女の再起動 Vol4、藁谷恭子さん 10年間ご飯を作り続けていれば、何かが変わる

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そろそろ人生の第二ステージへ踏み出したいのに、
どっちを向いて歩いていったらわからない……。
そんな悩みを抱える人の悩みや戸惑いのリアルな姿をお伝えしようと
「女の再起動」というテーマで、特集を始めています。

Vol3では、襖の張り替えを機に
まずは「自分の小さな望み」を叶えてあげることが大事、
と知ったという藁谷さんのお話をご紹介しました。

主婦の仕事って、なかなか評価されなくて寂しくないですか?
と聞くと
「私、家事とか育児で評価されたいって、あんまり思っていないんです。
私が評価してもらいたいことは、もっと他にある気がします」と答えてくれました。

 

でも一方でこんな風にも語ってくれました。

「私は本当に料理が下手で、結婚した当初は
パパと同じぐらいしか作れなかったぐらい。
でも、この春インフルエンザにかかって、私は隔離されてひとりで寝ていたんですが
子供達が『ママのご飯が食べたい』って言ってくれたんです。
決して上手じゃないけれど、
10年間、手抜きもしながら毎日つくってきて、
その成果ってやっぱりあるんじゃないか。そう思いました。
そして、病み上がりでご飯を作ったら、
子供たちがすごく喜んでくれて、
10年の間で、私もちょっとは進化したのかもしれないって感じられたんです。
評価されたくて作ってきたわけじゃないんですが、
評価されなくても、続けていれば何かが違ってくるんだなって」

 

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このお話を聞きながら、
藁谷さんは、家族とともに、確かな10年を積み重ねてこられたのだなあと思いました。
毎日朝起きて、子供達を送り出し、買い物に行き、ご飯を作る。
いたって普通だけれど、その繰り返しの日々は、なんて確かなことか!

私自身のことを振り返ってみれば、
毎日仕事でバタバタしていて、
目の前のことをこなすことに必死で、
こんなにも着実に何かを蓄積できているだろうか……と考え込んでしまいました。

今回インタビューの最中、ご主人がずっとそよちゃんの遊び相手をしてくれていました。
ご主人は、音楽の道を途中で諦めて、後悔はなかったのでしょうか?

すると藁谷さんがこう教えてくれました。
「主人は私とは真逆なんです。今美味しい、今楽しい、っていうことが一番大事。
だから、いつもすごく幸せだと思います。
いつもすごくポジティブで、やれることしかやらないし、
起こった事実しか受け止めない。
そこに変な感情がついてこないんです」

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ご主人に「今、楽しいですか?」と聞いてみると……。
「そうですね。ギターを弾いているときは無ですから。
音楽がやりたくて、32歳まで続けてきたんですが、
それが叶わなかった。
それで会社員になったら『あ、僕はこれがやりたかったんだ』って思ったんです。
会社員なんてやりたくない、ってずっと思っていたのに、
会社員になったとたん、すごくいいなと思いました。
父親になって、毎日決まった時間に通う場所ができて、
家に帰ってきて、自分が枠に収まったんですよね。
あれだけ『趣味ではやりたくない』と思っていたギターが楽しくなって、
ギターとのつきあいかたが、現役の時よりも深くなりました。
だから公園などどこにでも持って行って弾いています」。

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なんて素晴らしい話だろう!と思いました。
「好きなことを仕事に」と言うけれど、
仕事は仕事と割り切って、
別の世界で好きなことを楽しめばいい。

私たちは、どこかで「やりがい」や「仕事」や「好きなこと」という理想形を描き、
そこへ近づきたいと望みます。
でも、みんなが同じ「枠」に入らなくてもいい……。

実は、最近ご主人とふたりで、夫婦セッションを始めてみたそう。
ミュージシャン「羊毛とおはな」ごっこが楽しくてたまらないのだとか。
ご主人のつまびくギターに合わせて、歌う姿の楽しそうなこと!

藁谷さんの再起動は始まったばかりです。
その答えは、仕事なのか、歌うことなのか、まだ形は見えていません。
でも、いったん切ったスイッチを再度ブルルンとかけてみたら、
きっと違う風景が見える……。
藁谷さんの姿を見ていたら、そう信じてみたくなりました。

今回、ご夫婦でのセッションの様子を動画で送ってくれました。
オリジナル曲「夏の花」。
ご主人のギターの腕はさすが!
そして恭子さんの澄んだ歌声に癒されます。

 


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