッと直進するし、その人のいちばんかわいく見える角度とか、
いちばん素敵なところとか見つけるのも早い気がするし……。

一田
早い早い!
中川さんの撮影は本当に早いんです。今まで女優さんとか、いろんな方を撮っていただきましたけど、
「はい、撮れた〜」ってすぐニコニコ笑って言うんですよね(笑)

 

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ここまでお話を聞いただけでも、「中川正子化」=セルフプロデュースに、
中川さんがどれだけ集中し、熱く、強く、思いをかけてきたかが伺えます。

自分を好きになるってすごい!
自分の力を信じるってすごい!
中川さんにお話を聞いていると、そう感じずにはいられません。
「わたしなんて……」とイジイジと自信なさげにしてきた私は、
その圧倒的な中川さんの熱量に、改めて驚かされ、
そして、この熱量こそが、
セルフプロデユースの第一歩なのだなあと思ったのです。

つまり、自分を誰よりも好きになるってこと。
自分を自分で引き受ける覚悟を持つってこと。

 

みなさん、中川正子化の「中川正子」のところに
ご自分の名前を入れてみてください。

私だったら「一田憲子化」ってこと。
いやいや、私なんて「憲子化」するほどのものじゃないし……。
と言いたくなります。
でも、考えてみれば、この世の中に生きている「私」はたったひとりしかいない。
だったらそのひとりを、大事にしてあげましょうよ!
中川さんがそう言ってくれているような気がしました。

セルフプロデュースのファーストステップは、
自分をとびっきり好きになること。自分を信じること。

 

今回は若い頃からフォトグラファーとしての中川正子化のお話でした。
次回は、おかあさんとして、主婦としてのセルフプロデュースについて伺います。

 

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撮影 近藤沙菜


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