読書の時間

仕事がない日曜日。
目覚まし時計のスヌーズアラームを止めて、
もう一度ベッドに潜り込み、シーツの感触を味わいながら
うとうとする幸せなこと!

昨夜は、寝る前に読書に耽り、ずっと読んできた本を読了しました。
それがこちら!

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国谷裕子さん著
「キャスターという仕事」

国谷さんといえば、NHKの「クローズアップ現代」で23年間もの間
キャスターを務めていらした方。
いつ見ても、落ち着いて、歯切れが良く、するどい質問と冷静な分析で
難しい経済や政治の問題でも、
思わず見入ってしまっていました。

私は数年前に、
2011年に国谷さんが「日本記者クラブ賞」を受賞された際の講演会の様子をyoutubeで見つけ
衝撃を受けたのでした。
インタビューとは何か……。
国谷さんは、政治家やビジネス界のトップ、学者などさまざまな方にインタビューをされ
その準備は相当な時間をかけられるそうです。

でも……。
インタビュー本番になったら、準備してきたことをすべて捨てる。
それは、「自分で書いたシナリオ通り」のインタビューをしようとすると、
相手の声を聞くことができないからだそう。
自分のシナリオにとらわれすぎると、
質問をして、相手が答えている間も、次の質問のことを考えたり、段取りに頭がいって、
せっかくの相手の言葉の中の小さなフックを
手のひらの隙間からこぼしてしまいます。

自分のシナリオを捨てるほど、相手の言葉に聞きほれる……。
それがよいインタビューだと。

私は偶然見つけたこの動画、1時間半ほどを
涙をダラダラ流しながら見たのでした。
別に涙するような、劇的な話でも、物語性があったわけでもないけれど、
これほど、自分の仕事の核心を突く言葉は今まで聞いたことがなく、
まさに国谷さんの語りに身も心も囚われてしまったのでした。

なので、今回この本を本屋さんでたまたま見つけたとき、
うわ〜〜〜〜〜!!!と小躍りして喜び、すぐ購入し
むさぼり読みました。

この本では、アナウンサーでもない国谷さんが、どうやってキャスターになっていったか。
キャスターとは何か?
テレビの危うさとは何か?
などが丁寧に冷静に綴られています。

今回の本の中で私がいちばんなるほど!と思ったのは
「テレビ報道3つの危うさ」というところ。

それは
1、事実の豊かさをそぎ落としてしまう危うさ
2、視聴者に感情の共有化、一体化を促してしまう危うさ
3、視聴者の情緒や人々の風向きに、テレビの側が寄り添ってしまう危うさ

この中で特に1は、わかりやすく伝えようとするが故に、事実をそぎ落としてしまう。
そのそぎ落としたものの中に本当の豊かさがあるのかもしれない……。
ということ。
これは、雑誌や本作りでも同じことが言えます。

「どうやって事実の持つ豊かさをそぎ落とすことなく伝えられるか、
どうすれば物事を単純化し、わかりやすいものだけに収れんさせるのではなく、
できるだけその事象の持つ深さと全体像を俯瞰して伝えられるか、模索してきたつもりだ。
しかい、言うは易く、行うは難しなのだ」(本文より)

そして、国谷さんは新聞で見つけたという是枝裕和さんの言葉を引用されています。

「わかりにくいことを、わかりやすくするのではなく、わかりやすいと思われていることの
背景に潜むわかりにくさを描くことの先に知は芽生える」

 

なんてすごいんだろう……。
私はなんて安易に仕事をしてきたんだろう……。
と思わずにはいられませんでした。

私は「言葉」を仕事にしているから、特にグサグサと心に刺さる言葉ばかりだと感じましたが
きっと、そうでない方も
ものの捉え方、考え方、何かへの向き合い方に風穴を開けてくれる1冊だと思います。

私も自分のジャンルだけにとらわれず、もっと勉強しよ!
と思ったのでした。

 


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