コロナ生活で何を考えましたか? ZOOM茶話会 その3

非常事態宣言が出てから、ずっと家にいる日々。
のんびりしてるんだけれど、
今の私は何をどう考えればいいのかがわからない……。

そこで、今どんな風に過ごし、何を考えているのかを聞いてみよう!
と4人の仲間、中川正子さん、久保輝美さん、渡邉麻里子さん、Emiさんに声をかけ、
ズーム茶話会を開きました。

前回は自己紹介を兼ねて近況を話していただきました。
いよいよこれからもうすこし詳しいお話を伺います。

一田
「この連載の「その1」にも書いたように、「できないこと」がいっぱい出てきた今の状況の中で、
今まで思っていた「できる」と「できない」の境目とは、
違った価値観が立ち上がってくるような予感がしています。
でも、それが何なのかわからない……。
まずは、そんなお話から聞かせてもらえますか?」

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                   久保さんが理想を求めて作り続けているという天然酵母のカンパーニュ。

久保
「二極化が始まっているんですよね。
コロナがやってきて、価値観の違いが真っ二つに分かれています。
互いに協力する方にシフトするのか、『もっともっと』と一人勝ちする方へ行くのか……。
地球が本当になりたいのは、『美しい地球』のはずだから、
協力原理のほうへシフトしていくはずなんですよね」

一田
「一人勝ちではなく、協力の世界へ。
そう変わっていくと信じたい。
毎日家にいて、ご飯を食べて庭に出て花を摘んで……。そんな時間を過ごしていると
信じられる気になります。
でも、たとえば私の新著が、この状況で東京の書店が軒並みしまっていると
普段より売れない……。
そんな現実が目の前にやってくると、とたんに不安になってしまう。
信じかけていたことが、こんな簡単に揺らいでしまうのかと、唖然とします」

久保
「まずね、意識が先なんです。現実は必ず後からついてきます。
たとえば私なら、北海道に移住し、私だけのお城を立てて、
庭にはドッグランを作って……ってどんどんイメージを膨らませるんです。
このイメージができないってことは、そこまで行けないってこと。
逆に不安を煽る情報をテレビでたくさん見ると、不安の現実しかこなくなる……。
だから、不安な情報を見えないで、自分のワクワクすることとか、
幸せをず〜っとイメージすると、その現実が必ずやってくるんですよね。
自分が不安を選ぶか、楽しさを選ぶか。どっちか」

一田
「うーん、頭ではわかってるつもりなんですけどね〜。
中川さんはどう思う?」

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                  中川さんの山でのひととき。素足になって、足裏全体で岩を感じる。


中川
「私は久保さんが言っていることはよくわかるし、
今もそういうことを無意識のうちに実践している気がします。
2011年に東日本大震災のタイミングで、0歳の子供を連れて引っ越しました。
出産後復帰する間際だったんです。
あと1か月したらバリバリ仕事をしよう!と思って保育園も押さえていたし。
でも、私の計画が移住によって全部ダメになっちゃって……。
そうしたら、首から下に湿疹がいっぱい出ちゃいました。

久保さんが言ってるみたいに『私はうまくいくって、すでに知ってるもん!』
って無理やり思うとしたんだけれど、体がついていかなかったんですよね。
ああ、これはダメだな、体の方がよくわかってる。ゆっくりやろう、って思いました。

そうしたら、夫が『ロンドンやニューヨークの大都市に住んで、
たまに東京に来て仕事をする、っていうフォトグラファーっているじゃん。
そんなロンドン・ニューヨーク方式で、岡山を拠点に、国内外を移動して活躍する、
そういう人になればいいじゃん』
って言ってくれたんです」

一田
「めちゃくちゃいい人ですね〜! ロンドンやニューヨークを引き合いに出してくるって
ところが上手!笑」

中川
「私のこと、ほんとわかってますよね〜(笑)
体の調子もイマイチだったから、無理やりだったんですが、彼が言うような
ちょっと未来の自分を想像してみたの。
まるでニューヨークから来日したかのように、東京のスタジオに素敵に登場するアタシ!
たまにしか来ないから『正子が来日するよ〜』ってみんなが集まってくれる会食!(笑)
そういうのをいちいち想像して、何を着ていくかも全部イメージしてみて。
今は、実績はないかもしれないけれど、
意識としては「来日するイケてるフォトグラファーだから」
というイメージを決めました。
そうしたら、実際に仕事の依頼をたくさんいただけるようになって、
本当に『華麗に来日プレイ』(あくまでギャグですけど 笑!)させていただける感じの日々が始まったんです」

