コロナ生活で何を考えましたか? ZOOM茶話会 その4 アウトプットの形はなんでもいい!

非常事態宣言が出てから、ずっと家にいる日々。
のんびりしてるんだけれど、
今の私は何をどう考えればいいのかがわからない……。

そこで、今どんな風に過ごし、何を考えているのかを聞いてみよう!
と4人の仲間、中川正子さん、久保輝美さん、渡邉麻里子さん、Emiさんに声をかけ、
ズーム茶話会を開きました。

前回は、「意識が先。現実はあとからついてくるんです」
という久保さんのお話から、渡邉さんと中川さんに「イメージ」を広げるお話を伺いました。

一田
「『暮らしのおへそ』で取材させていただいた、医師の稲葉俊朗さんという方がいらっしゃるんですが、
先日facebookで書いていらしたことがすごく印象的でした。

『いまからは、場に群れず、個を大切にする時代になる。(中略)
個人の生命を第一にしながら、それでいてエゴイズムにならない時代。(中略)
結論から言うと、村上春樹さんがねじまき鳥という長大な物語で紡いだような『壁抜け』のような
つながりの時代になるのではと思います。
それぞれが存在や命の源を掘るしかない。
自身の深い存在の源に降り立った時(深い井戸に降りた時)そこでふっと壁を抜け、
時代を超えて、つながる場所がある』

この文章に、すごく納得して……。
みんなが個を掘り下げたら、壁抜けしてつながる。
そういう社会の繋がり方になっていくんじゃないかと思ったんですよね」

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                       渡邉さんのご主人格さんと長男光くん。智頭町の山にて。

中川
「壁抜けの前に、自分の井戸を掘るっていうのが、村上春樹さんがずっと使っているメタファーだよね。
そういう意味では、タルマーリーなんて、めちゃくちゃディープに掘り下げて
独自の地下帝国を築いている感じだよね(笑)
そして、掘り下げているプロセスを全部公開してきたから、
それに共感する人が、ちゃんと気づいてくれたんだと思う。「あ、この井戸の中にいた!』って。
パンの通販のサポーターが150人、一週間で集まったというのも、『こういう井戸だよね』って、
みんなが知っているから早いっていうか」

渡邉
「何屋さんでも、私はその仕事をやっている人の人物像が知りたいって思っちゃうんです。
だからこそ発信してきたんですけど、
その人となりがわかるからこそ、その作品を買いたいって思うんじゃないかな」

中川
「私は今回、Emi さんは『はじめまして』なんだけれど、
整理収納アドバイザーっていっぱいいらっしゃるんですね。
私のママ友でも、資格を持っている人いますよ。
でも、そういう中でEmiさんが、驚くほどたくさんの人に支持されてきたのは
やっぱり整理が上手なだけじゃないんじゃないかな?って
今回お話していて勝手に想像しちゃったのだけど、 どうでしょう?」

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                           中川さんが撮った岡山の夕景

 

Emi
「整理整頓は好きなんですけど、
もともとの性格が、引き出しを足で閉めるっていうタイプなので(笑)
自分のペースにあった収納法を考えてきたんですよね。
私ね、パンツとかはたたまないんですよ(笑)
双子を生んで、両手がふさがった中、主人も商社マンでいそがしかったので、
大変な時期もありました。
そんな中で当時勤めていた通販会社に復帰したので、
自分がラクできるように、余裕が持てるように家の中が回るようにしようって思っていたんです。
そんなプロセスをずっとブログに書いていました。
さっきの井戸の話ですけど、
意図して、見返りを求めて掘っていたなら、今の私はいなかったと思うんですけど、
ただただ『私はラクするために、こんなことしてみました』って生活を公開しただけで、
意図せず井戸を掘ったからこそ、一緒に中に入ってくれた人がいるのかなあって思います。

片付けとか収納とか、見た目の整え方は、私よりすごい人はたくさんいるんです。
でも、そこに至るまでの家族のコミュニケーションとか、
人との関係の築き方とか、私だからの発信の仕方を
一緒に見てくださる方がすごく多かったんだなって感じますね」

一田
「なるほど。こっちに行ってやるぞって、高い空を見上げることより、
うつむいて井戸を覗き込む……。つまりは自分の内側を掘ることが、本当に望む方向への近道なのかも。
今回、みんな仕事は違って、それぞれのお仕事を本気でやっている方ばかりですけれど、
その仕事のもうひとつ外側に、『誰かの役にたつ』っていうもうひとつ別の次元があるのかもしれませんね」

