いちだ&さかねの往復書簡

いちだ&坂根の往復書簡 文章のリアリティ

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一田さま

 

またまた、返信が遅くなってしまいました。
今までは、心の赴くままに書いていたこの往復書簡ですが、
「どんな方に読まれているんだろう…」とか、
「やー、次にへんてこりんな質問をしたら、いよいよ『私』という化けの皮がはがれてしまう!!」なんて、今さらながら恥じらいも出てきてしまったりして、なかなか次の質問が浮かんでこなかったのです。

でも、ちょうど今6月15日発売の「暮らしのまんなか」最新号の原稿がひと段落つき、
ニュートラルな気持ちで、質問に向き合えそうな気がしたので相談させてください。

今回の取材では、今までの往復書簡を思い返しながら、
取材するときにも一田さんがNO6で教えていただいたように、
「機関銃のように」聞くことを心がけてみました。
すると、それを「意識」するだけのことなのに、想像以上に質問ができ、
原稿に生かすことができたなあと思います。
教えていただいて、本当にありがとうございます。

ただ、NO4で質問させていただいた「キャッチとリード」が
今回も全くダメで……。
一田さんにも、「せっかく取材先の方のことを理解しているのに、
うまくアウトプットされていない……」と言われて、確かにそうだよなあと。

例えば、あるキャッチの表現で
「海の景色」という私が考えた表現を、一田さんが「海の色」としていただいたことで、
その文章全体がグッとしまった印象になったり……。

「変わる」という表現を「移ろうもの」という表現にしていただいただけでも
文章に艶っぽさが出ます。

私は一つの単語を、さまざまな言葉で表現できるようになるのが課題のひとつです。
一田さんが意識的に取り組んでいたことなどありましたら教えてください。

 

坂根さん

今回の質問を読んで、私も若い頃、先輩の原稿を見ながら、なんてすごい表現ができるのだろう。
自分の文章はなんて拙いのだろうと落ち込んだな〜
と思い出しました。

私は記憶力がものすご〜く悪くて、語彙が豊富でないことが
ずっとコンプレックスだったんです。

本を読んで、素敵な表現や言葉のストックを増やすことは
とても大事だと思うけれど、
でも、今は
読んでくださっている方に、何かを伝えるために必要なのは、
知っている言葉の数や表現のテクニックではないなあと感じています。

私が、「あの文章すごく良かったです」
と言っていただくのは、どんな文章だろう?と思い返すと
そこには決まって「リアリティ」があるように思います。

リアリティって、じぶんが書いたことがいかに真実に近いか。
それは、説明がとても難しいのですが、
「いかに真実か」ってことと少し違うのです。

真実を伝えようと見たこと、聞いたことを詳細に説明しても
それはちっとも伝わりません。
そこの匂い、温度、吹いている風の感じ、座った時の部屋の眺め……。
そんなことがいかにリアルに伝わるかが大事。

海辺に暮らす方を取材して、
坂根さんが書いてくれたキャッチに手を入れさせてもらった時にも

「海の色も海辺の石も、日々移ろうもの。
一瞬に出会う喜びを、暮らしの中へ」

とその人が見ているもの、感じていることへ想像を広げて入れてみました。

どう言葉にしてアウトプットするかは、
どう説明しようかと考えたのでは浮かんできません。
スタートは、まず、自分がいかにリアルに感じるか。
それは、頭の中にどんな風景が描けるかだったりします。

取材した時の空気やその人が語ってくれた声を思い出し、
映画のように場面を思い描いて、
それと文章を繋げるよう、ぐるぐる頭の中で考えて
ハッ!そうか!と出てくる感じです。

「あの感じ」が伝わるように、
文章のリズムにも気をつけたりします。
リズム感よく読めるかどうかで、文章が、その人の中にすっと入っていくか
文字として、ページの上に置いたままになるかが変わってくると思うから。

私にとっても、いかにリアルに書くかは、永遠の勉強で、
表現方法が同じ感じになってしまったりと、
本が出てからは反省することばかりです。

坂根さんに、私なりのアウトプットのプロセスをお伝えすることで
何かのヒントになれば嬉しいです。

 

 

 

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