一田
「なるほど〜。
イメージするってすごい力になるんだね〜。
私がイメージする未来の私ってどんな感じだろう?
私ね、5年後、10年後の自分を想像するって、一番苦手なんです。
だって、わからないもん、って思っちゃう……。
たぶん、ずっと優等生で、失敗したくない人生を送ってきたから、
イメージしたとたん、『それ本当にできるの?』『そんなことして大丈夫?』っていう
ブレーキをかけちゃう癖がついてたんだと思う。
そんなストッパーがセットされているから、イメージがどんどん萎んでしまったのかも。
それをはずしてみたい、って今思っています。
現在の中川さんの未来のイメージはどんな感じ?」

中川
「一週間前ぐらいから、普段は出ない湿疹がまた出始めたんです。
肘の内側とか首とかに……。
山に毎日行っているし、三食ちゃんと食べてるし、逆にいい感じじゃん!って思ってたのに。
やっぱり体は『ちょっとイヤだよ』ってまた言ってて。

何がイヤなのかなとじっくり考えてみたら、薄々気づいてはいたんだけど、
次の私の人物像の輪郭が、ぼやけていたんですよね。
撮影のお仕事をいただいて仕事をする、っていうこのサイクルはいつまで続くんだろう?
それは、本当にとてもありがたいことだけれど、
他の柱も別でしっかり立てたい、って思い始めているんです。

もちろん、依頼していただけたら全力で撮影したいし、求めていただけるならずっとやりたいけれど、
でも、それだけっていうのはもう違うな、ずっと薄々思っていて……。
個人としての自分の写真集やエッセイ、小説など、本当はそっちももっとやりたいんだけれど、
忙しくてやる暇がなかったのが、『もうそっちにも、ちゃんと軸を置くタイミングが来たんじゃないですか?』
って見えない何かに言われている気がします。
でも、自分で発信するって、結構ビビるから、なんやかんやと先延ばしにしていたんですけど、
いやいやもうそっちにもハラを決めて行く時期でしょうって……。
そんなウジウジが今、自分の腕から出ていた感じかな、と振り返ると思ってます」

一田
「そういえば、インスタで見たんだけれど、足裏マッサージ始めたんだよね?」

中川
「そうそう、台湾の官足法っていう足つぼのような療法をやっているんだけど、
今は毎晩3時間ぐらい、気が狂ったみたいに足の裏を揉み続けています(笑)
以前はイタタタって感じだったのに、今はどっこも痛くなくなって面白くないんだよね〜。
肌もすべて治りました。わかりやすいリセットですね。
徹底的に潰していくっていうのが性格にあっていたんです」。

dsc_8728-960x641               さすが、整理収納の達人!Emiさんが最近スタンバイさせているというお灸セット

Emi
「私は最近お灸を始めたんです。
以前お客様からいただいていたんですが、ちょっと遠い世界のものだと思っていて……。
この状況になって、急に思い出してやってみたら気持ちよくて。
今のタイミングに必要だったのかなって思います。
今は寝る前にヨガをやったり。
たぶん、そういうことを欲しているんでしょうね」

中川
「私は、裸足でいろんなところを歩いています。
山に行っても、裸足で岩の上を歩くし。
理屈じゃなくて、感覚的に足裏が大事なんだなって感じます。
足裏に限らず、肌で感じるサインのようなものが。
そうすれば、向かう先の人物像も、自然と見えるだろうなあと思っていて、
焦らなくてもいいんだろうなって思います。
久保さんみたいに、もう達観する人を見ると焦るっていう人もいるかもしれないけれど、
自分のペースでジタバタすればいいと私は思います」。

一田
「麻里子さんはどうですか?
パン屋さんって、今カフェを閉店しなくてはいけないっていう現実に直面しているじゃないですか?
意識を『そこ』へ持っていったらうまくいく、って話、どう感じますか?」

