お金を得ることは、悪いことじゃない、と理解することが大事。

 

 

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愛媛県松山市で「せいかつ編集室」というウェブサイトを運営され、
そこから生まれたビジネスを手がけている、大木春菜さんにお話を伺っています。

第2話では、ご主人の壮一郎さんが会社を辞め、「せいかつ編集室」へ入るまでの
お話を伺いました。

それにしても、大木さんにどんどん仕事の依頼が集まるのは
一体どうしてなのでしょう?
お話を聞きながら、大木さんの何が評価されているのか、
その秘密が知りたくてたまらなくなりました。
すると壮一郎さんがこう教えてくれました。

壮一郎さん:
「この人の裏表がない感じが、きっとお客様にも伝わるんでしょうね。
きっとこの人は嘘をつかない……っていう信頼感があるのかもしれません。
僕が住宅雑誌の営業をしていたとき、
工務店から広告料をもらって、新築の家に取材に行っていたんです。
その時、ライターとして妻に来てもらいました。
そういう時に、すっとどこへでも入っていける。
臨機応変な対応力があるので助かりましたね。
そして、今では、自分のウェブサイトも作っているし、
SNSやオンラインサロンもやっていて、
関わったらちょっと面白い発信ができるかも、って思ってもらえている気がします」。

この人だったら、きっと私の話を聞いてくれる、という安心感……。
それは、私も初めてお会いした時から感じていました。
「おへそ塾」のとき、i padのタブレットでメモを取っていらして
「わあ、すごい!」と覗き込む私に、気軽にそのメモを見せてくださいました。
あれこれ質問しても、丁寧に答えてくださって、
心がとってもオープンだったのです。

あの「受け入れてもらっている」という感覚が、
きっとビジネスの時にも生きているんだろうな〜と思うと
ビジネスにおける信頼感とは、ちょっとした態度だったり、
語りかける言葉だったり、笑顔だったり……。
いたって普通のことなのかもしれない、と思えてきました。

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ここで私には、どうしても聞きたいことがありました。
自分で仕事を作り出した時、難しいのが「金額を決める」ということ。
大木さんは、どうやって自分の仕事の価格を決めたのでしょうか?
そこで、お金に対する考え方を聞いてみました。

大木さん:
「まず『お金を得ることは悪じゃない』という気持ちがすごく大切なんだと思います。
相手にお金を出してもらったら、反対にお返しもできるんですよね。
お金は回っている、ということをちゃんと理解しておかなくちゃ。
そこにバリアがあったら、お金をいただくことはできないと思います」。

なるほど!
自分の中で「お金」に対する考え方をシフトさせていったのですか?とさらに聞いてみると……。

大木さん:
「そうですね。お金を気持ちよく使う人を観察したり、本を読んだり、
人の話を聞いたりして、お金に関しては色々研究しました。
今、私はインポートの下着屋さんのプロデュースも手伝っています。
ミリ単位でお直しができる素晴らしいランジェリーなんですが、
どれも1着3万円ぐらい。
松山の人には、なかなかハードルが高いんです。
それでも、どうやって売っていこうか?と常に考えています。

お金を稼ぐことが苦手というクライアントさんってすごく多いんです。
そういうことを一緒に考えていく中で、私自身もマインドを変える必要がありました。
応援する事業を続けていくためには、絶対にお金が必要で、
だから売らなくちゃけない。
そういうことを何回も、何回も自分に染み込ませて、
『お金は楽しく回るものだ』って考えられるようになりました」

 

私も、出版社とのギャランティの交渉などは本当に苦手で、
いつも大抵が言い値でOKしてしまいます。
ワークショップなどの価格を決めるときにも、頭を抱えています。
最初は「これぐらいの価格だったら、みんなお財布が痛いと感じないで出せるかな?」と
ばかり考えていました。
でも、いろいろな方に
「自分の値段を高くつけるのは、覚悟を決めるってことなんだよ」とアドバイスをいただきました。
今では、少しずつ「これぐらいいただくんだから、精一杯頑張ろう!」と思える金額を
思い切って、エイッと決めるように努力しています。
ただし、まだまだお金に関する意識は発展途上。ずっと苦手分野です。

 

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2年前に「せいかつクリエイト」というウェブマガジンを立ち上げ、
ローカルビジネスの応援を手がけているという大木さん。
「関わった人は全員アゲます!」をキャッチフレーズの頼もしいこと!