中川
「そうですよね。私ね、2012年に初めて自分の名前で写真集を出したんです。
東京で個展を開いたら、福島や仙台や、全国から本当にたくさんの方が来てくださって。
その半分以上の人が判で押したように
『私、正子さんの写真も好きだけど、文章が好きなんです』って言ってくださるんですよね。
私は、かつていわゆる『写真家』になってみたかったんだけど、
ま、そもそもいわゆる写真家ってそもそもなんなんだって話もあるし、
それに、どうやら私がやっていることは、写真家という枠を使わせてはもらっているけれど、
ちょっと別な行為なんだな、ということを強く感じる機会がどんどん増えて……。
だからEmiさんと一緒かな。
私のパーソナルな部分に、みなさんのパーソナルな部分と呼応する小さなエリアがあって、
そこに引っかかる方が反応してくださるんだなって。
だから、出口はなんでもいいんじゃないかって、ここ数年ははっきりと考えています。
私は、みんなに喜んでもらいたいというよりも、
繋がりたいというか、共感しあいたい、というのが人より強いと思うから。
久保さんの言葉を借りるなら、それが『美しきこと』だなと思うんです。
こんなに広い世界で誰かと共通言語が見つかって、心を動かしてくださるんだとしたら、
こんな素晴らしい奇跡ってないなあと思うから、ツールはもうなんでもいいやって思っています」

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                             久保さんがいつも散歩しているという近所の公園

久保
「私も店を始めたのは、正子さんと同じで、つながりたい、共有したい、という思いでした。
だからなんでもいいんですよ。
パンじゃなくてもいいんです。
だから、パンに執着することも手放したし、
ただみんなと喋れればいいので、『kuboぱん倶楽部』っていう活動にシフトをしているんです。
『kuboぱん倶楽部』というのは、今日みたいなこういう素晴らしい話をみんなで共有して、
こんないいことがあったよ、ってシェアする場所を提供するんです。
今後はオンラインサロンも考えていて、
緊急事態宣言が解除されたら、店舗は6月まではあるので、またやろうと思っています」

一田
「北海道でも、そういうことを発展させていきたいの?」

久保
「そんな熱量はないんですが(笑)おいしい空気を吸って、おいしい水を飲んで、自然に触れて
エネルギーをチャージして、『じゃあね』って帰ってもらえばそれでいい。
ふらっと来た人が何かを持って帰るような、そういうことをしたいですね」

 

Emi
「私は先日、人生で初めて北海道に行ったんです。
石鹸の専門店『サボンデシエスタ』さんに呼んでいただいて、
『マイノート』という私の提案しているノートを作るワークショップを開催しました」

一田
「あのEmiさんのお話を聞いて、店主の附柴さんのご主人は、すごく変わったと言っていらっしゃいましたよ。
ノートをつけて、一番いいことは何ですか?」

Emi
「自分が真ん中にもどってくる感じなんです。
日常の気づきから、喜怒哀楽からなんでもメモするんですよね。
今も、みなさんのお話聞きながら、全部メモをとっているんですが(笑)
ファッションの切り抜きも貼るし、心が動いたことだけを残すんです。
決まりは、ワクワクしていないことは書かないってこと。
心の貯金通帳みたなイメージです。
その時すぐは使わないんですけど、ずっと貯めておいたら、
必要なときがきたら、すぐに出せるので」

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             Emiさんは、子供たちと一緒にコロナ騒動が終わったらやりたいことを書き出したそう

 

中川
「悲しかったことも書くの?」

Emi
「書くけれど、それだけで終わってしまったら、悲しさがもう一度やってくるだけなので、
その悲しさから得たことを書くんです。
モヤモヤしたら、どうして私にこんなにモヤモヤして悲しいのかな?って書き始めます。
そうすると、『あ!』って何かに気づくことができる。
自分の中がパンパンになっても、吐き出す場所があるので、リセットされる感じがあるんですよ。
人と比べずに、過去の自分と比べるためのツールですね」

一田
「久保さんも、そういうの書いてるよね?」

久保
「はい、メモはしますね。自分に響いた言葉は書くようにしています」

一田
「それをfacebookでシェアしてくれて、私はその言葉をメモしたりしています(笑)」

今回、話してみてわかったのは、みなさんもう次のステージへ向けての準備を
始めているということ。
そして、それは今までやってきた「仕事の名前」にはとらわれない形だということ。
もしかしたら、カメラマンもパン屋さんも整理収納も文章を書くことも、
目指していることは、同じじゃないか、と思えてきました。

私がよくトークイベントでお話する例え話があります。
誰もが、空の上にある「真実」を求めて梯子を登っています。
梯子の種類は人それぞれ。
ある人の梯子は「写真」や「アート」であり、
ある人の梯子は「パン」や「料理」や「コーヒー」であり、
また別の人の梯子は「数学」で、そのまた別の人の梯子は「ビジネス」だったりする。
みんな梯子の種類は違うんだけど、
どの梯子も登っていくと「真実」という共通の答えにたどり着く………。

中川さんが写真だけにこだわらないように、
久保さんはベーグルを手放し、
Emiさんも「整理収納」のもうひとつ外側にあるものを求めようとしていました。
そして、渡邉さんはタルマーリーという井戸をディープに掘り続けて……。

誰もがもはや「方法論」にはふりまわさてていない、というところがすごいなあと思ったのでした。

それにしても、Emiさんの教えてくれた「心の貯金通帳」っていいなあ。
私もノートを作ってみようかと考え中です。

 


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