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                          野生の菌を使って焼いた、タルマーリーの力強いパン。

渡邉
「私も毎日イメージはしますね。
寝る時にも、いいイメージで眠るようにしています。
うちのお店が潰れるイメージは自分でもできないので、
絶対潰れないだろうって思うし、なんだか今の状況って、結構面白いサバイバルゲームだなって思っていて(笑)
ついこの間まで、本当にヤバイと思っていたし、今も思っているんですけど、
たぶん生き残れるから。
私はこれから何をするんだろう?ってそれが楽しみです。
たぶん、全部解決していくんですよ、私は(笑)。
今までも、私は自分をマイノリティの立場に追い込んできたんです。
移住もそうなんですけど、
高校や大学の友達がみんな、立派な企業に就職する中で、あえて田舎に行ってパン屋になって。
でも、違う世界に飛び込んだからこそ見えてきたこともいっぱいあって。
生き延びるための力は、自然につけてきたのかもしれないな、だから大丈夫そうだなって思います」

中川
「麻里ちゃんがタルマーリーを始めた時に、自分のことを『女将』って言ったでしょう?
新しいなあって思ったの。
自分のことをどう定義づけるからで、いろんなことが決まると思うから」

一田
「どういうつもりで『女将』ってつけたの?」

渡邉
「どうしてだろう? 女将って、切り盛りするって感じですよね。
天然酵母っていう不安定なものは、画一的なものを売る技術とはまた違うので、
そういう意味で本当に切り盛りしなくちゃいけないっていうか。
『今日はこのパンが失敗しました』ってことがよくあって、
臨機応変に対応していかなきゃいけなかったので、
そういう訓練はしてきましたね」

一田
「不安定さの中から切り盛りするためのコツってなんでしょう?」

渡邉
「う〜ん、なんだろう?
いいお客さんがついてくれたのも大きいと思います。
情報を正直に公開して、『今こういう状況です』ってちゃんと説明をして
お客さんときちんとコミュニケーションをとってきて、
それをわかってくれるお客さんがちゃんといたんで」

一田
「『今日は焼けなかったからごめんなさい』とか、そういうことってわかってくれる?」

渡邉
「例えば、通販のお客さんに対して。
本来うちは、パン生地に砂糖を使わないポリシーを持っているんですけど、
でも、酵母の調子が悪くなると、うまくパンが焼けないんです。
それで、通販のお客さんみんなに電話をして聞いたことがあります。
『砂糖を使えば早くお届けできますが、それでもいいですか?
それとも酵母の調子がよくなるまで待ってもらえますか?」と。
ごまかさないで、ひとつひとつ丁寧にやってきたというのはありますね」

一田
「こっちがお客さんに合わせるんじゃなくて、お客さんにこっちに合わせてもらうんだ!」

渡邉
「そうそう、それです!
ある意味わがままですよね」

一田
「お客さんが、絶対的にタルマーリーのパンを信じてるってことだよね?」

渡邉
「そうですね。他で手に入らないパンだからこそ、お客さんがわがままを聞いてくれているのかなって思います」

最初の人の話が、次の人の話の土台となって、
少しずつリンクしながら、深まっていく……。

今回のそんな会話のバトン渡しに感動してしまいました。

中川さんの「来日したフォトグラファー」のイメージづくりの面白かったこと!
でも……。私の未来は、一生懸命目を凝らすのにまだまだ見えてきません……。

とりあえず、このZOOM茶話会が終わってすぐに、官足法の本とマッサージ棒を買ってみました。
今は『イタタタッ!』と叫びながら、毎日足裏をマッサージし、
自分のイメージを探しています。

麻里子さんの「こっちがお客さんに合わせるのではなく、お客さんにこっちに合わせてもらう」
という話も衝撃でした。

「こっちに合わせてもらう」ためには、
自分がきちんと立っていなくてはいけません。
つい人の顔色を伺ってしまう私は、凛と立つ麻里子さんの姿が眩しくて仕方がありませんでした。

面白くて、どんどん文章が長くなってしまい、
今回Emiさんのお話までたどり着くことができませんでした。
次回にたっぷり伺いますので、どうぞお楽しみに!

 

 

 


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