いちだ&さかねの往復書簡

いちだ&さかねの往復書簡No2

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坂根

一田さんの「これからいい文章が生まれてくる」という心強い言葉に
今のまま、ブログを続けてみようと、悩んでいたことが吹っ切れました。
ありがとうございます。

実は、ずっと焦っていたんです。
それは「暮らしのまんなか」取材の時のこと。
寝るのを惜しんで考えた原稿を一田さんにメールでお送りさせていただいた時に、
20分もしないうちに「こんな言い回しもいいかもしれませんね」と
赤字で返信をいただいときがありました。

自分との実力の違いをそれはもう、はっきりと自覚しまして。
パソコンの前で恥ずかしながら一人涙が止まらなくなってしまったんです。

その後、一田さんが今までの取材ノート1117冊を全部処分した、
ということをFacebookで拝見しました。
私の取材ノートは2冊目の途中。
このままじゃ、一田さんの文章に近づけない。
この経験の差をどう埋めていったらいいんだろう…と途方にくれました。
すぐ物事を効率的に考えてしまうんですよね。
最短で、何か文章がうまくなる方法はないのか…と。

でも一田さんの、「いい文章というのはテクニックではない」
「人の心を動かすのは自分自身の体験といかに深く結びついているか」
という言葉にハッっとさせられました。

さて、またまた相談させてください。

取材の時間内(通常2時間くらい)に、取材先の方にお話を聞くのですが、
質問する内容が、どうも、的を得ていないようで。
原稿を書くときに、文章が浮かばなくて結局、取材後何度も取材先の方にお時間をいただき、
メールでやりとりすることが、しばしばあります。
取材先の方は、いつも本当に快く、ていねいに教えていただけるのですが、
プロとしてはどうなんだろう。
先方もお忙しい時間の中をさいて取材をさせていただいているのだから、
時間内に、文章に必要な質問ができるのがスマートではないかと。

取材先の方から思いがけず、ハッとする言葉を聞けるのは、
聞き手の「質問力」にかかっていると思うんです。

どうしても原稿の文章が思い浮かばない時に、
メールを通して、一田さんはよく私に問いかけてくださいます。

たとえば、

「(取材先の方は)どんな暮らしがしたかったの?」

「仕事をしている上で一番大切にしていることは何?」

「仕事と暮らしのメリハリをどうやってつけているの?」

など。

そこで私は、自分がそれについて聞いていないことに初めて気付けるんです。
改めて先方に質問すると、とても素敵な言葉をいただくことができ、
それが「暮らしのまんなか」の文章のよいエッセンスとなっているのが現状です。

長々しく、書いてしまいましたが、次の質問は
「どうしたら取材先の方に、時間内で中身のある質問ができるのでしょうか」
です。

一田

確かに、取材先でいい「言葉」を引き出すには
「質問力」が大事ですよね。
これも、経験で磨かれていくとは思うのですが、
今の坂根さんにアドバイスできるとしたら……。

まずは、「自分」を一旦捨ててみること。

もちろん、相手に話を聞いて、自分の中に響かせて
新たな真実を引き出す
というプロセスは必要なのですが、
相手に何かを聞く場合、
自分を一旦消して、相手にできるだけ寄り添って
どんな思いで、どうしたくて、どんな暮らしをしているのか、
追体験するような気持ちで
「我がこと」として話を聞くといいと思います。

たとえば、前回坂根さんが取材したお宅で
「子供の絵の飾り方が素晴らしい」って感動していましたよね。
その感動はすごくいいのですが、
あまりにそれが強すぎると
1軒のお宅を、その視点でしか見られなくなってしまいます。

そこで暮らす人たちの人生があり、
歩んできた道があり
だからこの家を選んだという理由があり
日々積み上げている時間がある……。
そのすべてを
なるべくニュートラルな状態で受け止める……。
自分が感動することより
一旦自分の姿を消して耳を傾けてみることが
大事なのだと思います。

まだ経験が浅いうちは、
お話を聞きながら、どれが大事でどれがあまり必要でないことなのか、
見分けるのが難しいものです。
それは、経験を積みながら
聞き分けられるようになるしかないですよね。

私も今でも、「ああ、まだ核心が聞き出せていないな」
と思うことがあります。
最後まで掴めないまま終わってしまうこともあります。
でも、あきらめないでコツコツと小さな質問を
積み重ねていくと
「あっ!」と思う瞬間があります。
ああ、この言葉さえ聞ければ、私は書ける。
そう感じるまで聞く。

2時間の間、質問し続けるのって
結構集中力がいるし、疲れます。
でも、「まだ聴けてない」と思ってあきらめないで聞く……。
最後の10分で
「あ、大丈夫」っていう一言が聞けることも多々あります。
それって、インタビューの快感でもあるので、
ぜひ坂根さんにも味わってもらいたいです。

 

つづく

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