大木さん:
「私がこれまで、いろんなお店や会社を取材をしながら気づいたのは、
『コンセプトを持ったお店は、必ず流行る』ということでした。
だから、まずはクライアントさんとお話をして、コンセプトを決める作業をします。
その上で、『せいかつクリエイト」のウェブマガジンに、コンセプトに合った記事を4回書きます。
『取材をすることで、ブランディングします!』っていうのが、
このサイトの方向性ですね」

この記事が、初回は5万円。2回目からは4万円なのだと教えてくれました。
そのほか、SNSの代理投稿や、LINE@のテキストや画像の制作、
ブログの代理執筆などは、月3万円から。

その料金体系はいたって明確です。
でも、こうやってきちんと仕事の体裁が整ってきたのは、
ご主人の壮一郎さんが、「せいかつ編集室」に入ってくれてからのこと。

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大木さん:
「夫が入ってきてくれてから、仕事のやり方を大きく変えました。
まずは、自分でコントロールできない数の仕事はもう無理なので、
記事を書く媒体の仕事をどんどん減らしていきました。
振り返ってみたら、必要とされることが嬉しくて、
どんどん仕事を受けていたけれど、
私はただの『便利な人』になっていたんです。
『安くて、全部やってくれるから大木さんに……』みたいな感じで。
代わりに、私にしかできない仕事をやりたいなと思いました」。

壮一郎さん:
「僕が入った時、持っている仕事全てを見せてもらったんです。
それが絶対に無理な量で……(苦笑)。
これは無理でしょう。ちょっと仕事の仕方を変えようと話をしました。
二人で仕事を見直し、値付けに取り掛かりました。
『せいかつクリエイト』の単価も少し上げて、
SNSの代行も3万円というのを崩さずやっていこうと……。
『2万円でやってくれない?』という依頼は、もうお断りすることにしたんです」

 

制作からブランディングへ。
少しずつ仕事をシフトしていった大木さん。
でも、その根底にある姿勢はいつも同じでした。
「ねえ、これどうして売れないのかなあ?」
「どうしたら売れるようになるかなあ?」
そんなショップのオーナーさんや、クリエイターさんたちの
すぐ横の椅子に座って
「どうしてだろうねえ?」と一緒に考える……。
きっと、大木さんのアドバイスは、
ご自身が仕事を立ち上げるに当たって、発見してきたことそのものなのだと思います。
だからこそ、共感とともに話が聞けるし、
数々の指摘や、ビジョンに説得力がある……。

すぐ相談に乗ってくれるお姉さんでありながら、
そこにきちんと自分の「価値」を付加したのがすごいところ。
サービスに対して価格を決め、お金をいただくことで
相手が本当に求めているものを還元する。
そのバランスの取り方が絶妙でした。

 

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そして、こんな風に語ってくれました。

「去年税理士さんに、『今年はどんな一年にしますか?』って聞かれた時に、
夫が『今年一年は妻の価値を上げることに注力します』って
さらっと言ってくれて、めちゃくちゃ感動したんです。
家族を置いて一人で出張に出かける後ろめたさや、
経費のことなどで遠慮もあったんですが、
『じゃあ、行かせてもらいます!』って思えるようになりましたね」

自分も一緒に成長していく。
それが大木さんのビジネスの一番の力になっているようでした。

 

撮影/重岡真美

 

 

 

 

 


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