例年になく旅行が多かった2025年。今年はすっかり、いつもの「在宅本の虫」に逆戻り。しかし、本を読むために旅に出るという楽しみには味をしめました。
昨年に続き、同じく6月に誕生日を迎える友人と温泉に行くことに。私は39歳・友人は40歳を迎えるということで、それぞれなんとなくメモリアルイヤーになりそうな予感。奮発して(ボーナスをあてこんで、ともいう)星野リゾートを予約しました。

「界 秋保」
秋保温泉は、私の地元仙台からバスで30~40分ほど。一時間ごとにバスも走っていて、秋保温泉街は有名な旅館ごとにバス停があるのが便利。3歳児を連れていたのでアクセスが良いのはとてもありがたいです。

もともと老舗旅館だったというこの場所。すっかり星野ブランドに模様替えされて、爽やかなシックで静かな時間が漂う旅館に。
到着したのが金曜日の午後だったせいか、ロビーもそう混みあわず。すっきり髪をまとめた女性のスタッフに丁寧に施設の説明をしてもらい、本の虫が目を輝かせたのは「トラベルライブラリー」という言葉です。
その土地や旅にまつわる本が集められたスペースで、無料のお茶やコーヒーが振る舞われるとか。時間帯によっては上生菓子や地元のお菓子も……。「ねえねえ、お部屋に荷物置いたら遊びに行こうね!」怪獣のお世話でお疲れ顔の友人に休んでもらうついでに、3歳児と覗きに行くことにしました。

「探検だあ~!」と元気いっぱいのおちびを引き連れて一歩足を踏み入れると、「わ……素敵」とつい声が漏れてしまう空間が。ちょっと薄暗い空間の奥には、大きな窓。窓からはたっぷりの緑が光と共に。すぐ下に流れるのは名取川、鳥の声。「せせらぎラウンジ」という名前にぴったりです。
この日はちょっと肌寒かった宮城。テラスにある足湯であたたまった後、ハーブティーとお菓子をつまみながら、私は持参したKindle・3歳児は本棚で見つけたこけし図鑑を手に取り、読書を楽しみました。

家事をする必要がなく、非日常的に整えられた空間にいると、読書がとってもはかどります。
この日に読んでいたのは、ダウンロードしたまま置いてあった山口周さんの新刊『人文知は武器になる』(山口周・深井龍之介/文春新書)。
本書は、有名なコンサルティングファームで働いていた独立研究者・山口周さんと、「歴史を楽しく学ぶコテンラジオ」が大人気のCOTEN代表取締役・深井龍之介さんの対談本。
春に昇進して仕事で新しいフェーズを迎え、改めて「自分にとって仕事とは?」「趣味(読書)と仕事をどう両立していくか?」を日々考えている私。一方で、せっかくのお休みにビジネス書は読みたくない。そんなタイミングにぴったりすぎるほどぴったりで、相変わらずの本の神様に愛され具合です。
人文科学は、装飾品ではありません。慰めでもありません。ましてや、逃避先でもありません。武器です。混乱した世界で、自分の足で立つための武器、情報が溢れる時代に、意味をつくるための武器。そして、正しさが揺らぐ時代に、「いま、ここでどう判断すべきか」を引き受けるための武器です。――『人文知は武器になる』より
山口周さんは、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』からのファン。なのに1か月以上積読していたのは、「人文」と「武器」という言葉の並びになんとなく抵抗があったから。歴史や哲学・文学の世界とビジネスの世界が人間にとって地続きであることは当然分かりつつ、「ビジネスの武器」と言い切られてしまうと辛いというか。
仕事はますます面白くて、役職もついて裁量も増えて、より広い世界を見られるようになってきた今日この頃。でもだからこそ、「あれもこれも仕事の役に立つ」という思考回路によろよろ~っと寄っていきそうになる自分が嫌だったんだと思います。

泊まったお部屋には窓際に大きなソファが。こちらも読書にぴったり。
大学で哲学を学んだ山口さんと、歴史の大切さを普及させたいと活動する深井さん。現代は公的なものよりビジネスが世界秩序をつくっていると看破し、だからこそビジネスマンが人文知の重要性を理解することが「よりよい世界」に繋がると語ります。同時に、人文知の積み重ねは個人の喜びを増幅するものであると。
蓄積していく中で、何か発見したり、本質に気づくみたいな経験をすると、そのビフォーアフターで自分が変わる、その変わった後の自分として生きていくことができるんですよね。それは歴史の学びを含めた教養というものの魅力の一つですね。――『人文知は武器になる』より
お二人が熱弁するのは、いわゆる「インスタント教養のすすめ」みたいなものとはまったく違います。「それ知ってる!」とチェックボックスをどんどん押していくようなせわしなく浅い……まるで何かに追いかけられているような日々の読書を振り返り、反省。
スピード重視は、今のところ仕事だけでいい。読書や学びは、もう少し違う時間軸を意識しよう。窓いっぱいに広がるしっとりした緑で疲れた目を癒しながら、自然とそう思いました。

アメニティの界オリジナル風呂敷でスーパーマンごっこ。
そしていつかそのうち、読書の世界の自分とビジネスの世界の自分が、無理なく自然に溶け合うような境地に至れたら。それくらいゆったりとこれからのキャリアをとらえたら、少し肩の力が抜けた気がします。
秋保から仙台に戻ってほっと一息。ひととき故郷で休憩して、また月曜日から会社で頑張ろうと思います。